イギリス紀行2012 秋の陣 その5~Swamped with Chicken!!
2012年10月19日 初出
今日は今回のお宿の話しを…。
これだけ何度もロンドンを訪れているが、定宿というものがない。できれば、宿のスタッフと顔見知りになって「やあ、シゲ、また来たのかい?今度は長くいられるんだろ?好物のジェリード・イールを買ってきてやろうな!」…なんて関係になってみたいものだが、どう考えてもそんなことにならないのもわかってる。だから、安いところを探しては西に東に選択の幅を広げている。(ジェリード・イールが好物というのはウソです。食べたことないけど、絶対食べられないと思う)
それでも以前はヒースロー空港への便がよいハマースミス等、西方面に泊まることが多く、何回か泊まったチェーン店のホテルのレストランのインド人とは顔見知りになって彼の方から「サー、サー」と気軽に話かけてくるようになった。
そのインド人の若者、眉毛が眉間で左右ガッチリとつながっており、眉毛が元来一本でできているのが当然のようなつながりっぷりだった。いつか「それ真ん中、ワザとつなげてんの?」と訊いてみようかと思っていたが、宿泊料金がさほど安くなくて(ロンドンにあっては大したことないのだが…)、そのホテルから遠ざかってしまい訊かずじまいだった。ま、あの時そんなことを訊こうもんなら、「じゃ、あなたはワザと耳の毛を伸ばしているのか?」と訊かれていたかもしれない。そう、私は耳毛を伸ばしているのである。なぜなら、耳毛は幸運を呼ぶとされているからなのだ。
毛の話はやめよう。
今回はロンドンの東、フィンズベリー・パークの安宿に寝泊まりすることにした。フィンズベリー・パークについては過去何回か訪れていてブログでも取り上げている。
話題のひとつはレインボー・シアター。写真は駅から見たレインボー・シアター。駅からこんなに近い。70年代、ロックの一番よかった時代を代表するありとあらゆるバンドがここに出演したのである。今、たまたまジェネシスのボックスセットのレインボーシアターの未発表音源を聴いていたのだが、「Supper's Ready」とかシッカリ演っちゃって…いい時代だったよな~。ここで演奏してるんだもんな~。
もうひとつの話題は、グラハム・ボンドがこの駅で飛び込み自殺をしたということ。電車に飛び込む直前に不思議なことがあったことも記した。
Finsbury Park駅。地下鉄ピカデリー線とヴィクトリア線、それに国鉄が通っている。これは伊藤広規さんのパートナーのくり子さんに言われて気が付いたんだけど、ここの駅は珍しくひとつのホームに異なる地下鉄の路線が入っている。普通、ロンドンの地下鉄は路線が違うと間違いなく階段やコンコースを通って別のホームに移動しなければならないが、ここはピカデリー線とビクトリア線が並行して入線してくる。赤坂見附駅の銀座線と丸の内線と同じ。東京ではこういう駅がたくさんあるが(中野駅とかね)、ロンドンではまずない。
ホームにつづくコンコース。この駅には改札がない。このトンネルのようなコンコース、面白いよね。アーセナル駅のコンコースなんかこれが延々と続いていてちょっとしたアトラクション気分なんだぜ。
となりの駅がアーセナル。Emirateサッカー場も近い。お、この通り、ロリンズが見たらよろこぶゾ!
という関係で、駅舎にアーセナルのオフィシャルショップが入っている。
国鉄の線路を挟んでレインボー・シアターの反対側のようす。ガラ悪いのなんのって!だいぶ前に初めてフィンズベリー・パークに来た時も一瞬にしてガラの悪さを感じたが、数日過ごしてみるとなるほど思った通り。ホームレスはゴロゴロしてるわ、タバコの吸い殻集めて分解して巻直してるヤツはいるは、お世辞にもお上品な街とは言えません。
でも、このフィンズベリー・パークは美しい。
ホテルの前から駅方面を望む。徒歩2分とウェブサイトに書いてあったがウソ。3分はかかる。ニコ・マコブレインの家はこれのずっと後方の隣町らしい。
ホテルはフィンズベリー・パークに面しているのだが、私の部屋はもっとも安いグレードなので裏側の半地下。それでもフルイングリッシュ・ブレックファストがついて一泊6,000円だから全然マシな方ではなかろうか?ホテルのスタッフもすごく感じヨカッタし。安いチェーンのホテルでもロンドンでは10,000円を下ることはないからね。
このホテルでさ、着いた早々火災報知器鳴らしちまったのよ。イギリス人はお茶を飲む習慣があるからどんなホテルでも電気の湯沸かしポットが備え付けてある。でもチンや冷蔵庫は絶対ない(当たり前ね)。で、今回、日本からレトルト食品を持って行ったんです。そう!このポットのような湯沸かしポットでレトルトのお粥を温めようとしたのです。
イギリスは電圧が日本の倍以上もあるので、電気の湯沸かしポットで湯をわかすとものの見事にすぐ沸騰してくれる。沸騰すればサーモスタットが働いてポットのスイッチが切れて当然電源が落ちる。これではレトルト食品を温めることなんて到底ムリ。そこで、サーモスタットが働いでもスイッチが動かないように箸かなんかで固定して煮込んでたんですよ。そしたら、窓を閉め切っていたもんで、部屋に湯気が充満して突然「ギュイーン、ギュイーン」とサイレンが鳴りだした!ビビったね。
するとさっきチェックインの手続きをすいてくれたちょっとキャメロン・ディアスに似たお姉さんが合いカギをもってスっ飛んできた。すぐにドアを開けるとそこに立っていたお姉さんの顔はかなりマジ…。
「ちょっと、一体どうしたんですか?!」
「イヤ、ちょっとお湯を沸かしすぎちゃって…」
「お湯が沸けば湯沸かしポットのスイッチが切れるハズですよ!」
「イヤ、レトルト・フーズがその、あの…」
「レトルト?何ですかそれは?」
「イヤ、温めて食べるフードでございまして…その」
「ちょっと、ポットに食べ物を入れちゃったの?ダメよ!食べ物はダメ!入れちゃダメ!水以外は絶対ダメなの!」
「イヤ、そんなことわかってて、その、あの、エイゴワカリマセン~」
てな具合。最後の「英語わかりません」ウソです。ちゃんと説明したけど、ビックリしましたよ。追い出されるかと思った。
出かけるときにそのお姉さんがまだフロントにいたので、もう一度詫びを入れると「いいのよ、いいのよ。大丈夫よ!でも、夜中はやめてね!」なんてウインクしながら言ってくれるた。素敵な女性だったな。
ここで学んだこと…レトルト食品は英語で「レトルト」とは呼ばない。Puch-packed foodとかPrepared foodいうらしい。もう少し調べてみるとRetort-packed foodともいうみたいだな。全然通じなかったゾ!
それとポットでレトルト食品を煮込む際には必ず窓を開けよう!
さて、今回の本題でござる。ここさっきも書いた通りかなり低所得者が多いエリアなのだろう。そういうところにかならずあるのがフライドチキン屋さんなのよ。サウス・ケンジントンやスイス・コテージのような高級住宅街でフライドチキン屋を見かけることはおそらくない。
で、ここの駅周辺を歩いていてフト気が付いた。オイオイ、ここフライドチキン屋だらけじゃん!
ここも。PFCだって。キャッチコピーは違うけど、鶏のデザインが同じだから上の店と同じなんでしょうな。
またPFC…。マークのデザインがチト上の2店とは違う。
ここも。みんなオリジナルっていってら!
当然コレも。やっぱりこれが一番おいしい。
で、これらの店がてんでバラバラにあるわけではない。「シゲさん、またまた~、オーバーなんだから~」とおっしゃるかもしれないが、これらの店は駅から50mの範囲に集中しているのである。こんな狭いところに6軒ものフライドチキン屋がある街が東京にあるだろうか?イヤあるワケない!あんたらどれだけチキン食べるのよ~!(全店シャッターが閉まっているのは早朝の撮影だからです。昼から夜まで全店ギンギンに営業しとります)まだこのほかにフィッシュ&チップス屋があるからね。揚げ物パラダイスだよ~。
そういえばこのケンタッキーでのこと。案外客の出入りが激しくて、店員が2人しかいなかった。レジとキッチンで鶏を揚げてる人だけ。そこへ黒人のイキのいい姉ちゃんが入ってきた。「3分かかりますけどいいですか?」と店員にいわれてお姉ちゃんはそれをOKする。ところが作る方の手が足りないらしく、3分経っても、5分経っても出来上がらない。すると、そのお姉ちゃんは猛烈な勢いで怒鳴りだした。いつの間にか後から入ってきた黒人のアンちゃんと徒党を組んで「遅い遅い!」と店員を揺さぶりにかかったのだ。
その店員が彼女らのあまりの剣幕に抗しきれず、ドリンクを無料で提供することになってしまった。「それじゃ無料でコーラ出しますから…サイズは?」なんて訊くと、彼女は「Lに決まってんじゃん!L!」なんてありがとうの一言もいわない。
マクドナルドやケンタッキーの常套句、「1分少々お待ちください」がたとえ5分になっても10分になっても無料ドリンクをむしり取るようなことは我々日本人は決してしないだろう。本当に日本人って上品で素敵な国民だと思う。海外に来ると痛感します。だからもっと若者には藤原正彦先生の本を読んでもらいたい。自分も含めて年寄も同じだ。最近の日本人は年寄の素行もほめられたものではない。もっと我々は日本人らしく振舞うべきだ。
東京もこんな風だったらどんなに素敵だろう?
つづく