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2018年11月12日 (月)

レナード・バーンスタインの/とアメリカ

 
ひと月ほど前、レナード・バーンスタインに関する講演会&演奏会に行って来た。

9lb 以前にもMarshall Blogで紹介したことがあるが、下は私の大の愛聴盤。
バーンスタインのニューヨークを舞台としたミュージカル作品のオムニバスというかトリビュート・アルバム。
今から23年前に初めてニューヨークに行った時にタイムズスクエアのヴァージン・メガストアかなんかで買った。
もう大スキなの。
まずジャケットがいいでしょ…若き日のレニー。

10私が初めて「レナード・バーンスタイン」の名前を意識したのは40年以上前、12歳か13歳の時のことで、月並みながら映画『ウエストサイド物語』を通じてのことだった。
久々にリバイバル公開をするというので、映画小僧だった私は日比谷のスカラ座にひとりで観に行った。
ワガママな私は誰かを誘って映画を観に行くということはほとんどしなかった。
ひとりで自由にやりたいのだ。
冒頭、線のイラストがニューヨークの摩天楼になって俯瞰でマンハッタン島を写すでしょ?
そこにジェット団の悪ガキのフィンガー・チップの音。
もうドアタマからトリハダが立って仕方がなかった。
当時はレコード・プレイヤーを持っていなかったので、サウンドトラックのレコードを買うことができなかったし、買った記憶もないんだけど不思議なことにほとんど全曲覚えたナァ。
カセットテープでも買ったのかな?
だからその数か月後にロックにのめり込むようになった時、トッドが『Another Live』で「Something's Coming」を取り上げていたのはうれしかった。
今ではこの映画のサントラ盤とオリジナル・ブロードウェイ・キャスト盤がウチにある。
私は、ココに収められている曲をクラシック音楽という分野から離して考えた場合、つまり「ポピュラー音楽」という風に考えた場合、もう人類はコレ以上に良い曲を作ることは不可能であると真剣に考えている。
クルト・ワイルなんかもそうだけど、当時はクラシックで食っていけない作曲家がブロードウェイ・ミュージカルに曲を提供して、誰がヒット曲を出すかで才能を競ったのだそうだ。
百花繚乱、悪いモノができるワケがない。

20こっちはCD。
ナゼかウエストサイド・ネタが収録されたNAXOS盤が何枚かあるのだが、コレには理由があって、特にウエストサイドが聴きたかったから買ったワケではなくて、カップリングされている「ウエストサイド」以外のバーンスタインのクラシック作品を聴いてみたかったから。
それに勝手にウエストサイドの「Symphonic Dances」がついて来ちゃうワケ。
「Symphonic Dances」はバーンスタイン自身がアレンジしたウエストサイドのオフィシャル・ダイジェスト・メドレーね。
このブロードウェイの前にも「トライアウト」という試験興行をワシントンD.C.他で上演している。
そのためのリハーサルに4週間を予定していたのだが、完成させるまでその倍の8週間を要したそうだ。
1984年のバーンスタインが初めて指揮をしたレコーディングでは何しろあのホセ・カレーラスもヘコんでたからね。
それほどムズカシイんだって。
そうそう、そのカレーラスがトニー役を務めたバージョンのリハーサルの動画でカッコいいシーンがあった。
木管の人だったかな?ベテランの奏者がスコアについて何かをバーンスタインに言おうとすると、彼はそれを一蹴して、自分の胸を指差しながらこう言う…「I wrote」って。
メッチャかっこいい!
なんかアレを見ていると、カレーラスにはキビしいのに、キリ・テ・カナワにはやたらと優しんだよね。
小学生みたいに好きな人にはツレなくしちゃうのかね?…後年、レニーはバイセクシャルを認めていた(昔は同性愛は犯罪だった。だからアップル社のロゴのリンゴは一口カジった跡がある。この辺のことはマーブロに書いた)。30コレも以前に紹介したことがあるけど、オリジナル・キャストによる演奏のシングル盤。
「Maria」と「Tonight」、それに「America」と「I Feel Pretty」のカップリング。
ピクチャー仕様がうれしい。
コレね~、フラっと入った大阪の難波の新星堂で買ったんだよ。
たしか1枚100円か200円だった。
この時、同時にFrank Zappaの『You can't do that on Stage Anymore』のサンプラーを買ったように記憶しているから、1988年ぐらいのことか…。
まだZappaがピンピンしていた頃の話。35ところで、ウエスト・サイドの曲って、俳優さんたちからイヤがられていたんだってね。
ミュージカル俳優が演じるにはムズカシすぎて歌いにくいんだって。 で、ブロードウェイでの初演は1957年のウインター・ガーデン・シアター。
エヘン…私はこの劇場に2度ほど『Cats』を観に行ってるんだナァ。7wgt 一方、こちらはバーンスタインのクラシック関連作品。
「エレミア」とか「ジュビリー・ゲーム」とか「不安の時代」とかの作品や指揮者として吹き込んだもの。
やや無理して聴いた。
面白くはないな…と思っていたら、この人、クラシックの作曲家としての評価は高くないんだってね。
指揮者としてのスーパースターだったらしい。
「ラプソディ・イン・ブルー」なんかいいよね~。指揮をしながらピアノを弾くのがやっぱりカッコいいんでしょ。
そして、指揮者のバーンスタインといえばマーラーということになるのかな?
40珍しいというか、人の口に上らないのはコレ。
ロザリンド・ラッセルの『Wonderful Town』というブロードウェイ・ミュージカルの映画版のサントラ。
コレね~、メッチャいい曲が入ってるんだよ。
それなのに日本ではこの映画は未公開だった。やっぱりダメなんだよ、日本はこういうのって。50それと有名なコレ…『踊る大紐育』。
原題は『On the Town』。
この映画ね~、あんまり好きじゃないんだよね。
まず、マドンナがあんまり可愛くない。
それと、最近ますます興味が失せた理由がある。
この映画はオリジナルのブロードウェイのプログラムから曲を大幅にカットしていることがわかったから。
そのひとつが「Ya Got Me」という曲。
もうあまりにもいい曲なのにナゼか映画ではカットされている。
どうしてコレに気が付いたのかというと、上で挙げたニューヨークのオムニバス盤にこの曲が入っていて、なんてステキな曲なんだろうと思って、ライナーを見ると『On the Town』の挿入歌になってる。
でも映画で「Ya Got Me」が出てくるシーンなんてどう考えても記憶にない。
人間がしつこい私はワザワザDVDを引っ張り出してみてチェックしてみた。
やっぱり入っていないんだよ。
マァいい。
コレは私の邪推にすぎないんだけど、「Van Halenの」って言った方が最早適切なのかも知れないけど、The Kinksの「You Really Got Me」のタイトルはこの「Ya Got Me」がヒントになっていると思う。
ナゼなら、ポール・マッカートニーなんかも絶対そうだと思うんだけど、口では「ロックンロール」と言っていながら、相当ティンパンアレイを研究していると感じるからだ。
時代が時代だし、「When I'm Sixty-Four」とか「Your Mother Should Know」とか、後年の「You Gave me the Answer」とか、ティンパンアレイの影響だと思うんだよね。
同じようにして、Ray Daviesもティンパンアレイに影響を受けていると思うワケ。
だって「Dedicated Follower of Fashion」とか「Sunny Afternoon」なんかモロにそんな感じがしない?
Rayは「Ya Got Me」を知っているハズだ。「Ya」を普通に「You」にして、「really」を加えて「You Really Got Me」にした…と思っておく。

60もっとも、向こうの人、つまり英語圏の人は世代を超えて誰もが歌える、我々が知らない国民的スタンダード曲をいくつも持ってるんだよね。
「Anything You can do I can do Better」とか「Let's Call the Whole Thing off」とか。
「Ya Got Me」もそんな1曲なんだと思う。
何よりスーパースターのレナード・バーンスタインの作品だしね。
ん?待てよ…。
バーンスタインのオペラに『Trouble in Tahitti』という作品がある。コレもジャズっぽくて実にカッコいい作品。
で、下はSailorというバンドの『Troble』という1975年のアルバム。
「ニッケルオデオン」という昔の自動演奏ピアノかなんかをフィーチュアした、やっぱり古式ゆかしい香りがするロックを演るバンドで、高校生の時に好きでよく聴いた。
このアルバムの中に「Touble in Hong Kong」という曲が入っているんだけど、コレ、もしかしてバーンスタインから来てるのかナァ。
考えすぎか?
演奏している音楽から察するに、この人たちもティンパンの音楽を研究していたのではないかと思って…。

9st コレも愛聴盤。
レニーは『Young People's Concert』というテレビ番組を通じて、アメリカでのクラシック音楽の普及に多大な貢献を果たした。
日本の『題名のない音楽会』なんてのはコレのパクリだよね。
レニーはこの番組にはかなりの力を注いで、台本を自分で書いて、すべて暗記して本番に臨んだという。
それと力を入れたのがジャズ。
このサッチモとのツーショットがカッコいい『Bernstein on Jazz』というアルバムは、レニーがナレーションとピアノでジャズの特徴や魅力を解説してくれる1枚。
かつては『What is Jazz』というアルバムだったのかな?
コレも面白い。
ジャズはアメリカの文化史における最大の発明と言われているけど、すでに19世紀の末期には世界に伝播していて、もはやアメリカ人だけのモノではなくなっていたのだそうだ。
ラヴェルの1927年の「ヴァイオリン・ソナタ」なんてモロにジャズだもんね。
バーンスタインもジャズの導入を盛んにやっていて、第3交響曲の『カディッシュ』の第2楽章なんかもモロにジャズだもんね。
ま、ウチのバーンスタインはこんなところかな…。
以上の第1部、知ったかぶりと、邪推と自慢でお送りしました。

70_2ココからが今日の第2部。
 
そのバーンスタインに関する講演会は『バーンスタインの/とアメリカ』と題された。
このプログラムには「の」になっているけど、本番は「の」と「と」が用いられた。
要するに「America for Bernstein」と「An Ameican, Bernstein」というイメージかな?

80会場は東京藝術大学の音楽校にある「奏楽堂」。
オリジナルの奏楽堂は、2、3日前に通りかかったところ改装が終わってまた一般公開が始まっていた。
最近は美術校の方も改装していい感じになった。

85こんな本知ってる?
藝大の生徒さんがどれだけブッ飛んでるかっていうことをツラツラと書いてあるんだけど、さして驚かないし、面白くもなかった。
こんな程度なら、もっとスゴい生活をしているミュージシャンが私の周りにいくらでもいるわ。

86コレが会場の奏楽堂。

90パイプオルガン、スゲエ~!
一度でいいからイジってみたい!

100残念なのはこのイス。
ナゼか背もたれのクッションが途中までしかなくて、やたらと座りにくい。
パイプオルガンをもう少し小さくして、その分この背もたれのクッションを伸ばしてもらいたかったナァ。
いや、ふんぞり返らないで、正しい姿勢で音楽を聴け!ということか?

110v上演中は撮影ができないので、記事が殺風景で申し訳ないのだが、講師は東京藝術大学音楽学部楽理科教授の福中冬子さんというお方。
この方がまた早口で、おっそろしくテキパキと講義を進めていく。
「アタシャ、勉強してますからね~!」とか「アタシャ、本読んでますからね~!」みたいなオーラが身体中から出まくっている。
いいな~、こういう人に音楽を教わりたいな~。
音楽に関する面白い話をイッパイご存知なハズだ。
ああ、今からでもいいからチャンと音楽の勉強をしたいナァ。Ff 講演は当然ウエストサイドにも触れたが、こんなことをおっしゃっていた。
元々はこの話は、イースト・マンハッタンのアイリッシュ系とユダヤ系の対立を描いた『イーストサイド物語』だった。
それがヘルズ・キッチンを舞台に移して、やはりアイリッシュとラテン系(プエルトリコ)の対立に話を引き直したとか…。
主な講義内容は、「Red scary」という言葉を使っていたが、いわゆる反体制主義のバーンスタインがレッド・パージに対してどういう活動をしたか…みたいな。
知らなかったんだけど、バーンスタインはアーロン・コープランドにとても可愛がられたんだってね。

Ac そこで教わったのが、コープランドの1943年の「リンカーンの肖像(Lincoln Portrait)」という曲。
コープランドは『ロデオ』はじめとして「アメリカ」を題材にしたクラシックの曲をたくさん作ったアメリカ自慢の作曲家で、この作品は曲の中にあの有名なリンカーンの「ゲティスバーグの演説」が盛り込まれている。
あの「人民の、人民による、人民のための」のヤツね。
もちろん、生のリンカーンの音声など残っているワケがないので、ナレーターが解説を交えて代読する。
そういえば、アメリカの中間選挙、少しだけアメリカを見直しちゃった。
やっぱり日本人が思っている民主主義というか、政治の在り方というか…ゼンゼン違うと思った。
もうひとつ脱線ついでに…。
数か月前、オーストラリアの友人が2人のお嬢ちゃんを連れて日本に遊びに来てくれたのね。
車の中でお父さんとチョット政治がらみの話になって、最近の日本の政治や税金の在り方などについて話すと、後の席から11歳になる下のお嬢ちゃんが「そうなの~。ダメなのよ~。オーストラリアも一緒よ~。シゲ、どこの国もみんな同じなの。オーストラリアの政治家も全くダメ!」なんて言ったのにはビックリ。
そんなことを言う小学生が日本にいるだろうか?
 
さて、話を戻して…。
この「リンカーンの肖像」、雄々しくてなかなかにカッコいい曲だ。
でも待てよ…どこかに似たようなコンセプトの作品がロックにあったな…と思い出したのが、1968年のVanilla Fudgeのセカンド・アルバム『The Beat Goes On』。
「期待して聴いてガックシ!」のトップクラスに入るような作品だったけど、ネタもパクリだったのね?
Bgo
ちなみにこのコープランドの「リンカーンの肖像」を1953年のアイゼンハワーの大統領就任式で演奏する予定だったが、政治的な理由で取りやめになった…のかな?
イヤ、こういう話を聞くと、外国では音楽に政治とモノスゴク深い関わりを持たせているということを思い知るワケ。
ショスタコーヴィチやストラヴィンスキー等、数え切れないぐらいの天才音楽家たちが第二次世界大戦中にアメリカに亡命したことからもそうしたことが窺える。
「音楽に力がある」ということが言えるのは外国だけの話。
日本はゼンゼン違う。
「本当に力のある音楽」なんてありゃしない。
幼稚な歌詞からせいぜい「元気」だか「勇気」だかをもらうぐらいのものだ。
でもね、コレは「作り手」だけの問題ではなくて、「聴き手」の方の問題でもあるんですよ。
リスナーがもっと勉強しなければ音楽に力をつけることなんて絶対できやしない。最近それをすごく感じている。
 
 話は飛んで、ニューヨーク。
下は有名なアッパー・ウエストのコロンバス・アベニュー沿いにあるリンカーン・センター。
メトロポリタン歌劇場、エイブリー・フィッシャー・ホール(今は名前が変わっちゃった)、アリス・タリー・ホール、裏にはジュリアード音楽院…アメリカ人のアカデミック度合いを高めようと建造した一大文化エリアね。

120私も1995年に行った時にウィントン・マルサリスとキャスリーン・バトルのダブル・ヘッドライナーのショウをエイブリー・フィッシャー・ホールに観に行った…ことも以前に書いた。
下はその時のリーフレット。
『Jazz at Lincoln Center』とかいって、チョット前まで、すなわち1940年代にはEXILEやAKBのようなアイドル・ミュージックに過ぎなかったジャズが、現在ではアメリカが誇る崇高な古典芸術のひとつになっちゃってる。
そもそもあんなに黒人をイジめていたクセに。
で、実際にこのアメリカの芸術的文化の象徴であるリンカーン・センターでも黒人に対して強力なイジメが昔あったそうだ。

130リンカーン・センターの起工式では高らかにコープランドの「Fanfare for the Common Man」が演奏された。
コレ、我々はELPから入るのが普通なもんで、「庶民のファンファーレ」と呼んでいるけど、クラシックの方では「市民のためのファンファーレ」というようだ。
で、その時に指揮をしたのが人気絶頂のバーンスタイン。
ところが…講義では実際にその動画見せてくれたのだが…レニーの態度が実に投げやりなのだ。
敬愛するコープランド先生の作品なのに!
挨拶も同様…『Young People's Concert』では台本を暗記までしていたのに、この時は原稿を棒読み。
いかにもヤル気なしの「やっつけ仕事」。
な~んでか?
この時、レニーは怒っていたのである。

140…というのは、今のリンカーン・センターのある場所は、かつては「サン・ホアン・ヒル」という黒人のスラム街だった。
その居住者を強引に立ち退かせて多くの人を大変困らせたというんだね。
反体制主義者のレニーはコレに対して怒ったワケ。
それならそんな仕事を引き受けなきゃいいと思うけど、裏の事情が色々あったんでしょうな。
 
このスラムの住人のひとりに何とセロニアス・モンクがいたそうだ。
モンクはココで生まれ育った。
下の写真、写真の右の方をタテに走っているのがコロンバス・アヴェニュー。
写真の真ん中の上から右下に走っているのがブロードウェイ。
その交差する地点に立っているのがエイブリー・フィッシャー・ホール。
コロンバス・アヴェニューを挟んだ向かい辺りに、晩年レス・ポールが毎週月曜日の出演していたジャズ・クラブ「イリジウム」がある。
私はココでレス・ポールを観た。

150ココで大脱線。
レニーと全く関係ない…イヤ、ジャズを自分のクラシック作品に積極的に取り込んだバーンスタインなので関係は大いにある。
こちらとしては、今コレを読んでくれている人がMarshall Blogの読者が多い、つまりロック・ファンが多いということを想定して展開するセロニアス・モンクのディスク・ガイド。
自分勝手でゴメンね。Shige Blogだからいいでしょ?
だってモンク大好きなんだもん!
 
まずはジャズの入門書に必ず出てくる『Brilliant Corners』。
コレと並んで必ず出てくるのがソロ・ピアノ・アルバムの『Thelonious Himself』。
ダメよ、ダメダメ、『Himself』は!
入門者に『Himself』なんて薦めて聴いてもらってもスッカスカで飽きるにキマってる。
その点、このアルバムにはタイトル曲や「Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are」や「Pannonica」や「Bemsha Swing」等の代表曲が入っていて楽しい。
ジャズを聴き始めの頃に聴いてもわからないと思うけど、とにかく「なんじゃコリャ?」と感じたらそれでOK。
ピアノ・ソロも含めて「なんじゃ、コリャ?」を味わえればそれでいいのだ。

160cd次…まずジャケットがいいでしょう?
イタリアの画家、ジョルジョ・デ・キリコ。
モンクの音楽にはキリコの絵が非常によく似合う。
この『Misterioso』はニューヨークの有名なライブハウス「Five Spot」でレコーディングされたライブ・アルバムで、小さな巨人、ジョニー・グリフィンのテナー・サックスを楽しむ盤。
「Nutty」や「Let's Cool One」といったモンクの名曲に乗って縦横無尽に吹きまくるサックスは愉快痛快。
スカっとすること間違いなし!
モンクもそれが気持ちよかったのか、グリフィンのソロでは何回か伴奏をストップさせてピックアップ・ソロにしちゃう。
それに反応したグリフィンが更に吹きまくるという素晴らしいパフォーマンス。
コレ、実物を見たらスゴかっただろうな~。

170cdモンクの「名画ジャケット」と来れば、後はコレ。
ジョルジュ・ルオー。
デューク・エリントン作品集なんだけど、どうもイマイチ私にはピンと来なくて滅多に聴かない。

180cdモンクで一番カッコいいジャケットはコレじゃん?
『Underground』。
まるでボブ・ディランとザ・バンドの『The Basement Tapes』だよね。
コレは第二次世界大戦の時のフランスのレジスタンスのアジトの様子なんだって。
「Green Chimneys」とか「Ugly Beauty」といったモンクの2軍の代表曲が収録されている。
セロニアス・モンクは音色も含めて、そのキテレツなピアノ・プレイがユニークそのもので、それだけでも十分スゴイが、ナント言っても偉大なのは作曲家としての業績だ。
だって、オリジナル曲のほとんどがスタンダード曲になっているんだからスゴイことこの上ない。
こんなミュージシャンって、他にビートルズしか思い当たらない。

190cd最近スキで今頃よく聴いているのはコレ。
モンクにはチャーリー・ラウズというお抱えのテナー奏者がいたが、モンクの曲は上のグリフィンのようによりバリバリ吹くサックスのスタイルが似合うと思う。
だからコルトレーンはバッチリだ。
コルトレーンとの共演盤は他にも自分がソロのサイズを間違えて「コルトレーン、コルトレーン!」と助け船を求める有名な「Well, You Needn't」が収録されている『Monk's Music』や後年発表されたFive Spotでの音の悪いライブ盤もあるが、ワンホーンで遠慮なく吹きまくるコレが好き。
ただね、「Nutty」のテーマの吹き方が気に喰わないんだよね~。

200cdまだまだいいアルバムがあるけどキリがないので最後に1枚だけ。
今度は反対に人様がモンクの作品を取り上げているアルバムから。
「モンク作品集」なんてのは掃いて捨てるほどあって、ウチにも腐るほどあるけど、コレが一番好き。
ニューヨークで2度ほど目の前で観たというひいき目もあるが、アルトのスティーヴ・スレイグルの作品。
ギターのデイヴ・ストライカーが好きなの。
あんまりうまくなくて「コレぐらいなら自分でもできそう」とついつい惹き込まれてしまう。
もちろんできませんよ。

Ssm あ~、今日はすっかりヘンテコリンな記事になっちゃったな。
話を元に戻さなきゃ。
 
アッという間に講演会は終わっちゃって、休憩をはさんで演奏会に移る。
楽団員が出て来てまずはチューニング。
ボワ~っていうヤツ。
いいね~、この雰囲気。あの最初に音を出すオーボエがタマらん。
そして指揮者が登場してコンサート・マスターと握手。
指揮は山下一史。
オケは東京藝大シンフォニーオーケストラ、要するに学生さん。

7go 曲はまずミュージカル『Candide』から「序曲」。
このメロディ、何度聴いても素晴らしい。
なんでこういう人の心をゆさぶるメロディってのが存在するかね。
ただただ感動してしまう。ホント好き、この曲。
かつては同様の感動をロックから受けたが、今はその昔の感動に対する懐かさだけになってしまった。当然現在の巷間のロックからはナニをどうやっても昔味わった感動と同様のモノを抱くことはできない。
歳を取って感性が鈍くなったせいもあるが、コレだけ色んな音楽を長年聴いているとチョットやそっとじゃ感動できなくなっちゃってるのよ~。
『Candide』からは「Glitter and be Gay(邦題:美しく着飾って)」も演奏された。
もうコレは一聴してモーツアルトのパロディということが私でもわかる。
でもとても魅力的な曲。
そして、歌い手さんが西口彰子という藝大声楽科のOGの方。
声楽科って一番入るのがムズカシイんでしょ?
そして、コレはハズせない「ウエストサイド物語」から上でも触れた「Symphonic Dances」を演奏して終わり。

コレで2,000円。
あ~、面白かった。
とてもいい一日でした。
ヘンテコリンな記事でゴメンナサイ。

220

2013年7月23日 (火)

NAMM2013にて~その2

2013年2月2日 初出 

旅の楽しみのひとつは現地のおいしいものを食すことですわネェ。ってんで、Marshall USAのライアンに連れられてみんなでメキシコ料理へ…。結構メキシコ料理好きなのです!楽しみ!

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ビーフ・ファヒータ…ようするに牛の鉄板焼きですな、これは。熱いうちは大変においしいものでござるが、ウッカリ話に夢中になんて、ちょっと冷めてしまうと、肉が車のタイヤみたいに硬くなってしまうんね~。もちろん車のタイヤをかじったことはないけどサ。

しかも、この鉄板に思いっきり触っちゃってヤケドしちまった!ヒリヒリとイテーのなんのって!

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これは付け合せ。メキシコ料理といえば豆と米だもんね。この豆はどーもなー。味がどうのではなくて食感(texture)が合わんのですよ。これにトルティーヤが何枚かつく。で、バラバラに食べるなり、好きなものを巻いて食べるなりhelp youselfという仕組み。

このグァカモリがすごくおいしかった。私普段はグァカモリはおろか、アヴォカドなんて食べないんだけど、ここのはすごくおいしかった~。

テーブルには各種の辛味ソースが置いてあって、その中にオレガノのビンが混ざっていた。これは普通は置いてないらしく、ライアンによればこの店は変わっているそう。

あんまり安くなかったナァ。なんか今回アメリカの物価がひどく高いようなイメージがあったな~。

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さて、NAMM会場で会った人、見かけた人…。

ロブ・マルセロ。FUJIGENさんのブースでバッタリ!ロブはある日本人ギタリストを通じて知り合った。フランクフルトなんかでかを合わせているうちに近しくなった。

彼はFUJIGENさんからシグネチャー・モデルをリリースしている。手にしている赤いギターがそれだ。

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さすがにミーハーになるですよ。何のブースが黒山の人だかりになっていた。中に誰がいるのかは見えないのだが、何かモノスゴイものがそこに潜んでいるようなすさまじいオーラを感じたというのは大げさか…。でもすごいオーラ。
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ああ、昔のあこがれの人。あんまり有名になっちゃったので追っかけなくなってしまったが…。かつてのマーブロで長文を書いたこともあったっけ。でも、考えてみると演奏しているところを一回も見たことないんだよね~。このまま一生見ないで「夢の人」のままにしておく。
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ディーン・ブラウン。あ、あの、決してファンではございませんが、出てくるちょっと前にもジャズ・ギタリストの関雅樹とこの人の話しをしていたものだからつい…。わかんないんだよね~、ディーン・ブラウン。
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おわり

(敬称略 2013年1月 ロサンゼルス、アナハイムにて撮影)

NAMM2013にて

2012年1月26日 初出

マーブロでは「滅多に有名人や有名人といっしょの写真を撮ったりしない」なんていっているが、知り合いは別。

クリス・デュアルテとバッタリ!彼はなんで私がここにいるのかちょっと不思議がっていた。「マーシャルののスタッフだから」と名刺を渡すとビックリ。言ったハズなんだけどな~。いつもの調子でブルースを弾き倒していた。

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「シゲさ~ん」と私を見つけるなりハグハグしてくれたウリ。ウリとは約2年ぶりかな?ちょっと前におなじみのスティーヴ・ドーソンの住むサウス・シールズで演奏したウリ。その話をしたら、「夜、スティーヴと食事をしてシゲの話しをしていたんだよ!」なんて言ってくれた光栄です。今年は東京で会えるかも?でも残念ながらもうマーシャルじゃないの…。だからシゲ・ブログに登場してもらいました。

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マーシャルのブースのとなりで弾き語るレジのそっくりさん。声がクリソツ!この日、本物もコンサートを開催していたが、こちらもなかなか!ヒット曲のオンパレードで、エルトン・ファンの私はしばし聴き入ってしまった。この人は知り合いではありません。

ちなみに私が一番好きなエルトン・ジョンの曲は「Skyline Pegeon」です。
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ダグ・アルドリッチにも会った。彼はどこかのブースのサイン会の真っただ中だった。

ものすごく長い行列ができていたが、私を見つけるなりダグが「来い来い」と手招きをする。サイン会を中断するとみんなの迷惑になるし、何しろそのサイン会をやっている会社の人が「テメェ、サイン会の邪魔すんじゃねぇよ」的なスゴイ形相になっていたので、「いいよ、いいよ」断った。ところが、ダグは「来い、来い」ととうとうサインペンを手から離してしまった。こりゃかえってマズイと思い、急いでかけよってハグハグ。もちろん、その会社の人はコワイ顔をしてこっちを見てる。

ああ、日本人って奥ゆかしいナァ~。

2013年6月19日 (水)

TAIKO GATHERING vol.2 <前編>

2012年8月16日初出

和太鼓の、そしてGOCOOの魅力を伝えるイベント『TAIKO GATHERING』。 全員参加型、全方位外交型のこの楽しいイベント、 前回は4月に開催され大好評を博した。そして、今日はその第2弾のレポートだ。

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まずは前回同様、ここ東京キネマ倶楽部で開催されている和太鼓ワークショップの発表会でスタート。
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今回もワークショップでで習得したワザを思う存分に披露した。みんな猛烈に楽しそう!短期間のコースながらこれほど複雑なパフォーマンスをバッチリと身体にスリ込んでいるのはアッパレとしかいいようがない。指導者と参加者の情熱、そしてなによりもタイコをプレイする楽しさがそうさせるのであろう。

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GOCOOがプロデュースする和太鼓グループ、TAWOO(タヲ)の演奏。

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あやの。
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Chihiro。

はじけるようにハツラツとしたパフォーマンスがTAWOOの大きな魅力のひとつだ。

TAWOOには<後編>でもう一度登場してもらう。
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ワークショップでも大活躍したNORI☆のステージ。NORI☆はOCTO.というユニットで歌手として活動している。
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今回前半で大いに盛り上がったのがコレ。サルサダンスのワークショップだ!
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パフォーマンスとインストラクションにMacomo y sus divas from Team LA BOMBA dance companyを迎えて、サルサ×GOCOOのコラボを初体験!
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これがねー、お客さんが恥ずかしがるかと思ってたらトンデモない!みんなもう大喜びで踊ってた!なにしろ先生のmacomoさんの指導がヤケクソに愉快で、自然に身体が動いてしまう。メッチャおもしろい!あ、アタシは『驚愕のアイリッシュ・ダンス!』で書いた通りでございやして踊りは全然ダメね。

でも、これだけたくさんの人がニコニコ楽しそうにしているのを見るとちょっとはやってみたくなる…というかただ突っ立っているのが恥ずかしくなってくるね。シャッターを切ってごまかしちゃった!だって、自分が踊っているところなんて想像しただけで真っ赤になっちゃうもん!
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2階席も大盛り上がり!
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リズムを刻みつづけるGOCOOの面々。こちらも楽しそう!

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基礎的なステップをマスターして、はいクルクル回る!人のを見てると簡単そうに見えるけど、これがナカナカ…。

みなさんなかなかの腕前(足前?)で素敵な時間をすごしたのでありました!
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そして、イベントも後半に突入。

GOCOOのライブだ!
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先程のサルサ・ダンスの雰囲気から一転…暗転からスポットを浴びて浮かび上がったKaolyに観客のすべての視線が集まる。緊張…。
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一時の静寂を切り裂くGOCOOフロント陣の怒号!
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そして、いよいよウネリ狂う「和音」のグルーヴ!
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GOCOOリーダーのKaoly。
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GOCOOの核、Taro。

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GOCOOの角、Nori。
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GOCOOの飛車、Kanae。

あ、「角」だの「飛車」だのってのはアタシが勝手に言っているだけのことですからあしからず。でもこの2人は間違いなくGOCOOの攻め駒だ!飛び道具ってのかな?
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ディジュリドゥとの競演。圧倒的な演奏がGOCOOにからみつく!世界で活躍するゲストの「ウィダー」こと鈴木晃一郎!ワウを踏みながら多彩な音色をクリエイトする。

やはりこうしたプリミティブな楽器同士は相性がとてもいい。ビリンバウなんかもすごくGOCOOサウンドにマッチするんじゃないかな?
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いつもながらの入魂のパフォーマンス!ところで、Kaolyさん、はじめの方からズッ~と叩きっぱなし!このスタミナにも恐れ入る!
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Takema
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Yuko
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Nogzo。3人はサルサのコーナーでも大活躍。

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おなじみのメンバーたちの激演・熱演はいつも通りだ!

Yoccy
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Alei
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Jera
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Yumi
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Haruna
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GOCOOの詳しい情報はコチラ⇒GOCOO公式ウェブサイト

<後編>につづく

(一部継承略 2012年6月29日 東京キネマ倶楽部にて撮影)