TAIKO GATHERING vol.1 春~GOCOOの世界
2012年5月14日初出
Tiko gathering vol.1 Spring~The world accordimg to GOCOO
『オーケストラ・リハーサル(Prova d'orchestra)』というフェデリコ・フェリーニの1979年の作品がある。深夜のテレビで放映されたのを、たった一度眼をこすりながら観ただけなので細かい部分は一切覚えていない。元来、フェリーニだとか、ゴダールだとか、ワイダとか、評論家先生方が絶賛するこのあたりのヨーロッパ映画ってサッパリわからないのですよ。フェリーニも『甘い生活』だの、『8 1/2』だの、『アマルコルド』だの、『ジンジャーとフレッド』だのと、チョコチョコ観てはいるものの、どーもワカラン!
やっぱ映画はハリウッドよ!黒澤よ!…これが私の映画道なのです。歳をとってきているのでコムズカシイのはもう一切ダメね。子供の頃、お年寄りが時代劇ばかり観ているのを「一体ナニがおもしろいのやら?」と不思議に思ってたけど、いよいよ来たぜ!その良さがわかる歳が!
で、フェリーニは結局、小学生の時に観た『道』ぐらいしか印象に残っていなかった。ジュリエッタ・マシーナ演じるジェルソミーナが切なくて…子供ながらに「ずいぶんイヤな映画だ…」と思ったものだ。対するザンパノを演じるアンソニー・クイン。好きだな~。これも一度しか観たことがなくて、是非また観たいと思っている彼の主演作品で『25時』というのがあった。戦争に翻弄されるユダヤ人の話しで、とても切ない映画だった。『アラビアのロレンス』のハウェイタット族の首長もよかったし、『炎の人』のゴーギャン役もスゴかった。あ~また昔の映画観たくなってきたな…。
もうひとつ印象に残っているフェリーニ作品が『オーケストラ・リハーサル』というワケ。この映画の中でオーケストラの各パートの担当者が自分の楽器について色々とインタビューを受ける。ま、自分とは感覚の相違があれど、「こういう性格だからこういう楽器をやっている」というのが浮き彫りになってくるところがおもしろかった。
N響の方の主席オーボエ奏者の茂木大輔さんに『オーケストラ楽器別人間学』という著書もある。やっぱ音楽にたずさわる人はみんな興味のあるとこなのだろう。
さて、自分はどうか?
やっぱり、ギターなんだよね~。最近はもうすっかりイジる時間も少なくなってしまったけど、やっぱりギターが好き。正確にいうとギターを使った音楽が好きなのかも知れない。間口を広げてもせいぜい弦楽器。絶対打楽器人間じゃないと思う。
こういうのは、好みの音楽や家庭での環境など、かなり早い段階での刷り込みが影響しているんだと思うけど、楽器が違えばそれぞれが滅多に相容れようとしないし、奏でる人の性格も似通っているからスゴイ!生まれた時から「楽器をやるならこの楽器」って運命づけられているような気がする。
管楽器ばっかり好きな人もいれば、ベースのことしか頭にない人もいるもんね。
そして、今日は和太鼓の話題(コ。ここシャレになってます)。生まれながらにして和太鼓を叩くことが決められていた方々のライブのレポート!
弦楽器族の人間が打楽器族を撮影するとどうなるか?そこんところも含めてご覧あれ!
この日は『TAIKOギャザリング vol.1 春』というタイトルのイベント。下谷さんのお祭りが昨日で終わって、今週末は三社さん。それに大分先駆けて開かれたのこのお祭り!
「♪何もすることがなくて、おろしたてのバラ色のシャツきて…」…おまつりっていいよね!
でもこちらは4人どころじゃなくてお客さんもゴッチャにまみれての太鼓の大宴会!楽しいよ~!
主宰は世界で活躍する和太鼓バンド、GOCOO(ゴクー)。そのGOCOOがプロデュース和太鼓グループTAWOO(タヲ)の演奏や、東京キネマ倶楽部で催された和太鼓のワークショップの第1回目の発表会も併演された。
ワークショップの発表会。
1か月程度のワークショップでアンサンブルに参加できるようになる。新しい趣味を見つけた人、ストレスを発散している人、エクササイズしてる人、そして和太鼓の魅力にとりつかれた人、みんな楽しそうだ!
アタシだってね、パラディドルやフラマキューぐらいは知ってますけどね、このスティック…バチか…で延々と叩き続けるなってとてもできゃしませんね。すごいエネルギーだ!
TAWOOのメンバー、kaori。
Keiko。
このポーズ!自分がやった時のカッコ悪さを想像するとタマランわ~。
そもそも、このパターンというか曲が覚えられそうにないですわ!
Chihiro。
また打楽器特有のダイナミクスを味わうのも楽しい。ピアノから…
はじけるようなフォルテシシモまで!
このGOCOO一派は女性比率の高いパフォーマンス団体だ。その中で男性だけの演奏となるとまた雰囲気が変わっておもしろい。
和太鼓といえば、子供のころキャラメル欲しさに山車に乗って叩いた「ドンドンカカカ」ぐらいだかんね~。
ここでGOCOOの人気者、Nogzo(ノグゾー)さんの指導で会場が一体となる。
音を出してみることから始まって、最後はみんなで大合奏。曲は「天才バカボン」だ!はじめのうちはホンノちょっと恥ずかしがっていたみなさんもNogzoの明るく楽しいリードで最後は「え~、もう終わり?」みたいな…こういうところが打楽器のいいところなんだよね。ギターではこれできないから。
そしていよいよGOCOOのパフォーマンス!
GOCOOをご存知ないシゲブロ読者のためにプロフィールをば…淺野香(Kaoly)をリーダーとした1997年デビュー和太鼓バンド。メンバーの松崎太郎(Tarow)が制作したオリジナルの太鼓を含め、30台を越す和太鼓を使用している。。
活動は国立劇場「日本の太鼓」から「フジロック・フェスティバル」までと幅広く、海外でもヨーロッパのビッグフェスを中心に中南米やオセアニア、アフリカなど延べ28ヶ国174回(2012年1月時点)にのぼるライブを敢行している。
和太鼓の常識を大きく越えたサウンドが絶賛され、グローバル・ミュージックとしての和太鼓の在り方を打ち出しており、ド映画『マトリックス』のサウンド・トラックにも日本から唯一参加。2009年の7月には雑誌 『Newsweek』の「世界が尊敬する日本人100」にも選ばれている…のだ。
GOCOOのリーダー、タヲ太鼓道場主宰のKaoly(カオリー)さん。
あのね~、とにもかくにもカッコいいことこの上ないのよ、Kaokyさん!
「ハッ!」と気合いを入れて打擲する瞬間、その場の空気が締まるのだ。
そして、白鳥のように舞う姿は、打楽器奏者というよりバレリーナだ。
しかもこのスタミナ!この日、ズッと出ずっぱだったのですよ。出ずっぱりでもボーっとステージに立っているワケではないからね。ずっと力イッパイ叩きっぱなし!まさに和太鼓のAavatarなのだ!
これね~、みなさんね~、和太鼓のアンサンブルっていうとどういうサウンドをイメージしますか?
そうだな…和太鼓のオノマトペといったら…「ドンドコドンドコ」でしょ?私流の聴き方だけど、GOCOOのアンサンブルからはそれが聴こえてこない。
そうした和太鼓のステレオタイプを粉々にしてしまったって感じね。だからといって奇をてらったワケのわからない演奏ではまったくない!伝統的な奏法を踏襲した上で、完全に自由な発想でアンサンブルを組み上げているというやり方だ。
自分たちを「和太鼓バンド」と標榜しているが、そう、私にはね、キング・クリムゾンのイメージがメッチャ強いのです。私は先に触れたように自分を根っからのギター人間ではあると思ってはいるけど、打楽器も結構好きでござんしてね、GONGの『Expresso II』なんて愛聴盤だし、某音大の打楽器科の卒業記念コンサートに行ったこともあるんですよ、ハイ。
それでも退屈な演奏は退屈ですからね。正直、数年前に他の団体の和太鼓のリサイタルへ行ってシンドイ思いをしたこともある。
でもね、このGOCOOは観てても、聴いてても飽きない。曲がいいんですよ。私にとっては、キング・クリムゾンであったり、マグマであったり、後期のゴングであったり、クセナキスであったり。
何といおうか、打楽器のアンサンブルなのに、そこにメロデイが見えてくるんだよね。
長胴太鼓、シメ太鼓、桶胴太鼓、バンブー、銅鑼担当のTakema。
ワークショップで会場を大いに盛り上げたNogzo。Takemaと同じく、長胴太鼓、シメ太鼓、桶胴太鼓、バンブー、さらにジャガラシンバル、ホーミーを担当している。
女性比率の高いGOCOOの中でステージ中央、Kaolyの背後でガッチリとサウンドを引き締めるその姿は金と銀か…。男だからふたりとも金将だ。
リーダーのKaolyはシメ太鼓、長シメ太鼓、桶胴太鼓、インディアンドラム、法螺貝、ボーカル、MCと八面六臂の活躍!
Tarowもシメ太鼓、長シメ太鼓、桶胴太鼓、あたり鉦、スリットドラム、シンバル、銅鑼と担当楽器が多い傍らGOCOOが使用している桶太鼓を製作している。
シメ太鼓、長胴太鼓、桶胴太鼓を担当するYoccy(ヨッシー)。
今、シゲブログではこうやってひとりひとりメンバーを紹介しているが、GOCOOってステージでダラダラとメンバー紹介をしないんだよね。これも好き!
中には大所帯のバンドで、ひとりひとり紹介して、かつ1人ひとことなんてのもあったりするじゃない、20分ぐらいかけて…。大会社の歓送迎会じゃあるまいし…サラってやってもらいたいことがあるよね。
そういえば、「メンバーを紹介します!」っていうの、アレ昔はこんなにやらなかったもんですよ。
ちなみに、記録に残っているもので一番カッコいいと私が思っているメンバー紹介はハービー・ハンコックの1976年の『V.S.O.P.』だな。「The Eye of the Hurricane」の前。ハービーの紹介でトニー~ロン~フレディ~ウェイン~ハービーの順で入っ来てテーマをプレイした瞬間に鳥肌の出ない音楽ファンはいないだろう。
ああいう風にやってくれるメンバー紹介なら大歓迎なんだけどね!
GOCOOがそれをやらないのも、GOCOO自体がひとつの人格を持ったパフォーマーだという意識があるからなのかもしれない。ひとりならメンバー紹介する必要もないもんね、「GOCOO」なんだから。
GOCOOのフロント陣、シメ太鼓、長シメ太鼓、桶胴太鼓、長胴太鼓他を担当するKanae。
恐らくはじめてGOCOOを観る時、この2人の動きに目を奪われる時間が少なくないであろう。
ステージ上下でKaolyをはさんだその姿は将棋なら「飛車角」、『水戸黄門』なら「助さん角さん」、『ヤッターマン』なら「ボヤッキーとトンズラー」だ。(あ、もちろん「名コンビ」という例えね!)
最初から最後まで全身の力を振り絞った演奏から目が離せないのだ!
GOCOOはとにかく全員楽しそうだ。全員終始笑っている。だから観ている方も楽しい!
是非みなさんにもこのワン・アンド・オンリーのGOCOOの世界を味わっていただきたい。
世界が舞台のGOCOO。この7月にもドイツ、ハンガリー、イタリア、ポルトガル、フランス等7ヶ国15回公演のヨーロッパツアーが決定している。
GOCOOの詳しい情報はコチラ⇒GOCOO公式ウェブサイト
今日冒頭にレポートした「和太鼓ワークショップ@東京キネマ倶楽部」の2ndクールがもうすぐ始まります!
詳しい情報はコチラ⇒和太鼓ワークショップ@東京キネマ倶楽部公式ウェブサイト
(一部敬称略 2012年4月1日 東京キネマ倶楽部にて撮影)