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2019年6月

2019年6月27日 (木)

ついに『結婚』!


中野に来た。
サンプラじゃない、〇1〇1の方の出口。
線路伝いに東中野方面に歩いて行くと右側に現れるのがこの施設。
「なかのZERO」という施設なんだけど、スゴい立派なホールで驚いたよ。
こんなところにこんなモノがあったのね?
あんまりシッカリした設備だったので、経営母体がどこなのか気になり、電話して尋ねてみた。
中野区が所有して、民間に運営委託をしているとか…。

10ナニをしに来たのかと言うと…コレを観に来た。
ココへ行ったのはもうひと月以上前、イギリスに行く9日前のことなんだけど、この時もう右ヒザが痛くて、「こんなんでイギリスに行っちゃって大丈夫なのかナァ」とかなり不安な気持ちを携えつつ、サポーターをガッチリと装着してゴマカシゴマカシ歩いて行ったんだっけ。
ヒザの話はまた後日、Marshall BlogやShige Blogの『イギリス紀行』でタップリ泣かせて頂きますので覚悟しておいてくだされ。

2img_8762 イヤ、ホントにスゴいホールでね~。
コンサートの主催者は「オルフ祝祭合唱団」という団体さん。
念のために事前にチケットを買っておこうかと思い、主催者に電話をして問い合わせたところ、「ダイジョブです、ダイジョブです。会場は大きいし、当日で十分ですよ。前売りなんて買わなくてダイジョブですから!」とおっしゃる。
前売りも当日も同じ値段なので、その方のアドバイス通り当日券を買って入ることにした。
で、会場に行ってビックリ!
結構多くの人が集まっていたんだけど、ビックリしたのはその人数ではなくて客層。
比較的お年を召した女性の方が圧倒的に多いのだ。
イヤ、コレがバッハだのモーツァルトだったらわかるよ。
アータ、オルフにスタヴィンスキーだぜ!
失礼ながらホントにわかってお越しになられたのだろうか?
ま、それは本番になってみればわかるか?

30ホントにスゴいホールだった。
電話の方がおっしゃったように、正直ガラガラだったので肉声がよく聞こえるようにと、遠慮なく真ん中の前の方に陣取らせて頂いた。

70_2ステージは普通のクラシックのコンサートとはまったく異なるセット。

40そう、今日の演目はピアノ4人、打楽器が4人、それに合唱という超変態インストゥルメンタリゼーションの2曲なのだ。

2pg3本番中の写真が撮れないのは仕方ない。
楽器チームを挟む形で、手前のひな壇の上手に男性、下手に女性コーラス・チームが配置された。

50_21曲目はカール・オルフの「カトゥーリ・カルミナ」。
コレがカール・オルフ。
ドイツの作曲家だ。

Ko「カルミラ・ブラーナ」は知ってるでしょ?
「さぁ、ファイナル・アンサーをどうぞ!」のような場面で緊張を煽るためにやたらと使われるヤツ。

Burna私ですらCDを2枚持ってる。
でも、猫も杓子も「カルミラ・ブラーナ」って騒ぐものだからスッカリイヤになっちゃった。
クラシック版「Burn」とか「Spain」ってところ。

5_0r4a0499で、この『カトゥーリ・カルミナ』はその続編というか、オルフの3部作のウチの一編。
1943年の作品…戦時中にこんな曲を作っていたのね?
ドイツも余裕だな。
というのはコレ、もうドロッドロのエロ歌なのよ。
もちろんナニを歌っているのかを聴いてわかるワケではないんだけど、後で訳詩を見てビックリ!
なんじゃはこの歌は?
だって「乳房~、乳房~」と歌っている割に曲は「カルミナ・ブラーナ」譲りの厳格さ漂うギンギンにハードな調子だからね。
申し訳ないんだけど、曲としては「カルミナ・ブラーナ」の方がおもしろいな。
それと、コーラスの編成が女性の方が圧倒的に数が多く、男性の声がチョット寂しかったのが残念に感じた。
メンバーが集まらなかったのかな?

12catulli休憩を挟んで次の曲。
 
Shige Blogらしくフランク・ザッパからストラヴィンスキーに入りましょうか?
最近40周年記念バージョンを発売した1978年のニューヨークのライブ盤の1曲目、「Titties & Beer」。
悪魔に扮したテリー・ボジオに彼女を食べられてしまったバイクの男に扮するザッパが尋ねる。
「I'm only interested in two things.  See if you can guess what they are(オレは2つのことにしか興味がないんだ。できるもんならそれがナンだか当ててみな)」
すると悪魔が答える。
「Let's see....maybe.....Stravinsky...(えーとだな…たぶん…スラヴィンスキーか)
好きなシーンである。
ところで、この40周年記念バージョン、AmazonにオーダーしてLPはひと月前に配達されたんだけど、CDが一向に届かない。
どうなってんのね~、Amazonは…。

5_0r4a0503_2ザッパは『Chunga's Revenge』で「Igor's Boogie」という曲を演っている。
ストラヴィンスキーのフルネームは、キリル文字だと「И́горь Фёдорович Страви́нский」、英語表記だと「Igor Fyodorovich Stravinsky」。
日本語だと「イーゴリ」とか「イゴール」と読んで「フュードロヴィチ・ストラヴィンスキー」とつなげる。
ザッパの曲の邦題は「イゴールのブギ」になっていたけど、このイゴールとはストラヴィンスキーのことでしょうな。
 

Crそれにザッパは人生最後のバンド・ツアーのレパートリーにストラヴィンスキーの「兵士の物語( 仏=L'Histoire du soldat、英= The Soldier's Tale)」を取り上げている。
コレ、カッコイイ曲なんだよね~。

Jnコレがストラヴィンスキー。
いつか紹介した『シャネル&ストラヴィンスキー』という映画の中では、背の高い、かなりカッコいい役者さんが演じていたけど、コレの次の写真を見てビックリ!

Igoコレは今回ロンドンの「V&A(ヴィクトリア&アルバート博物館)」で発見した写真。
チョット興奮しちゃった。
後の真ん中が「バレエ・リュス(Ballet Russe)」の主宰者、セルゲイ・ディアギレフ。
向かって左のヒゲのオッサンはわからないが、向かって一番右の人は何とセルゲイ・プロコフィエフ。
プロコフィエフの音楽もメッチャかっこいい。
そしてディアギレフとプロコフィエフの間にステッキを持って立っているのがストラヴィンスキー…ずいぶんチャイチーでしょう?
ハッキリ言ってカッコ悪し。
でも音楽はすこぶるカッコ良し。それでいいのだ。

Sps今回このコンサートのお目当ては2曲目に演奏したストラヴィンスキーの「結婚(Les Noces)」。
もうね~、大好きなの。
といっても昔からのことではなくて、というかロックに夢中なりし頃はストラヴィンスキーなんか聴くワケないわな。
以前に勤めていた会社の音大出の同僚に教えてもらったの。
「シゲさんならきっと気に入りますよ」と言われてドップリとハマった。
1923年、ジム・マーシャルが生まれた年。関東大震災が派生した大正12年の作品。
「こんな音楽が世の中にあるのか!」と結構ショックを受けたな。
そして、それ以降はフランスMAGMAを一回も聴いていない…必要なくなっちゃった。
同様に、近代クラシックをよく聴くようになると、もうね、あれほど夢中になったプログレッシブ・ロックが退屈極まりなくなっちゃったんですよ。
困ってるの。何と言うか…プログレッシブ・ロックという音楽に意味を感じなくなってしまったのよ。
特にCaravanとか、Camelとかがヤバい。
そこへ行くとやっぱりKing CrimsonとかYesとかPink Floydというのはスゴイよね。
恐るべきオリジナリティだと思う。Areaは今でも大好きです、ハイ。

Nocesで、こんな変態的な楽器編成だし、特に人気のある曲ではないし…ということでこの曲が演奏されることは滅多にない。
実際、私が持っているNAXOS盤もオペラ「エディプス王(Oedipus Rex、ちなみに英語では'オイディプス'と発音します)」の付け合わせ程度に収録されている。
もちろん私は「結婚」を目当てに買ったんだけどね。
以前にMarshall Blogに書いたけど、何年か前に国内最大級のクラシックのフェスティバル『ラ・フォル・ジュルネTOKYO』で演奏されるというので話題になっていた。
「XX年ぶりにナマで演奏する!」という触れ込みで、メッチャ聴きに行きたかったんだけど行かれなかった。
そして今回、チャンス到来!

5_0r4a0501イヤ~、スゴかった。
オルフの時と同じメンバーにソリストが数人増えた形だったんだけど、ナンノ不都合も感じずに、23分ジックリ聴き入ってしまった。
やっぱり曲のクォリティがそうさせるのか?
あんなに集中して音楽を聴いたのは久しぶりのことだった。
特にソプラノを担当した中江さんという方がスゴくて、ふくよかな体躯からストレートに張り出してくるあのメロディにのけ反ってしまった。
しかし、あんなメロディをよく覚えられるな~。
そして、こんな曲を思いついて実際に作る人…アッタマおかしいわ!
ま、それを聴いて喜んでいる方もおかしいか?

5_2nakaeところで、あの年配の女性のお客さんたち…やっぱり「こういうのじゃないと思っていた」的な反応をしていたように見えたのは私だけであろうか?
 
終わった瞬間、もう1回聴きたいと思った。
オルフは演らないで「結婚」を2回続けて演ってもらってもヨカッタ…それじゃバツイチか?
いつか、西洋人が演じる脂っこい「結婚」を観てみたい。

60_2(2019年5月18日 なかのZERO大ホールにて撮影)