イギリス紀行2015 その15~ミルトン・キーンズに来た!
前の日の晩、8時過ぎに住み慣れた(ウソこけ!)ロンドンを離れ、ミルトン・キーンズの「Double Tree」というホテルに到着したのは10時チョット前ぐらい。
お腹も空いたので少し何かを食べてから寝ようということになって外へ繰り出した。
以前に何回も行ったブレッチリーのパブにでも行こうとも考えたが、歩けば30分ぐらいかかるし、タクシーを呼ぶのも面倒だ。
同じタクシーを使うならミルトン・キーンズの中心に行ってもよいのだが、高いばかりでロクな店しかないことも知っていたので、ホテルの近くで済ませることにした。
以前はホテルの周辺は全くといっていいほど何もなかったのだが、サッカーのフランチャイズ・チーム、MK DONSのグランドができ、このホテルが完成したりしているうちに、チョットしたレストラン街みたいなものができたことを聞いていたのだ。
ところが、全部チェーン店の高くてつまらん店ばかり。
マクドナルドとケンタッキーもあるにはあるが、最近は食べないようにしているので、結局となりの24時間オープンしているスーパーマーケットで惣菜とビールを買って、それで済ませた。ナンダカンダ言ってコレが一番安全で安くてうまい。
イヤ、サンドイッチなんか氷のように冷たくて、いつも言っている通りおいしいことなんかひとつもないんだけど、ビールがおいしいんですよ。
ガーっと流し込んじゃう。
そして、翌朝。
ココはちゃんとしているホテルゆえ、朝食もちゃんとしている…と言っても普通のバイキングだけどね。
あ、向こうでは「バイキング」は通じませんからね。「ビュッフェ」っていうヤツ。発音は「バフェ」っぽいかな?
一見おいしそうだし、実際おいしいんだけど、おっそろしく飽きちゃうんだよね。
ひとつひとつアイテムをチェックする家内。
考えてみるとコレが彼女にとって初めてのイギリスのホテルの朝食なの。
昨日まで自炊だったから!
家内のチョイス。
ま、典型的なイングリッシュ・ブレックファスト。
ブラック・プディングはパス。
ココのキノコはマッシュルームだ。ガッツリとした椎茸のところもある。私、椎茸が大の苦手なのよ。
私はコレ。
コレをすべてトーストに挟んで食べちゃう。カスタム・ホット・サンド。
はい、お行儀悪いですね。
どんなことがあってもマーマイトなどは口にしません。
ちなみにパンはトースター2回通し。
パンを乗せた網状のコンベアがヒーターのトンネルをユックリくぐって焼くヤツね。一回通しただけだと焼きが甘いのでいつも2周させてる。
アレ、「クロワッサンは入れないでください」ってところが多いんだよね。
で、別のホテルで早速やってみた。
驚いたよ!炎を上げて盛大に燃えやがんの!
「マーマイト」は皆さんもうご存知ですよね。
オーストラリアでは「ベジマイト」って呼ばれているヤツ。
まぁ、コレはとにもかくにもマズイよね~。
何でマズイかというと、マズイからなんだけど、思うに我々の知らない味、すなわち日本にない味だからなんじゃないかしら?
だから憲法を改正して「日本国民は毎朝マーマイトを食べること」と制定すれば、しばらくすると味やニオイに慣れて「ウマい!」というヤツが出て来るよ。日本で言うと納豆みたいなものだ。
同じ改憲なら「戦争」より「マーマイト」の方がゼンゼンマシだ。納豆の方がうれしいけどね。
で、コレの正体は何かというと、イースト菌なんだって。
何せクサイのよ。
激クサ勝負でいけば、クサヤの方がケタ違いに強烈なんだけど、とにかく我々が日本の日常生活で嗅いだことのないニオイだからすごくイヤ~な感じがするワケ。
友人のコックの経験者はマーマイトの存在を知らなかったが、さすがプロ、クンクンとニオイを嗅いで、「クサッ!」のひと言も口にせず「あ、これイーストのニオイだ」と一発で言い当てた。
下の写真のようにパンに塗って食べるのが普通。
Marshallの友人のマークは鼻歌を歌いながらマーマイトをこうやってトーストに塗って、おいしそうに食べていた。
「ウマいのか?」と訊くと「コレがなければ一日は始まらないよ!」ぐらいのことを言っていた。
さて、朝ご飯を食べたことだし、Marshallの工場へイザ出発!
コレがホテルの遠景。
建物の向こう側がサッカー・グラウンドになっている。
昨晩食べ物を買ったスーパーがこの「ASDA」。
看板にあるようにアメリカの「Wal Mart」の資本が入っているそう。
メッチャでかい!
スーパーのランキングではTESCOに次いでASDAは2位と言われていたが、イギリスのこういう世界は海外資本もジャンジャンなだれ込んできていて、デッドヒートが激しい。
行くたびにいつも順位が入れ替わっている感じ。
ASDAは食品だが、最近では「LIDL」とかいうドイツのディスカウント・ストアがイギリスに進出して既存のお店はハラホロヒレハレになっているらしい。こないだジョンから聴いた。
で、ASDAでもTESCOでもSainsbury'sでも似たような三角のサンドイッチを売っていて、コレがまた消費者の好みの分かれるところで、見ていておもしろい。
「オレは絶対にTESCOのサンドイッチは食べないんだ」みたいな。
日本で言えばコンビニの「おにぎり戦争」みたいなもんかね。
あ、私はコンビニのおにぎりは絶対に食べないようにしている。「アレは米ではない」とか言う話を聞いて怖くなったからだ。おにぎりだけではなく、弁当からおでんから揚げ物から、コンビニのオリジナル食品には何があっても手を出さないしている。結構不便なんだけどね。
ちなみに私はTESCOのサンドイッチの「Classic Ham & Mustard」ナントカっていうのが好きだったんだけど、なくなっちゃったようだ。
興味のある方はコチラをご覧あれ。
ま、コンビニおにぎりに手を出さないで、TESCOのサンドイッチ喰ってりゃ世話ないんだけどね。
だってイギリス行くとコレしかないんだもん!安くてマァ食べられるヤツは…。
ホテルからMarshallの工場までは歩いて10分チョットぐらいか?
右下に「Furzton」ってあるでしょ。ここにあるホテルのレストランのローストチキンがすごく美味しかったんだけど、一回しか泊まるチャンスがなかったナァ。
まずは記念撮影するよね~。
コレ、ゲイリーが撮ってくれたのか…。
もはや見慣れた光景だけど、みんなに会えるかと思うとワクワクするね。
でもね、もうずいぶん人が入れ替わっちゃってね。
私はもう完全に古株の部類なんよ。
もちろん家内は初めてなので大興奮&大緊張!
まずは社長に挨拶をしてすぐに工場見学。
行った日は金曜日。午後は工場が止まってしまうので、早いところ見て回ろうという算段。
ガイドは私。
工場の職人さんは古い人も多く、私の顔を見ると声をかけてくれる人も少なくない。
その都度家内を紹介するので彼女も相当気疲れしたことと思う。
でも、Marshallの工場を見学した日本のオバさんはかなり少ないでしょう。数えれば片手で済むかも知れない。Marshall史に名前が残ったかも?何せ年間150回もライブハウスに顔を出すロック・オバちゃんだからして。
工場見学の様子はMarshall Blogに掲載してあるので興味のある方は是非ご覧あれ!
Marshallのコントロール・パネルとコーナー・ガードを除くほとんどすべての外装パーツをひとつにしたサンプル・スタック。
こういうものが売られているワケではない。
工場へ来た大きな目的のひとつは新商品ASTORIAを試すことだった。
そのASTORIAもいよいよ来月に日本で発売となる!
工場見学の後は、夕方まで予定がないので周辺を散策。
まずは行ってみたかったブレッチリー・パークへ。
友人のゲイリーが車で送ってくれた。
このあたりのこともすでにMarshall Blogに出ているので下の記事をご覧頂きたい。
長いけどお気に入りの記事だ。
ブレッチリー・パークからブレッチリーの駅へ出て家内に町を見せてあげることにした。
ブレッチリーはミルトン・キーンズの一部に属している。
「マーシャルってイギリスのどこにあるんですか?」と訊かれると昔は「ミルトン・キーンズ」と答えていたが、最近は「ブレッチリー」と一旦答えておいて「ミルトン・キーンズのとなり」と付け足すようにしている。
さした理由はまったくないのだが、何度も行っているうちに「ブレッチリー」に愛着が湧いたということになるかな?
ミルトン・キーンズは「ロンドンに対抗し得る都市を郊外に建造しよう」というロンドンの一極集中化を緩和するひとつの方策として導入された「カウンターマグネット論」によって出現した人工の街だ。
1967年にオープンした、歴史の古いイギリスの都市あるいは街の数々にあっては、まだ生まれたての赤ちゃんのような街なのね。
元々4万人が住んでいた地域だったが、現在は20万人ほどの人口になっている。
徹底した都市計画のノウハウに基づいて作られているため、中心部は碁盤の目のように道路が走り、巨大なショッピングセンターがあって、そこには人口スキー場を擁し…要するに面白くもなんともない街だ。
マーシャルの工場からは車がないと行かれない距離なのに対し、ブレッチリーの町までは歩いて15分。
こんなこともブレッチリーを身近に感じさせているのかもしれない。
こうした小さな町も興味を持って見て回れば住人のナマの生活を見ることができておもしろい。
コレが一番の繁華街。
5分も歩けば終わってしまう。
これでも週末になるとゾロゾロと人が集まりそれなりのにぎわいを見せる。
ブレッチリー散歩についてもすでにMarshall Blogに記してあるので「Marshallだより 2015 <後編>」をご覧頂きたい。
家内にひと通り町を見せて工場に戻る。
人いねェ~!
住宅地には豪奢な家も少なくないが、こうした(恐らく)低所得者向けの長屋式住居を散見される。
このタイプの住居はイギリスの郊外に行くと必ず見かけるな。
平日ということもあって、マァ、何せ人が歩いていない。
この辺りはロンドンまで電車でちょうど一時間。
完全にロンドンのベッド・タウンなのだそうだ。
アッレ~、どうでもいいけど道を間違えてるな?
道がどこも極端に弯曲していて、一度間違えると修正するのが大変。
例によって足はボロボロときているのに、超無駄なエネルギーを使ってしまった!
今日はまだこの後に大切な行事があるのに!
…とようやく工場に帰着。
4時ぐらい。
もう駐車スペースには車が1台も停まっていない。
そう、みんなもう帰っちゃったの。金曜日だよ。
Marshallの工場の製造分門は金曜日も半ドン。
事務職は午後も残っているけど、もうこの時間にはいなくなっちゃう。
その分、スタートが朝8時だからね。
でも、いくら朝早くても、5時チョット過ぎには家に帰れる方がいいナァ。通勤時間がみんな15分ぐらいだ。
イギリスの場合、6月をピークに春から夏までは太陽が昇っている時間が異常に長い。
6月には夜10時過ぎまで外が明るいから、5時に家に帰って、もう一回その日を始めるような感覚だ。
言い換えると、毎日「昼間は仕事で夜は休日」みたいな…。
その代り、冬は3時には暗くなってきちゃう。
無人のMarshall工場で記念撮影!
私の肩に汗でリュックの跡ができてる。
暑いんだか、寒いんだかよくわからない気候。総じて涼しいんだけど、動くとすぐ熱くなる。
ホテルの中庭?
イヤ、グランドにホテルがくっついているのね。
昔はMarshallがMK DONSのスポンサーをやっていたので場内にはおなじみのMarshallロゴの飾りや得点ボードが設置されていた。
で、ホテルの部屋に帰ってWi-Fiをひっつないで、メールをチェックしてビックリ!
私の父が死んじゃってた!
…と言っても突然ではなくて、しばらく臥せっていたんだけど衰弱が著しく、急に容態が悪くなって力尽きてしまった。
日本を出る時にはまだ持ちこたえられそうだったので、思いきって離日したけど、ダメだった。
いつかMarshall Blogにも書いたけど、私は父から大きな影響を受けていて、今Marshallで働けるのも、英語を使っているのもすべて父のおかげだ。
父は音楽に詳しいワケでも英語ができるワケでもない、戦後の混乱によって中学にも行っていない一介の大工だった。
ところが、映画や落語等のエンターテインメントの知識においては人後に落ちることがなく、その方面でずいぶんたくさんのことを教わり、それが音楽につながり、そこから英語を勉強するキッカケにつながったのだ。
そんなだから、妹からの訃報を目にして、その場で一発だけ思い切り声を出して泣いた。
家内も18歳の時からの長い付き合いなものだったから大号泣。
で、ひと通り泣いてから気分を一新…この後、緊張の行事が待っていたのだ。
それにしても、父の死に目に会えなかったのは悔やまれるけど、イギリス来ていたおかげで哀しみが半減、イヤ、それ以下になったことも否めない。
コレも父の思いやりだったのかも。
もうすぐ一周忌なんだけど、大変にぎやかだった人だけに、どうもこの世にもういないってことが信じられない。
「ウ~っす!」と言いながら突然ウチに上がり込んで来そうな感じがするんだよね。
でも、もうあり得ない。
しかし、コリャ親が死んだ「悲しみ」より、もう二度と会えないという「寂しさ」の方がはるかに大きいね。
「緊張の行事」とは、Marshallの社長、ジョンの一族の方々と共に、自宅で開くパーティにお呼ばれしていたのだ。ホームパーティってヤツね。
今回の渡英の一番の目的は次の日に開かれるジョンと奥方の「結婚10周年の記念パーティ」に招待されて、出席することだったのだ~!
え、なんでそんなのに招待されるの?かというと、奥さんのエリーは以前工場の受付やJim Marshallの秘書をしていたりして、ずいぶん一緒に仕事をさせて頂いた旧知の仲なのです。
そんな関係なので、せっかく日本から来たことだし…と、前日の身内のパーティにも招待されたワケ。
それと、二人にはバディというお孫さんがいて、メッチャ可愛いんですわ。彼に会いに行くのも目的のひとつだった。
しかし、ホームパーティなんてさ、ビビりますよ。
私はほんの数回、別の機会にお呼ばれしたことがあるけど、家内は初めての経験。
ナニにビビるかっていうと、礼儀もさることながら、やはり一番は言葉の壁だよね。
大きなパーティと違って逃げることができない。
それと、アメリカ人ほどではないにしろ、やたらと話かけてくるじゃん?
名前を聞きとって覚えるのもひと苦労なワケ。
私は「英語に自信がある」というほどでは断じてないのだけど、マァ、とりあえずしゃべる方だけは自分の言いたいことをほぼ自由に言えるのでさほどストレスにはならい。
ところがコワイのはリスニングなんですわ。
アメリカ人相手ならビビらないんだけど、イギリスの英語は運悪く激訛りの人に当たっちゃうと、まったく相手の英語が聞き取れない時があるんね。
以前、ロンドンのB&Bで一緒になったオジちゃんの英語がすさまじいまでのコックニー訛りで最初から最後まで何ひとつ聞き取れないことがあった。ホントにわからなかった。雰囲気でサッカーの話をしているということだけがわかった。
そんなだから、このパーティも心配していたんだけど、完全にセーフ。
スウェーデンから来たジョンのお姉さん家族、ジョンの子供たち(といってももう結構オジちゃん)、エリーのお嬢さんとその彼氏たち…そんな出席者で和気あいあいと楽しい時間を過ごすことができた。
写真はジョンのフラット(日本で言えば高級マンション)のベランダ。
眼下には運河が走っていてナローボートが上り下りしている。
すんばらしい眺めですよ。
ミルトンキーンズの中心から車で15分ぐらいの隣町で、とても静かなところだった。
お孫さんのバディはちょうど極度の人見知りのお年頃で、何せカメラを向けただけで激泣き!
「シゲたちはせっかく日本から会いに来てくれたのよ~」なんてエリーはバディを諭してくれるんだけど、本人は「そんなのカンケーねぇ!」状態。
眠かったせいもあったのだろう。
結果、写真は一枚も撮れず!
家内も緊張気味でおとなしい。
私は…といえば、父のことをジョンにだけ伝えた。東京に帰ってから色々と葬儀関係のセレモニーで仕事を休まなければならないからだ。
ジョンは大層驚いて、気を遣ってくれた。
めでたい機会を湿っぽくしたくなかったので、エリーには知らせないこともジョンには申し伝えた。
さて、心配していた言葉の問題もゼンゼンなくて、パーティは続く。
ジョンが出してくれたイギリスのビールちゃんたち。
見たことないやつばっか。
私がイングリッシュ・エールやビターが好きなのを知っていてジョンがワザワザ用意してくれた。
どれもおいしいんだ!
エリーと家内。
エリーには15年ぐらい前、初めてMarshallに行った時からお世話になりっぱなしなのだ。
最初はあんなに緊張したものの、皆さんとびっきりいい人ばかりで、最高に楽しかったな。
ジョンのお姉さんのエリザベスは先述の通り、スウェーデンからの参加で、一番長い時間話をしたかな?
ジョンの実姉だけあって最初はちょっと厳しい感じだったけど、話し始めるとすぐにゼンゼンそんなことはないということがわかった。
こういう時の話題は、もうお国事情の違いに尽きる。
天候、言葉、風習、後はお互いに相手の趣味に関する話。
やっぱり白夜の話とかは興味深いよね。
それと、ひとつ印象に残っているのは、「フィ」という発音がすべて「ピ」になってしまう東南アジアの国があって、「イチジク」が「豚」になってしまう…とかいう話。イチジクは英語で「fig」という。
ま、せいぜいこんな話ですよ。
ナンダカンダで10時ぐらいまでワイワイみんなで騒いで、外までジョンとエリーに見送られてジョンのフラットを後にした。
すごく楽しかったので、父のことを忘れることができた…助かった。
つづく