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2023年6月

2023年6月28日 (水)

『真夜中の怪鳥』をホンの少しだけ余計に楽しむ <後編>

 
厚顔不遜、頼まれもしないのに勝手に加藤広文さんの『真夜中の怪鳥』の補足説明をする2本立ての<後編>。
本当はサラっと終わるつもりだったんだけど、書き出したら色々と出て来てしまい、あまりにも長くなってしまったので2本立てとさせて頂いた。
その<後編>をどうぞ~!
0r4a0176  
「ロイヤル・アスコット」

「ロイヤル・アスコット」に招待された加藤さん。
「アスコット競馬」という名前はご存知だったので「よし!万馬券を取ってやるぞ!」と息巻いたものの、周囲の人にそれがただの競馬ではなく上流階級の社交の場であることを聞かされる。
私は映画『マイフェアレディ』を通じて中学1年生の時に「ロイヤル・アスコット」というモノがあることを知った。
英王室お抱えの写真家セシル・ビートンがデザインして「アカデミー衣装デザイン賞」獲得した世にも美しい衣装に身を包んだイライザ・ドゥーリトル、すなわちオードリー・ヘップバーンが、そこに集まった上流階級の人たちを相手に「The rain in Spain stays mainly in the plain(スペインでは雨は主に広野に降る)」とやってヒギンズ教授に仕込まれた「にわかレディ」ぶりを披露するが、つい自分が賭けた馬を大声で応援して地金をムキ出しにしてしまう爆笑シーン。
あそこで使われている曲は「Ascot Gavotte(アスコット・ガヴォット)」。
歌い出しがスゴイ…「Every duke and earl and peer is here(あらゆる公爵、伯爵、貴族のみなさんがココにお揃いです)」。
加藤さんは「ロイヤル・アスコット」がそんなところだとはご存知なく、万馬券を当てにロイヤル・アスコットに行こうとしていたワケ。
私が誘われたらかなりビビってしまうだろうな。
それはナゼかというと…90v自分の見た目です。
幸か不幸か、これまでホンの数回しか正装で臨む海外の会合に出席したことはないが、着飾った白人の間に混ざるとマジで自信を失くすよ。
かなりの自信家であらせらるる数学者、藤原正彦先生(新田次郎と藤原てうの次男坊、お茶の水女子大教授)でさえ、「あれだけは連中に敵わない」とアッサリ負けを認めていらっしゃる。
かつてウチの家内は着物でそうした場を見事に乗り切った。
「キモ~ノ、キモ~ノ」と言ってみんな寄ってきちゃう。
スウェーデンの人なんか「キモノってテレビのノーベル賞の授賞式の中でしか見たことがなかった!コレがホンモノのキモーノなのね?!」と、かなり興奮して家内に話しかけていた。
翻って、男の場合は「紋付き袴」というワケにはなかなかいかないもんね~。
サマにならん。
ま、背広なんてのはコーカソイド(白色人種)の身体の形に合わせてデザインされたものだからして、連中が似合うのは当たり前なんだけど、それに比べてスーツ姿のモンゴロイド(黄色人種)のみすぼらしさよ!
私は子供の頃にズッと水泳をやっていたので、肩幅と胸板には自信がある方なのだが全くダメだね。
向こうの連中は普段どんなにショボいヤツでもキチっとした格好をするとおっそろしくバリっとしちゃう。
手足の長さや頭蓋骨のサイズについては言うに及ばず、アレはやはり胸の形と胴体についている首の角度に秘密があるのではなかろうか?
実際、白人って肩こりはしないし、腰痛持ちの人も少ないと聞く。
加えて圧倒されてしまうのが女性陣の華やかさ。
背がスラ~っと高く、イブニング・ドレスがいいように映えてそれはそれは美しい。
それと、加藤さんも文章の中で触れていらっしゃるが帽子がまたスゴイ。
20年前、Marshallの40周年の記念パーティで同席したフランスのディストリビューターの社長の奥さんの帽子は素晴らしかった。
さっきまでパリのファッションショーで使われていたのではないか?と見紛うばかりの壮麗な帽子で、日本人が被ったら間違いなくナニかのコスプレかハロウィンになってしまうところだが、連中の場合はそれがちっともおかしくないワケよ。
4年前に久しぶりにその社長にお会いしてその時のことを「アノ時はオードリー・ヘップバーンをお連れになられたのかと思いましたよ!」と言うと、うれしそうに「当然だろ!」という顔をされていた。
向こうの人は自分の奥さんの悪口は絶対に言わないからね。Ra  
「ハギス」
加藤さんがエジンバラへ赴いた時にハギスを召し上がった…という一文がある。
エジンバラ、ヨカッタなぁ。
ズ~っと雨だったけど。160いつか家内を連れて世界遺産の「Forth Bridge」を見に再訪したいと思っている。
 
エジンバラの滞在記はコチラ⇒イギリス紀行2012 その7~エジンバラ

Fb さて、「ハギス」とはナンぞや。
コレもMarshall Blogで何度か取り上げているけど、ハギスはスコットランドの郷土料理で、茹でた羊の内臓のミンチ、オート麦、タマネギ、ハーブを刻んで、それを牛脂とともに羊の胃袋に詰め込んで茹でるか蒸すかしたモノ。
絶対に「食事の冒険」をしない私はそれを聞いただけでパス。
もちろんエジンバラに行った時も考えることすらしなかった。
ハギスがイギリスの「3大マズイもの」の常連だ。
それを加藤さんは召し上がって「エジンバラで食べたハギスはおいしかった」とおっしゃる。1_hgsそれと同じぐらい、あるいはそれ以上にムリっぽいのは「Jellied Eel(うなぎのゼリーよせ)」。
コレはロンドンの「コックニーの食べ物」とされていて、ブツ切りにしたウナギを煮込んでから冷やし、ゼリー状に固めたもの。
要するにウナギのニコゴリ。
もちろん私は近づきもしないが、ヤケクソにナマ臭いらしい。
コレも「イギリスの3大まずいモノ」の一角。
先日、久しぶりに会ったイギリス人にコレの話をしたところ「臭いどころではない!」と厳重に注意された。
ウナギは蒲焼が一番にキマってら!120_2「3大まずいモノ」には「マーマイト」もよくチャートインしているけど、コレは確かにマズイ。
イースト菌のカタマリ

ね。
でも、昨今では「マーマイト」やオーストラリアの「ベジマイト」は日本でもメジャーな存在か?

140s_2最近知ってヒックリ返ったのがコレ。
「Stargazy Pie(スターゲイジー・パイ)」というらしい。
コレは子供のイタズラにしか見えんな~。
イギリスの最西南端のコーンウォールの郷土料理で、パイから顔を出しているのはイワシだそうだ。
パイは卵とジャガイモからできている。
「gaze」というのは「見る」という意味だけど、同じ「見る」にしても星を見る時には「see」でも「watch」でもなく「gaze」を使うのが普通。
Rainbowにも「Stargazer」という曲があるでしょ?「Starwatcher」とは普通言わない。
で、このイワシたちは星を見上げているところなんだって。
だから「Stargazy Pie」。
実際には見たこともないけど、かなりの確率でウマくないのではなかろうか?130vそれと、茹で卵を挽肉で包んで揚げたスコッチエッグ。
名前の通り、コレもスコットランドの料理なんだけど私がコレがとてもニガテなんだよね。
それは味でも見た目でもなくて、トラウマがあるんです。
高校生の時、学校の食堂のメニューがしょっちゅうスコッチエッグで、仕方なしに何度も食べさせられた。
それが新鮮な卵と挽肉を使って作った揚げたてのスコッチエッグであればいいですよ。
300円ぐらいの定食だから肉は古くて臭いわ、作り置きしているので冷たいわ…ウマいワケがない。
そのうち「スコッチエッグ=マズいモノ」として脳ミソにインプットされてしまったんですわ。
気の毒なスコッチエッグ…。150s_3
「日本食ブーム」
1999年の時点で加藤さんは「ロンドンは日本食ブーム」とおっしゃっている。
ソーホーに行くと日本料理の店がいくつもあって、昔はよく入ったものだが、マァ高いばっかりでね。
ニンジンもジャガイモも生かと思うぐらいガリガリのカツカレーが1,600円とかね…今はもっともっと高いと思う。
それもバカバカしいので、ある時から「郷に行ったら郷に従え」とばかりに個人で海外に行った時には一切日本の料理店に行かないことに決めた。
麺とダシがどうしても恋しくなったら中華かベトナム。
時々ならインドもOK。ハズレなければロンドンのインド料理屋のカレーはすこぶるウマい。
そうでなければ、どんなに日本の食べ物が恋しくなってもファストフードで済ますか食事を抜くかしてガマンする。
下は4年前に4年ぶりに行ったロンドンの写真だけど、街中にたくさんのラーメン屋がオープンしていてビックリした。
それもナゼかみんな豚骨なの。Img_9781この「SHORYU(昇龍)」という店が人気のようで、マンチェスターでも大規模な店舗を見かけた。
デカい餃子で有名な「昇龍」が上野にもあるけどね、アレとはゼンゼン別。
私は「昔ながらのアッサリ醤油派」なので、日本にいても豚骨ラーメンを食べない。
だからロンドンに行ってまで食することは絶対にないが、値段を聞くと「醤油派」でヨカッタといつも思う。
最近の為替レートで値段を調べてみると、ラーメン+餃子+ウーロン茶で5,000円ぐらい。
だいたい日本の4倍ぐらいか?
しかし、日本でも1,000円のラーメンが全く珍しくなくなった。
アノね、昔は「ラーメン」というモノはお金がない時のメニューの代表選手だったんだよ。
  お母さん 「ゴメンね…お父さんの給料日前だからお金がないの…ラーメンでガマンしてね」
  子供   「エエエエ!またラーメンかよ!ヤダよ~!」 
ウチは父が職人だったので幸いこういうやり取りを母としたことはないが、世間ではこういうことが当たり前だったようだ。
それが今ではミシュランだもんね。
私の一番古い記憶では…小学校2年生の時だから1970年ぐらいか…ラーメン1杯が80円だった。
駅前の立ち食いそばが50円だったかナァ?
 
そもそも最近はどこでラーメンを食べてもスープが塩っ辛くてね~。
加齢によるせいもあるようだけど、フト思ったのが「アミノ酸」のこと。
ウチは何年も「調味料(アミノ酸等)」が添加されている食品を摂らないように努めている。
海外では有毒化学食品扱いされている「MSG」という「人工うまみ調味料」ね。
コレを長年摂取していないおかげで味覚が敏感になっているのかな?と。
でもラーメンは大好きなのでMSGが入っていることを承知の上で食べに行くんだけど、その際には「味は薄めでおねがいします!」とオーダーするようにしている。
MSGはガマンできても塩味はガマンできないからね。
気の利いた店員なんかだと「ハイよ!コチラの社長さん血圧高め~!」なんて言ってくれます。
でも、それは血圧のせいではありませんから、シオ!塩のせいです。Img_9784 
「レンガ造りが消える」

ロンドンに限ったことではないが、ヨーロッパは石の文化なので、100年前の建物なんてのはゼンゼン珍しくない。
だから100年前の写真を見ても馬車が車に変わったぐらいで街のようすがほとんど変わっていない…と言いたいところだけど、加藤さんが嘆くように古い建物がドンドン味気のない近代的なビルディングに建て替わっている。
0r4a0095ココはチャリング・クロス・ロードという通り。
ロンドンの神保町。
この場所にはかつて「Astoria」という1920年代に建てられた古い立派な劇場があった。
今は跡形もない。
加藤さんのご指摘通り、こうして「再開発」という名の破壊活動でドンドン街の風情が失われているのだ。
イギリス人は伝統や古いモノをとても大切にするので、こんなことをするのは日本人だけかと思っていたんだけどネェ…残念だ。0r4a0242下の2枚の写真は2015年にタワー・ブリッジの上から撮ったモノ。Img_0754私が初めてロンドンを訪れたのは2002年のことだったんだけど、その時には上の写真のダンゴ虫のような建物(市庁舎)や街に不釣り合いな高層ビルは全くなかった…ような気がする。
私がたかだか20年間定点観測をしているだけでもこんなに変化が大きいんだもん、加藤さんが「ロンドン見物は早い方がいいかもしれませんよ」とおっしゃっているお気持ちはよ~く理解できる。
その定点観測については私も『変わりゆくロンドン』と題してMarshall Blogにジックリ書き記しておいた。
 
コチラ(7本立ての1回目)⇒【イギリス-ロック名所めぐり】vol.50~変わりゆくロンドン 

Img_0755 
「インサイドアウト」

加藤さんが書いていらっしゃるのは海苔とシャリが反対になった「巻き物寿司」のこと。
いわゆる「裏巻き」ってヤツ。
アレが海外で「Inside Out」と呼ばれているとは知らなんだ。Io ワタシなんか「Inside Out」なんて聞くと即座にブレッカー・ブラザーズのブルースを思い出す。
不思議なことがひとつあって、「裏返し」が「inside out」、「上下さかさま」が「upside down」なのに対して「後ろ前」は「back- to- fronts」…って言うらしい。
「らしい」というのは、私の回りの英語人たちは「後ろ前」のことを「wrong way around」って言っているからだ。
「inside out」や「upside down」と比べると、コレだけなんかスッキリしない感じ。
どうでもいいんだけどね。
いつかこのことを書いてみたかっただけ。100cd 
「冬の花火」
「1605年11月、カトリック教徒たちが議事堂爆破を企てました」…と、加藤さんは実にシレっと書いていらっしゃる。
コレも紙幅の制限が関係しているのであろう。
ところがこの出来事は「火薬陰謀事件(Gunpowder Plot)」といって、イギリスではひとつの文化の元になった。
我々日本人にも変な形で一部が伝わっているのだ。
コレがどんな事件だったかというと…
ヘンリー8世が最初の奥さん「キャサリン・オブ・アラゴン」と離婚したいがためにローマ法王と袂を分かってカトリックと決別し、自らが首長となってイングランド国教会を設立したことはMarshall Blogでもやった
するとカトリックの皆さんはプロテスタントの皆さんにイジめられるようになってしまう。
そして、長年にわたる迫害の末「コリャたまらん!」とカトリック教徒12人が1605年11月5日、議会ごと爆破してプロテスタントの保護政策を採っていた時の国王、ジェームス1世の暗殺を企てた。
議会の地下に大量の火薬を持ち込んでイザ決行という段になったが失敗!
当局に密告したヤツがいたのだ。
そういえば、私の友人のお父さんが東条英機を暗殺しようとしていた…なんてことをココに書いたことがあったけど、アレはマジで驚いたわ。
さてロンドン、その時地下にいたガイ・フォークス(Guy Fawkes)という一味のウチの1人が逮捕された。
下がガイ・フォークス。
なかなかのハンサム・ガイ…この「ガイ(guy)」という言葉ね、「ハイ、ガイズ!」なんて向こうの人はよくやるけど、この「ガイ」は「Guy Fawkes」の「Guy」なんだよ。Gfフォークスは捕らえられて2日間に渡って凄絶な拷問を受けるが完全黙秘を通す。
「フーム、おぬし…見上げた根性よのう」とジェイムス1世をも感心させたという。
いずれにしても死刑は死刑。
捕らえられた仲間が首吊り、内臓えぐり、四つ裂き等の刑に処せられるのを見て、フォークスは自ら死刑台から飛び降り、首の骨を折って絶命した。
そして、以降11月5日は「ジェイムス1世が暗殺されず、イギリス国教会が守られた日」ということになって毎年祭りが開かれるようになった。
それが「Guy Fawkes Night(ガイ・フォークス・ナイト)」で、盛大に花火を上げて祝う。
子供たちはガイ・フォークスの人形の首にヒモをくくり付けて街中を引きずり回し、「A penny for the Guy!」と大人たちにねだる。
まるっきりハロウィンの「Trick or treat!」。
ハロウィンの子供たちの習慣の歴史は1950年からと歴史が浅いので、ガイ・フォークス・ナイトがオリジナルと言えるようだ。
そして、その引きずり回してボロボロになったガイ人形を焚火にくべるのだそうだ。
残酷だナァ。
いつもMarshall Blogに書いている通り、向こうは「水に流す」ことを良しとしない文化なので、いつまでたっても怒りを解くことをしない。
一部の地方の反マーガレット・サッチャーがいい例だ。
でも、数年前にイギリスの人にこの祭りのことを尋ねると、子供たちによるガイ人形の「市中引き回し」はもうやっていないそうだ。
ハロウィンに取って替わっっちゃったのかな?1_gfnさて、下のお面。
コレが銀行や宝石店を襲撃する連中のマスト・アイテムであることは皆さんご存知の通り。
「ガイ・フォークス・マスク」という。
細おもてに「イングリッシュ・マスタッシュ」と呼ばれる口ヒゲ…なるほど上の肖像画のガイ・フォークスのエキスが取り込まれているような気もするが、本人の方が全然ステキだ。
「火薬陰謀事件」から大分時間が経って18世紀にデザインされたらしいが、「悪事を企んだ者」として悪意を持って醜くデザインされたそうだ。
みんなまだ怒ってるから。
このことから察せられる通り、「guy」という言葉は、元々「醜いヤツ」という意味で使われていたらしい。Gf 
「ラウンド」
「割り勘にする」ことを英語で「Go Dutch(ゴー・ダッチ)」という。
ナンで「オランダ」なのか?
17世紀のイギリス人の商人が、当時ケチとされていたオランダ人をバカにしてそういう風に言い出したらしい。
で、加藤さんが解説している通り「ラウンド」というのはイギリス流の割り勘の方法。
例えばアナタと私がパブに行って、最初の1杯は私が代表してカウンターに行ってすべて支払う。
1パイントぐらいすぐに飲んじゃう。
イギリスのビールは本当においしいからネェ。
すると2杯目はアナタがカウンターに行って私のビールの分もまとめて支払って頂く。
どこで終わるかということはあるにせよ、盃が重なれば基本的に支払いはと割り勘になる…というワケ。
コレはパブでの支払い方法がキャッシュ・オン・デリバリーなので、最後に全てまとめて支払うということができないことから自然に生まれたシステムなんだと思う。
私もMarshallの連中と飲みに行くとコレに加わる…というか、加わらざるを得ない。
2人の時は簡単なんだけど、大人数でやると大きな不公平が生じるケースがあるワケ。
自分が支払う番が来る前にみんなの腹がタプンタプンになって「お開き」になることがあるのだ。
この場合はタダ飲み。ちっとも割り勘ではない。
フランクフルトの駅前で飲んだ時はまさにコレだった。
こういう時はどうするかと言うと、「いいよいいよ、また次の機会に頼むわ!」となるんだけど、私のような海外からの参加者には幸いにしてまず「次の機会」はやって来ない。
結果「飲み逃げ」である。
下はロンドンのブルームズベリー地区にあるパブ。
夕方になるとロンドンの街はそこらじゅうがこうなっちゃう。
間違いなくみんな「ラウンド」をやっているハズ。Img_9482 コチラはThe City(ロンドンのビジネス街)のレドンホール・マーケット(Leadenhall Market)のパブ。
上のブルームズベリーと客層が全く違う!
考えてみるとこの「ラウンド」というシステムはカウンターの混雑を緩和させる目的もあるのかも知れないな。
こんなに立派なサラリーマンもラウンドで飲んでいるハズ。
さっき書いた通り、こんな場所でも結構気後れするよ…紳士も淑女もみんな背が高くてバリっとしていてカッコいいから。Img_0909 オモシロかったのはマンチェスターへ行って下のパブに入った時のこと。
私が「ひとりラウンド」でエールを味わっていると男女混成の7人ぐらいの若いグループが隣の席にやって来た。
すぐに「最初はオレが払うよ!」となる。
「お、やってるやってる」と思って様子を窺っていると、3回目ぐらいになると女性がお代わりを断り出した。
それでも男性だけでラウンドをやっていたんだけど、明らかに迷惑な顔をしているヤツが出て来た。
そのウチ飲むヤツがひとりになっちゃって、私と同じ「ひとりラウンド」でになってしまい、つまらなそうに飲んでいた。
ラウンドを繰り返すたびに盛り上がっていく過程がとてもオモシロかった。
考えてみるとその人を誘って2人ラウンドすればヨカッタか…イヤイヤ、それほどは飲めません!330_2 
「規格品になるな」

イギリス人は洗剤で食器を洗った後は濯(すす)がない。
つまり洗剤を水で流し落とさない、ということに加藤さんはギョっとしたという。
コレは本当の話。
実際にイギリス人に確認して私もビックリした。
それだけ「人体に無害な洗剤を使っている」ということが言えるんだけど、加藤さんによれば次回同じ皿を使った時に、残留している洗剤で料理の味が変わってしまうことをイヤがる人もいるそうだ。
そこかよ!?…感覚の違いを感じるナァ。
そもそも、向こうの人はあんまり料理をしないからね。
知り合いのイギリス人曰く、冷凍食品を温めてそのまま食べて、終わったら容器ごとポイと捨てるので食器を洗う機会も少ない…のだそうだ。
家内が「毎食素材から作っている」と言うと、「エエエ!ホントに毎回作ってるの?」と真剣にビックリして、ご主人に「アナタも作ってもらいたい?」と訊いていた。
ご主人は「イ、イヤ、別に…」みたいな感じだった。Dish「流さない」と言えば、映画なんかを見ていると、向こうの人って風呂に入る時にアワアワの湯船から出てそのまますぐにバスローブを着るでしょ?
我々の感覚だと「流し湯をしないの?」と思うけど、アレでおしまいなんだって。
というのは、西洋の水道水は硬水で、そのままにしておくと含有している強い石灰分で肌がカサカサになってしまうのだそうだ。
そこでそうなる前に湯船に保湿成分を含んだ石鹸を入れておく。
それがあのアワアワ。
だから最後にあのアワアワを洗い流してしまうとせっかくの保湿効果が期待できなくなってしまうのだ。
私なんか海外出張すると、備え付けの石鹸でガンガン洗ってほったらかしているけど何ともないよ。
ただ、硬水だと石鹸が泡立たないのでムカっとくる。Ab …と、加藤さんの著書をお借りして、しばらくイギリスから遠ざかっているウサを晴らすようにゴチャゴチャと書いてしまったけど、<前編>の冒頭に書いたようにこの本を読んで頂く時の付帯知識として楽しんで頂けていればうれしいことこの上ありません。
  
私はもう年齢的に「海外で生活したい!」なんて思わなくなった。
食餌の違いにもう全く耐えられないのだ。
それでも半年ぐらいドップリ腰を落ち着けてイギリス国中を回り、加藤さんのように随筆を書いてみたいナァ…とは思うのです。
自分がこれまで蓄えて来た愚にもつかないウンチクを交えて濃い文章を書く自信はあるんですけどね…。
誰かやらせて頂けませんでしょうか…ムリか…Marshall Blogできなくなっちゃうもんな。
0r4a0168

2023年6月27日 (火)

『真夜中の怪鳥』をホンの少しだけ余計に楽しむ <前編>

 
佐渡にご在住のfacebookの友人のご投稿によって知った『真夜中の怪鳥(講談社出版サービスセンター刊)』という1冊。
「ロンドンつぶや記差異事記」という副題がとても気になった。
ナヌ?「ロンドンつぶやき歳時記」?…ロンドン?
0r4a0176そして、アマゾンで本を調べてみると下のような惹句が寄せられていた。
「ロンドンでは真夜中に鳥が鳴く」?…ナンダそりゃ?
住んだことはないにせよ、私も30回以上は渡英してロンドンには数十泊してきた。
でも、真夜中に鳥の啼き声なんて聞いたことないぞ。
一体ナンのこっちゃ?と大きな興味を抱き、「良い」状態の中古本が手頃な価格で売りに出ていたので早速オーダーしてみた。
そして本が届いてビックリ。
腰巻ごとビニールでラップしてあるではないの!
「ん?コレはどこかの図書館の蔵書だったに違いない」と思って本をチェックすると…。
0r4a0172ナンじゃコレは?…蕨市の図書館の蔵書ではないか!
こんなことアマゾンの商品情報に書いてあったか?
ま、読めさえすりゃそれほど大きな不満はないんだけれど、コレじゃ私が図書館から失敬して来たみたいではあるまいか!
「借りパク」ってヤツじゃん?20_2…と思ったら、表4(裏表紙)に「除籍済」のステッカーが貼ってあった。
これなら心配ないか。
でもあんあまり気分が良いモノではないゾ。30_2扉を開けると…おお、揮毫本じゃん!
チョット気分がよくなった。40vそして、奥付を見ると…「寄贈」とある。
つまり著者の加藤さんが蕨市図書館に差し上げたモノを勝手に除籍して古本屋へ売りさばいてしまったということか?
そんなん失礼じゃない?50さて、どんなことがこの本に書かれているのか…。
著者の加藤広文(こうぶん)さんは佐渡のご出身でNHKにお勤めされていらした方。
だから、「佐渡つながり」で私の友人がこの本についてご投稿されていたというワケ。
その加藤さんが社命により1998年に突如ロンドン勤務を命じられて2年間滞在する。
読売新聞の欧州版に週1回、新潟日報の文化欄に月1回掲載された彼の地で経験を記したエッセイをまとめた本がこの『真夜中の怪鳥』。 
「差異事記」とアテたようにイギリスとの文化や習慣の違いがオモシロおかしく綴られている。0r4a0759 さて、私もこうして毎日文章を書いていて思うのは「難しいことをやさしく書く」のは難しいということ。
反対に「やさしいことを難しく書く」のはそう難しいことではないが、意味がない。
そこへいくと、加藤さんは徹底的に「やさしいことを素直にやさしく」書いていらっしゃって、奇を衒わない文章は読んでいて大変気持ちがよい。
これだけ平易な文章を連ねるのはなかなかに度胸と忍耐のいることですよ。
そもそも、パッと本を開くと白っぽい。
コレは紙面を占める漢字の割合がちょうど良いことを示している…というのは植草甚一氏の受け売り。
時々、本を開くと黒っぽいヤツがあるでしょう?
フランク・ザッパの「Black Page」の譜面じゃあるまいし、そういうのは漢字を使いすぎているからで、それだけで読む気が失せてしまう。
実際、facebookの投稿を見ていても「エエエエ?!今どき?」というぐらい意味もなく漢字を使っている人を時折見かける。
例えば「ありがとうございます」を「有難う御座居ます」とするみたいな。
こういうのはもう「平仮名表記」ですよ…イヤ、「ひらがな表記」ですよ。
実は私も若い頃は利口ぶろうとして漢字を多用していたんだけれど、大学の卒論の教授から「キミキミ、孔子や孟子じゃあるまいし、ナンだってこんなに漢字を使うんだい?こんなの戦前までだよ!今はひらがなを使うんですよ!ひ~ら~が~・なッ!」とかなり手厳しくやられた。
教授は「コレでは単位はあげられないな~」とか言い出す始末で「チョチョチョ、就職先が決まってるんですよ!一部上場の会社なんですよ!」と懇願して強引に単位をシェアして頂いた次第。
だから卒論の評価は「可」だ。
今ではなくなったけど、後々までこの時のことを夢で見てうなされた。
そして、この時から漢字の採用に対する考え方をスッカリ変えた。
加藤さんの書く文章はまさにその教授が「優」を出しそうな綴り方だ。
NHKの人なので、この辺りのことは業務上ごく自然なことなのかも知れない。0r4a0168 本題の前に早速脱線で恐縮だが、昔の新聞って真っ黒だったんよ。
コレは上に書いた通り紙面を占める漢字の割合がメッチャ大きかったということもあるんだけど、本文に使われている漢字すべてにルビが振ってあったから余計に黒かった。
もちろん、漢字が読めない人が多かったからなんだけど、当時は活字を組み合わせて版を作る活版印刷だったので、新聞社が被る経済的&時間的な負担が大変に大きくずっとコレを止めたがっていた。
そして、「子供の目に悪い」とかナントカ言ってとうとう戦後に至って廃止した。
ルビを使う利点は難読漢字を自在に使えるということなのね。
そして、ルビを廃止してひらがなの比率を増やした結果、国民の漢字の識字率が低下したそうだ。
要するにバカになっちゃった…私がそのウチの1人というワケ

3ah_2  
たまたま明治の新聞をインターネットで探していたらこんなのを見つけた。
出典はわからないが、ブラジルへの移民が始まったことを報道した記事。
まず、「伯西」というのがカッコいい。正式には「伯剌西爾」。
当然漢字は旧字体。
スゴイね、昔は「皇国移民会社」なんて、移民を斡旋する会社がいくつもあった。
そして1908年、783人の日本人が「笠戸丸」に乗ってブラジルへ渡った。
ね、漢字全部にルビが振ってあるでしょ?
ナゼこの記事が目に留まったかというと、私にはこの笠戸丸で海を渡ったウチのおひとりのお孫さんの仲良しがいるのだ。
だから日系3世だね。
とても聡明な女性で、サンパウロでナニやらものすごくムズカシイ仕事に携わっている。
日本にいた頃、一緒に犬神サアカス團を観に行ったのはとても良い思い出だ。
 
この辺りのことがコチラに書いておいたので興味のある方は是非ご覧あれ。
   ↓    ↓    ↓
【Music Jacket Gallery】プロモーション・アルバム特集 <中編>

脱線はココまで。
脱線は「孫」までとキメているから。

Os21 
ところで今日はナンだってこのShige Blogの記事を書いているのかというと、『真夜中の怪鳥』を読んでいてどうしても補足説明を加えたくなってしまいましてね…。
別の言い方をすると「余計なお世話」というヤツ。
でも、この本に興味を持って読んでみようとする人が今から書くことを知っていれば、幾分楽しみが大きくなるのでは?という風に考えたのだ。
加えてコロナ以降ずいぶん長いことイギリスから遠ざかっているので、イギリスに関することをナニか書きたくなっちゃったのです。
 
ではさっそく、まずはタイトルから。
『真夜中の怪鳥』とは何のことか…。
この本は推理小説ではないのでネタをバラしても差支えないでしょう。
 
この「怪鳥」とは「小夜啼鳥(サヨナキドリ)」のこと。
英語で言うと「Nightingale(ナイチンゲール)」。
あの有名な「クリミア戦争の天使」の「フローレンス・ナイチンゲール」のことではありませんよ。
ちなみにナイチンゲールってナンであんなに尊敬されているのか?
傷ついた多くの兵士を献身的に看護したことでその名を良く知られているけど、それよりも現代に通じる看護の環境やシステムのノウハウの基礎を作ったことが評価されているのだそうだ。
実際は「優しい看護婦さん」というより、かなり厳しい人だったらしいよ。
こうして見ると結構コワい顔してるもんね。Fnコレが鳥の方のナイチンゲール。
「ナイチンゲール」というのは古い英語で「夜に歌う」という意味で、加藤さんはコレが夜に盛大に啼いているのを耳にして驚いたというワケ。
YouTubeでその啼き声を確認してみると、「怪鳥」というイメージではないな。
日本では鳥が夜に啼くことはないので最初は誰でもビックリするんでしょうね…つまり、私はロンドンの夜に鳥が啼いているシチュエーションは経験したことがないということ。
Ng_2実はコレが説明したくてこのパートを書いたワケではない。
イギリスの有名なバラードについて書いて加藤さんの文章の補足説明をしたかったのです。
そのバラードのタイトルは「バークリー・スクエアのナイチンゲール(A Nightingale Sang in Berkely Square)」。
ビング・クロスビーからシナトラから、ありとあらゆる名だたる歌手が吹き込んで来た超有名曲。
1940年のリリースだというからヨーロッパでは「戦中」の歌になる。
キューブリックの『博士の異常な愛情』のエンディングで、核爆弾のキノコ雲の映像とともに流れる美しいバラードがあるでしょ。
「We'll Meet Again」という曲。
核戦争で人類がは滅亡してしまうのに「またお会いしましょう」とは凄まじい皮肉。
「対位法」という悲惨な場面に明るく楽しい曲をかぶせる映画の基本的な手法。
黒澤さんの『酔いどれ天使』や『生きる』なんかでも効果的に使われている手法だけど、キューブリックのは強烈極まりない。
あの曲を歌っているイギリスの国民的歌手がヴェラ・リン。
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そのヴェラ・リンが歌っている「A Nightingale Sang in Berkely Square」がイギリスではとりわけ人気が高いらしい。
ヴェラ・リンは1917年の生まれで、3年前に103歳で亡くなった。
1917年というと、大正7年。
日本でいうと山田五十鈴や轟夕起子と同じ歳だった。
そういえば、私が子供の頃は「明治&大正生まれの人」ってそれほど珍しくなかった。
そもそもおジイちゃんもおバアちゃんも明治生まれだったし。
最近では明治はおろか、「大正生まれの人」にも行き合わなくなった。
それもそのハズ、大正期末年の15年は1926年で、その年に生まれた人はもう今年97歳だからね。
「大正の人」もいなくなるワケだよ。
次は我々「昭和の人」がそう言われる番だゼ。
54s_2かつてはマンハッタン・トランスファーも1981年のアルバム『Mecca for Moderns』でこの曲を取り上げていたっけ。Mfm_2さて、この曲は何について歌っているのかというと…
「本当の恋人たちがメイフェアで出会った時、鳥たちが歌い、冬が春に変わった」
「ボクたちが出会った夜、リッツで食事をしていてバークリー・スクエアではナイチンゲールが啼いていたよ」
「キミが振り返ってボクに微笑みかけた時、バークリー・スクエアではナイチンゲールが啼いていたのさ」…とかなんとか、やたらと甘くロマンティックな内容なワケ。
 
メイフェアというのはハイド・パークに隣接し、バッキンガム宮殿にほど近いロンドンの高級エリアのひとつ。     
その地区にあるのが下のバークリー・スクエア。
ロンドン最大の繁華街であるウエストエンドの中心地、ピカデリー・サーカスからほんの少し西へ行ったところ。
ロンドンには大きな公園の他にこうしたチョットした広場がたくさんあって街が本当に美しい。55下が歌の中の2人が食事をした高級ホテルの「The Ritz」。
いつも血眼になって少しでも安いB&Bを探している私などは一生止まることができないホテル。
確かにバークリー・スクエアはこのリッツから近いんだけど、鳥の啼き声が聞こえるほど近くはない。
だから、2人は食事をした後、バークリー・スクエアを散歩していたんだね。
こんなことは鳥の啼き声や音楽を聴く分にはもちろんどうでもいいことなんだけど、どうせ聴くなら周囲のことまで知っていた方がオモシロい。
加藤さんももちろんこの曲をご存知だったことでしょうが、紙幅の関係で割愛したに違いない。Img_7466コレは2012年6月のリッツ。
「Congratunations Your Majesty」とあるのは、2012年、エリザベス女王の在位60周年を記念していた時に撮影したから。
561945年3月末、『撃滅の歌』というプロパガンダ映画が日本で公開された。
有名な混血のオペラ歌手藤原義江が出演していて、音楽を通じて国民の戦意高揚を促す内容。
敗戦のたった4か月半前、そして東京大空襲のたった3週間後でもこんなことをやっていたことに驚く。
映画には西條八十作詞、万城目正作曲の「乙女の旅路」という曲が挿入されている。
銃後の若き女性の気持ちを綴った曲。
いい曲なんですよ。
当時はクラシック上がりのチャンとした作曲による出来の良い曲を軍歌にしていたので、どの曲も極めてクォリティが高い。
歌うのは高峰三枝子、轟夕起子、月丘夢路という3人の大スター。
轟さんと月丘さんは宝塚できちんとした音楽の教育を受けているので、美しいだけでなく声もいいし、歌もすこぶるうまい。
最後のコーラスの3声のハモリなんて実に素晴らしい。
で、その歌の中にこういう一節が出て来る。
 
「♪柳散る散る銀座の並木 そぞろ歩きよ昔の夢よ
 
昔はとにかく銀座がナンバーワンよ。
渋谷?新宿?…冗談じゃない。
かつての東京は銀座と浅草で出来ていたんだよ。
「そのステキな銀座をブラブラ歩いて楽しむことなんてもうとても叶わない願いなのね」と歌っている。
つまり戦争でそうした楽しみが全て無くなってしまったけど、お国ために銃後にいる我々はガマンして兵隊さんと一緒に戦い抜きましょう!というワケ。
同じ戦時下でもロンドンではリッツでメシ喰ってバークリー・スクエアを夜歩きしてるのにナァ。
でもそのロンドンも「ナイチンゲール」がリリースされたのと同じ年の後半、「The Blitz(ザ・ブリッツ)」と呼ばれるドイツ軍の大空襲を受けて壊滅的な被害を受けた。
もうバークリー・スクエアをブラブラしたりすることが出来なくなった。1_ot3  
「セミのいない夏」
という文章。
ウチのドラムス「NATAL」を使ってくれている布袋さんバンドのドラマーのスティーブ・バーニーが夏の盛りにウチに遊びに来てくれた時のこと。
彼は私よりズッと若いワリにはGenesisの大ファンで、私が1978年に来日公演を観に行ったことを大層うらやましがってくれた。
下の写真はその来日公演時のプログラムを手にしてご満悦の様子のスティーブ。
で、イギリスと日本の夏の違いについてスティーブと話していた時、彼がこう言った…「シゲ、アレってナンていうんだっけ。ホラ、木にとまってギャ~ってスゲエ音で騒ぐヤツ」
「Cicada(シケイダ=セミ)のこと?」
「そうだ、シケイダだ、シケイダ!」
リヴァプールからやって来た英語の達人に私が英単語を教えるなんてことがあって良いのであろうか?
でも、スティーブがその単語を即座に口にすることができなかった理由はすぐにわかった。
加藤さんが記しているようにイギリスにはセミがいないのだ。
蚊もいない。
地震もない。
加藤さんは「cicada」はラテン語をそのまま転用していると書いていらっしゃるが、元々はラテン語にもない言葉で、地中海周辺のどこかの言葉を借用しているのではないか?という説があるらしい。
東京もセミが少なくなった。
もうコウモリなんて全く見なくなったもんね。
私が子供の頃は夕方になると、どこからともなくチラチラと飛んで来たモノだった。60v 
「傘をささないロンドン人」

もうコレは何度もMarshall Blogに書いてきたけど、加藤さんが書いていらっしゃる通り、ロンドンの人たちはホントに傘をささない。
チョットぐらいの雨どころがザーザー降りでもささない。
加藤さんの在英時、傘さすとすれば、ゴルフ場で使うようなどデカイ傘が全盛だったらしい。
そう言われてみると…実はMarshallも傘を作ったことがあるんだけど、やっぱりゴルフ場の傘みたいにでっかいヤツだったわ。70_2傘をささないのであれば雨が降った時にどうするか…それは、フーディの出番。
日本でいうパーカーね。
フードが付いている服だからイギリスでは「Hoodie(フーディ)」と呼ばれている。
豪雨でもコレ一本。
とにかくフードをスッポリ被って、しかめっ面をして歩くのがロンドン式。
ビックリするほどビチョビチョになっているヤツがいるよ。80s_2 
「苦痛を与えず料理せよ」

「英国では金曜日に魚を食べる習慣がある」というのは他の本で読んだことがあるけど、実際のイギリス人からそのことを耳にしたことがない。
タマタマその話題になったことがないからなのかも知れないが、まぁ、サシムキ連中は「肉、肉、肉」の「肉ファースト」だ。
そんな彼らが金曜日に魚を食べないのはローマ時代のカトリックの習慣が元になっているんだけど…アレ?
イギリスはヘンリー8世の時にカトリックと縁を切ったハズでは?…ま、いいか。
とにかく「キリストが十字架にかけられた金曜日は肉を食べるのを止めて代わりに魚を頂きましょう」という「精進の日」になっていて、金曜日はフィッシュ&チップス屋が繁盛するとかいうんだけど、オイオイ、チョット待てよ!
魚だって生きものだぞ!
それじゃ精進にならないじゃないか!
西洋では魚の命は「命」とみなさないってか?
さかなクンが聞いたら気を悪くするゾ。
我々がゴハンを食べる時の「いただきます」は「『命を』いただきます」という意味である…と仏教の説話で聞いたことがある。
このことから西洋人がナニも言わずに食事を始める理由がわかるような気もするが、敬虔なクリスチャンは食前にお祈りをするナァ。
いずれにしても「天にまします主の恵み」に魚の命は入っていないのかも知れない…ギョギョギョ!
替わって日曜日。
日曜日は家族そろって徹底的に肉を喰うぞ!
The Kinksのヒット曲に「Autum Almanac」というイギリス人の日常を描いた曲があって、その中に「土曜日にはサッカーを、日曜日にはロースト・ビーフを」という歌詞が出て来る。1_aaで、このロースト・ビーフが日曜日に食べる習慣が「Sunday Roast(サンデイ・ロースト)」という肉料理のメニュー。
ロースト・ビーフでなくても、牛、豚、鶏、ジビエ…肉ならなんでもいい。
とにかく肉を食べる。
私も若い頃だったらうらやましく思うけど、もういいナァ、肉は。
それより佐渡のおいしいイカを食べてみたい。
それにしても、問題はこの付け合わせの野菜のことよ。
カリフラワーもグリーンピースも今の日本人はそう食べないよネェ。
イギリスへ行くとガンガン出てくるんだよ。
きっとこうした肉食で偏る栄養分を補う成分を含んでいるんだろうね。
長年の肉食で培った「庶民の知恵」だ。1_sunday日曜日になると食事を提供するパブはその「Sunday Rost」を一斉に看板に掲げる。
Img_2403コレは脱線。
以前、Marshallのお手伝いで毎年フランクフルトの楽器の展示会に行っていた。
そこではスタッフ全員でザクセンハウゼンという地区にある「Adolf Wagner(アドルフ・ヴァグナー)」という人気のドイツ料理店に何度か食事をしに行くのが習わしとなっていた。
ドイツなのにビールを全く置いておらず、「Apfel wine(アプフェル・ヴァイン)」というリンゴ酒をひたすら飲む。
コレが酸っぱくてとてもおいしい。
料理はステーキからポークソテーまで肉ばっかり。
もちろんサラダも出て来るけど、ドレッシングの酢が猛烈にキツくて私の口には合わなかった。
ある時、4人家族が我々の隣のテーブルに座った。
両親と小学生ぐらいの男の子2人。
やがてオーダーした料理が運ばれて来た。
大きな皿に乗っていたのはブタの丸焼きみたいなゴッツい肉のカタマリだった。
準備が整うと、お父さんもお母さんも子供2人もフォークとナイフを手にして一斉に肉に群がった。
ガツガツガツガツ、バキバキバキバキ、ムシャムシャムシャムシャ、バリバリバリバリバリ…。
それはまさしく昔テレビで見たことのある光景だった。
そのテレビ番組とは『野生の王国』。
腹を空かせたライオンの親子が、脇目も振らずに仕留めたばかりの獲物を一気に平らげようとしている光景そのものだった。
私は呆気に取られてしまったが、隣のイギリス人も驚いていた。
最近は「いきなりステーキ」なんてのもあるし、日本も「肉料理」が食餌の中心になって久しいけれど、本場の肉食は日本と全く違うと思うのだ。
その点、日本人はまだまだ「魚民」だと思う。
その「肉民」の親子のようなことはしないし、出来ないだろう。
アレは本当に衝撃の一夜だった。Aw「土曜日はサッカー」というと…イギリスでは小さなホテルでもロビーにバーがあって、一堂が会せるスペースがついている。
そこには大抵テレビが置いてあって、サッカーの試合中継があると幾人のオッサンが集まり興奮気味にひいきのチームを応援している。
コレ、イギリスではかなり当たり前の光景だと思っているんだけど、そこに集まっているオッサンって宿泊客ではなくて近所の人たちなんだよね。
試合が終わるとめいめいに家に帰って行く。Hl_2 書き出したらいろいろ出て来てこの先がエラく長くなってしまったのでココで1回終わります。
<後編>もお楽しみに!
0r4a0168<後編>につづく