2018年11月22日 (木)

トュルクソイを観た!


トイレで一緒になったサラリーマン風の人たちの会話。
「なんだ、『パーシモン』っていうからてっきりゴルフ関係の施設かと思ったら、『柿の木坂』の『柿』なんだな~?」
 
目黒にあるその「柿」に行って来た。
「めぐろパーシモンホール」という区の設備。
ま、このサラリーマンの勘違いなんてまだマシな方で、「目黒」と来たもんだから、私なんか完全に「柿の木坂」と「権之助坂」を混同していて一緒に行った家内に笑われたわ。
「柿」は英語で「パーシモン(persimmon)」ということはご存じの通り。
フランス語ではそのまま「kaki」というらしい。
柿の木は大変硬く、緻密で均質なことから色々なものに素材として利用されてきた。
たとえばビリヤードのキューもパーシモンなんだってね。
他に靴の木型やカンナ台などに適用されるが、ナント言ってもよく知られているのはゴルフクラブだった。
あの「ウッド」呼ばれている棒の先っちょね。
「だった」というのは、パーシモンのクラブって絶滅したんだってね。
私はゴルフを全くやらないどころか、イヤな思い出しかないのでどうでもいいことなんだけど、チョットびっくり。
私が社会に出た30年以上前、サラリーマンの必須科目として仕方なしに始めて、買ったクラブのセットに含まれていたドライバーだのスプーンだののウッド・クラブのヘッドは文字通り全て木製だった。
ゴルフ練習場やコースに行くとまだメタル・ヘッドのクラブが珍しく、「お、メタルじゃん!?」なんてオジサンたちが騒いでいたような記憶がある。
私はそんな会話を傍らに、「ああ、あの楽器屋にあった1987欲しいナァ」なんて心の中で思っていたもんだ。
今はすべてメタルなんだって。

10コレまた立派な施設でね~。
ビックリしちゃった。

20ロビーで開場を待つ人々。

30こんな物販コーナーが設置されていた。
白いハチミツはキルギスの特産品なのだそうだ。

40こんな民芸品もゾロリ。

50v_2ナニを観にパーシモン・ホールに来たのかと言うとコレ。
「テュルクソイ」という民族音楽のグループの結成25周年を記念する来日コンサート。 

0r4a0040「テュルク」というのは「テュルク語系」の原語を母語とする民族のこと。
どの辺りの方々かと言うと、この地図に青く記しているエリア。
濃い青がテュルク語系の言葉を公用語としている「国」。淡い青のエリアはその「自治区」。
シベリア北部が飛び地になっているのが気になるが、太古の昔に民族の大移動でもあったのかしらん?

9map2 「テュルクソイ」の国単位の主要参加メンバーは…
アゼルバイジャン
カザフスタン
キルギス
トルコ
トルクメニスタン
ウズベキスタン
の6つ。
これにロシア連邦内の民族共和国が加わる。つまり、ロシア領内にロシア民族ではない人たちが郷土として設立している共和国から来た人たちのこと。
具体的にその名を挙げると…
タタルスタン
ハカス
バシコルトスタン
サハ…他。
知らんがな。
あとモルドヴァ共和国のガガウズ自治区の人々が参加している。
だいたいイメージがわかったでしょ?

0r4a0038いつもMarshall Blogに書いているように、私は昔から民族音楽が大スキなのね。
で、ある日、facebookをツラ~っと見ていたら、この公演の宣伝動画が流れていて、「コレだ!」と思って家内をコンサートに誘ったワケ。
…というのは、公演の当日は私の誕生日でございまして、ワガママに付き合ってもらおうとしたのです。
すると、家内が「誕生日のプレゼント」ということでチケットを買ってくれた…ありがとうございました。
いつも言っているように、Marshallの仕事以外のライブにはまず行くことがないので、コンサートのチケットを買うなんてことはここ20年の間、ほとんどなかった。
今回、初めてインターネットで申し込んでコンビニで受け取る…というのをやってみた。
朝早く起きて青山のウドー音楽事務所やプレイガイドの前に並ぶ必要がないのは実に結構なことだが、私のような古い人間にはチト味気ない感じがするかな?

0r4a0035とにかく立派なホールですよ。
桟敷席までついてる。
大使館の強力なバックアップがあっての実現なのだろう、座席には「大使館席」という張り紙が目立ったものの会場は満員。
当日券はすべて売り切れていた。

60出し物は歌と踊り。

70この歌がマァ~すごいこと。
一体どこから声出してんの?みたいな。
この写真の人はアゼルバイジャンのバベック・クリエフという人。

74コチラはトルコのジャンス・キルジャさん。
この歌い回しがタマらなく気持ちがいい。
コチラの方々は微分音階を使うでしょ?
トルコの歌手は半音を9つに分けた音程を完璧に歌い分けることができると聞いたことがある。
「超絶」ですよ、超絶。
80vそれとトルコの音楽は「9/4拍子が基本」なんてこともどこかで聞いたナ。
この曲は10/4拍子だった。
また踊りがいいんだわ。

75歌も踊りもいいんだけど、私のお目当ては器楽の演奏。
絶対にスゴイのが出てくるにキマってるもん。
それと、キテレツな楽器群。
それは期待通りの連続だった!

0r4a0030モルドヴァのイーゴリ・ボドゴレアヌさんのパンフルートの独奏。
パンフルートは有名だけど、商店街のイベントでアンデス辺りから来ている人たちの素朴な音楽とはまたゼンゼン違う使い方をしていてビックリ。こっちの地方では「ナイ」と呼んでいるらしい。
もうね、イングヴェイなのよ。
つまり、速吹き。
あんなに口にパンフルートを押し付けて左右に揺さぶったら唇が熱くなっちゃうだろうに!という俊敏な動きがあまりにも見事。
それとハイノートの美しさも素晴らしかった。

90この人はハカス(ロシア)のルスラン・イヴァキンさん。
コレもスゴかった。
こうした「モロに白人」というメンバーも少なくない。

110vバックを務めるオーケストラの演奏のウマいこと!
ナンカの録音物を聴いているかのような一糸乱れぬ音程とアンサンブル。
ジャズのビッグバンドのように、この中からソリストがかわるがわる出て来てフィーチュアされる。
アップの写真が撮れなかったんだけど、真ん中より向かってチョット左で膝の上に板みたいなモノを乗せているオバちゃん。
弾いているのはトルコのカーヌーンというハンマー・ダルシマーみたいな構造をした楽器。ただ弦をスティックで叩くのではなく、指先にハメた爪で弦をはじく。
この人の独奏は本当にすさまじかった。
ホントの超絶。
あのね、ギターを速く弾くことだけが「超絶」ではないんですよ。
むしろ、色んな音楽に興味を持って世界に目を転じると、電気の力を借りてギターを速く弾くのはさほど難しいことではないように見えてくる。
エディタ・グルベローヴァの声も超絶だし、40分休みなくインプロヴィゼーションを続けるジョン・コルトレーンのサックスも超絶。
音楽は聴けば聴くほど奥が深く、幅が広いことを知る。
まだまだ楽しめそうだ。

100今回は4回の公演が催されたが、この千秋楽だけ日本からゲストが参加した。
尺八、琴、津軽三味線の方々。
楽器というのは、吹くか、叩くか、弾くか、擦るか…と音を出す動作はキマっているので、洋の東西を問わず構造も原理もだいたい同じということになる。
この3種の和楽器もしかり。
テュルクソイで使われている楽器と薄からぬ血でつながっているんだけど、ゼンゼン雰囲気が違うんだよね。
それはとりも直さず、その楽器を使っている音楽があまりにも違うからなんだけど、民族の歴史や地理の違いがそうさせることを考えると実に面白い。
「さくらさくら」で「日トゥル対決」なんかを演っていた。

0r4a0031このオジちゃんは笛と自分の声で二重奏をしていた。
笛を1本小脇に抱えたまま、少しズラして吹いていたので、後に2本いっぺんに吹いたらコリャ完全にラサーン・ローランド・カークだな…と思ったけど、そうはしなかったわ。

120vタップリとテクニックを見せてくれた後はダンサーと合流。

130踊りの人たちもみんな背が高くて、可愛いくて、とってもステキなのよ~。

140vこのモーツァルトみたいなアタマをした人はトルクメニスタンの人。
歌はカッワーリーみたいだったな。
エグいメロディにゾクゾクしちゃったよ。
写真はないんだけど、弾き語り(?)でホーミーを演ったおジイさんもいたな。
ホーミーいいよね。

150vカザフスタンのナディム・サグィンタイさん。
この人は本国ではスターなのかしらん?
エラくフィーチュアされていた。
その魅力のひとつは歌声。
それこそ「夜の女王」のような曲での突き抜けるようなオペラチック・ボイスが圧巻だった。

160vもうひとつ、ナディムさんの必殺技がコレ。
知ってるコレ?
ジョウハープといって、西部劇なんかで使われる「ビヨヨヨ~ン」という音はコレで出している。
日本語では「口琴」という。
丸い方を手持ちながら、まっすぐの部分を口に加え、左のカギ状のレバーを弾くと、真ん中の棒が口の中で共鳴して色んな音を出すことが出来る。
大きい音が出るまでチョット練習が必要なんだよね。
ナディムさん、コレを咥えて、気が狂ったかのような速さでレバーをハジきまくる!
そして同時に歌っちゃう!
あんなの初めて見たわ。これまでの人生で聴いたことのない音だった。

Kk_2弦楽器だって負けてないゼ!
4人が手にしているのは「シェルテル」というカザフスタンの楽器。シャレてるね~。
オーケストラの中では完全に伴奏楽器だったが、この4人のフィーチュア・コーナーでは完璧にシンクロする4人の見事なストラミング・テクニックを見せてくれた。
楽器を立てたり、裏返したり、その間必ず笑顔でストラミングし続けるというワザ。
その仕草がとても可愛いの!
ただ右手の動きの速さは超絶。

170コレは鶴をイメージした舞踏。
とても華やかでキレイだった。

175すると客席後方から乾いた太鼓の音が!

180ドイラというウズベキスタン、アゼルバイジャンあたりの打楽器。
中に金属の輪っかがいくつもブラ下がっていて、叩くたびにジャランジャランと鳴る。日本でいう「さわり」みたいな意味合いなのかな?
演奏するのはウズベキスタンのロブシャンジョン・ユヌソフさん。
ま~、コレも超絶だったわ。
タブラのように指先を使って叩くんだけど、その音がデカいこと!

190このドイラをフィーチュアしたオーケストラに合わせてのダンス。
バックはイスラム風になってる。
このイスラム美術っていうのも魅力的だよね~。

200このダンスのオバちゃん、カッコよかったな~。
やっぱり向こうの舞踊は打楽器がフィーチュアされる音楽にピッタリするね。

210ダンサーさんは何度も着替えての登場。
コレも大変だったと思う。

220最後は全員集合でご挨拶。

230あ~、満足、満足!
2時間ジ~ックリ観て、2,000円!
コレは大使館から相当補助金やら協賛金が出ているハズ。各国大使館の皆さん、ありがとう。
 
あんなに好きだったのに、最近はもう心ときめくロックにめぐりあうことが全くなくなってしまってね。プライベートでロックを聴くことがメッキリ少なくなってしまった。
あ、仕事でのロックはゼンゼン別ですよ。Marshall関連の音楽は積極的に聴きます。
飽くまでも趣味の音楽の話。
そんな時にこういうアナログの音楽っていうのはホントにしみ込んでくるんだよね。
「生活の音楽」とでもいうのかしら?
自然に楽器を手に取って、生活のことを歌って、それに合わせて踊る。
もすごく原始的なんだけど、人間の生活の奥の方にデンと構えているもの…そういう音楽。
かつては歌謡曲がそうだったけど、日本はそういう音楽を失ってしまったと思う。
だからこうした音楽がすごく新鮮に感じるんだよね。
また機会があったら観に来よう。
今度はバルカン地方の音楽なんかいいナァ。

235突然、「それでは皆さんで記念撮影を致します」との場内アナウンス。

240え、どうすんの、どうすんの?
会場は大パニック!…というほどでもないけど、ナニをどうしたらいいのか迷っているウチに、何のことはない、ステージの出演者を大使館の人たちが記念に撮影して終わり。

250(一部敬称略 2018年11月20日 めぐろパーシモンホールにて撮影)