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2013年6月10日 (月)

イギリス紀行2012 その15~ロンドン <ロンドン、ロンドン、トホホのロンドン>

2012年7月27日 初出

いよいよ始まりますな~、ロンドン・オリンピック!こっちの今晩が開会式でしょ~。それに合わせてこの『イギリス紀行2012』もロンドンにやって来たゼ~!

テレビはどのチャンネルも「ロンドン、ロンドン」。いつもよりはるかに騒いでいるような気がしますな。アテネとかバルセロナとかアトランタの時、こんなに街の紹介なんかしなかったでしょ?ヒイキじゃない?ロンドンの人気が高いのか、誰かが操作しているのかしらないけど、そういう番組を見ては「ここ知ってる!」とか「行ったことある!」とか大騒ぎしている私なのであります。

やっぱり魅力的なんでしょうな、ロンドン。でも、今日のロンドンはトホホの話し。

Stradfordなんですってね、開閉会式会場…。何年も前の話しになりますが…Stradfordにはイヤな思い出があるのだ。

あの時、すごくお世話になった仲良しのマーシャルのベテラン社員が会社を辞めることになり、その送別会に招待されたのだ。

他に招待された海外の関係者はスペインとカナダだけだった。確か3泊5日のタフな旅程で、今にして思うとよく行ったよね。それでもせっかくご招待の栄誉にあずかったよろこびもあって行っちゃったんだよね。今よりはまだ若かったし?!

いつもはマーシャルからヒースロー空港に迎えの車を出してもらうのだが、この時はナゼか先にロンドンで一泊した。Finchley Roadのホテルに着くやいなや、レセプションの女性から伝言を聞かされた。「マーシャル・アンプリフィケーション様からの伝言です。明日朝8時、ストラッドフォード駅来てください」とのこと。つまりストラッドフォード駅で落ち合いましょう…という意味だ。

ストラッドフォードねぇ~。行ったことないし、当然ロケーションもわからない…。何でそんな所まで行かなきゃならないんだろう?するとその女性が地図を出して丁寧に行き方を説明してくれた。それほど遠いワケではないが、デカイ荷物もあるし、朝8時の待ち合わせとなると余裕を見て7時には出なきゃならないな…と心に決めて一日を終わらせた。

翌朝6時に起きて、簡単な朝食を済ませ、前日に教わった通りにストラッドフォードに向かった。ストラッドフォードはロンドンの北東に位置する国鉄の駅で、ラッシュ・アワーのさなかだったため、ドデカイ荷物をガラガラと引いて電車に乗る私は大勢の人の注目の的だった。

何とかストラッドフォード駅に着いたものの、一体どこで待っていればよいのやら…改札か?駅前のロータリーか?ま、車で来てくれるわけだから少なくとも外に出ていよう。

まだそれらしき車は来ていない。8時前に着いたので、それまでは待つよりしょうがないな…。

8時になった。でも誰も来ない。駅は通勤の会社員たちでゴッタ返している。

5分が過ぎ、10分が過ぎ…30分が過ぎても誰も来てくれない。もちろん不安もあるけど、伝言の英語はシッカリと聞き取ったし、ロンドンはアホみたいに渋滞するから30分ぐらいは仕方ないナ…と自分を納得させてもう少し待つことにした。

1時間以上経過…こりゃおかしすぎるゾ!と思い、駅の公衆電話からホテルに電話をしてみた。その時は携帯電話を持っていなかった。すると、電話に出た女性がモノスゴイ勢いで謝りまくるではないか!話しを聞いてみれば、実はその人の伝言の聞き違いで、どれだけ待ってもストラッドフォードには誰も行かないというのだ。正しい伝言は「明日の朝8時にストラッドフォード・カーズという会社の車が迎えに行くのでホテルで待っていてくれ」というものだった。

オイ!一体どういう伝言の聞き方をしてるんだよ!ホテルの女性も猛烈に謝っているので怒るワケにもいかない。「F%%#!」とか怒鳴る度胸もない。

彼女からストラッドフォード・カーズの電話番号をもらい状況を説明した。すると聞き覚えのある社長夫人の声が受話器から流れ出た。「チョット!シゲ!どこにいるの?ごめんなさい!」とこちらも大謝り大会。私は私であの車の会社が「ストラッドフォード・カーズ」という名前だったのをスッカリ忘れていたのだ。

結局、もう迎えには来てくれないので、重い荷物を抱えてロンドン・ユーストン駅まで移動して電車でブレッチリーまで赴いたのだった。

その晩、例の送別会でいっしょになったマーシャルの友達数人からこんなことを言われた…

「ヘイ、シゲ!今朝はストラッドフォードで何をしていたんだい?おまえ、テレビに映ってたんだゾ!」だって!何やら『ズームイン朝!』みたいなモーニング・ワイドショウで偶然写り込んでたらしい。全然うれしくなかった!

この時は帰る日に財布をスラれたりしてさんざんな旅だった。ストラッドフォードの思い出でした~。

それにしても、天気もいいみたいでうらやましいね!…ということで話しを戻そう。

あれほど好きだったロンドンなのに今回は行くのが億劫になってしまった。これはね、全部雨のせいなのですよ、雨のせい!何もここまで雨を降らさなくたっていいと思うけどね…。

昨日、スティーヴのパソコンでプリントアウトしてもらったeチケットをしっかりと持っていよいよ宿を出た。もう飛行機ではおなじみだが、電車のeチケットなんてのははじめてで、こんなパソコンから出て来た紙っきれで電車に乗れるんかね?と疑いたくもなる。

スティーヴが駅まで車で送ってくれて、電車に乗るところまで見届けてくれた。ここ数日天気はあまりにもヒドかったが、最高に楽しかった!すべてスティーヴのホスピタリティのおかげだ。ニューキャッスル行きの地下鉄が入線してきた。スティーヴとの別れを惜しみ電車に乗り込んだ。ちょっとグッときてしまった。歳を取って涙腺が緩んでる。

そんなロマンティックなムードを簡単にブチ壊したのは車内の猛烈な異臭!! クッセ~!と、激クサの元を探すべく車内を見まわすと、軽く10年は風呂に入っていないかのようなオッサンが車両の真ん中あたりのイスに座ってる。それに気付いた乗客はそそくさと隣の車両に移動!私も!

それでも、あのオッサン、Jethro Tullの 『Aqualung』のジャケに出ているキャラみたいでカッコよかったりして…。

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ニューキャッスルに到着。本当にあの紙っきれで電車に乗れるのかまだ心配。改札でプリントを見せたら難なく入れた。なんだ、これ便利だね。

ロンドン行きの電車は1時間に何本も運行している。ここからロンドン・キングス・クロスまで一直線。

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自分の電車の入線まで15分ぐらいある。寒風が吹きこんできて寒い!厚手のウールのカーディガンのファスナーを首まで上げて、その上に着ているジャケットのボタンをこれまた首までガッチリと閉める。それでも寒い!で、隣で同じく電車を待っている白人の家族を見ると、お父さんも子供も半ソデに短パンだ!DNAの違いを感じるね~。彼らじゃこの日本の夏を乗り切ることはできないだろうね~。

前から気になっていたんだけど、路線によって、つまり運行会社によって異なるが、こうした長距離列車の座席の背もたれには下の写真のような札がくっついている。

これは、この電車のどこからどこまではこの席を予約している人がいますよ…ということを知らせている。この写真のケースでは「ニューキャッスルからドンカスター」まで「ドンカスターからロンドン・キングス・クロス」まで予約されていますよ…となっている。つまり、座る人はドンカスターで代わるもののニューキャッスルから終点まで席は空いていませんよ~…ということ。「Face」は進行方向むきの座席。反対は当然「Back」だ。

これって、空いている時は勝手に座ってイイですよ~…という意味なのかな?

電車が入って来て乗り込み、自分の席へと向かう。混んでる!自分の席には若い女性が座っていた。「Excuse me」と言うだけですぐにどいてくれる。全席指定になっているのだが、この予約札も無視して、どうもみんな勝手に乗り込んで好きな席に座っちゃうようだ。駅に停まるたびに同様の光景が見られる。

見ていると不思議なことに勝手に座っている人の方が態度が大きく、正式な切符を持っている人の方が、頼んでどいてもらっている風なのだ。切符を持っている人が「Excuse me, I think this is my seat…」とかいいながらチケットを見せると、勝手に座っている方が謝るでもな、く「Mmmm」とか迷惑そうに無愛想な反応を示してどこかへ移動するのだ。これ反対でしょうが!

ヤバイ…ウスウスはわかっていたのだが、どうも私は違う電車に乗ってしまったようだ。そんなこともわからないのかって?だって自分が買った切符の電車が時間通りに入って来て時間通りに出発したら誰だって間違いないと思うじゃない?乗ってしばらくして社内のアナウンスで気が付いた・「40分も遅れてスミマセン」って言ってる!

ああ、さっきのおネエちゃんに悪いことしちゃったな。それに自分だってウカウカここに座ってられんぞ!ダーラムを過ぎ、ヨークを過ぎても誰も現れない。こりゃロンドンまでイケちゃうかな?と期待していたらとうとうやって来た。品のよさそうなお婆さんだ。

「ちょっと失礼…ここは私の席ではないかしら?」

こっちはもう自分の席ではないのがわかっているので立ち上がり席を譲りながら…「ハイ、私もこの席の切符を持っているんですが、残念ながら違う電車でして…」と言うと、

「あらそう…」とサッサと座ってしまった。その後私は向かいの席に座り直したのだが、このお婆さん、本を読みながら、ズイズイと平気で足を伸ばしてきやがって!全然感じ悪かったな。

約4時間の道中、私は本を読むでもなく、音楽を聴くでもなく、ボーっと窓の外を見て過ごしてしまった。疲れてたんだ。

そういえば、電車の中で、ある青年が一枚の紙を手に何か訴えるシーンに出くわした。よく聴いているとその紙を頭上に掲げながら、「みなさん!この鉄道会社はキングス・クロス駅にこのようなアンケートに協力するよう求めてきます。でもみなさん、これに応対するのをやめましょう!こんなに電車が遅れて迷惑をこうむっているのにこの会社に何かしてやる必要なまったくないのです!」ってな感じ。車内は拍手大喝采。彼は1つの車両につき3回。これを15輌はあろうかという全車両でやっているようだった。

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ロンドン・キングス・クロス駅。10年前に一度、ここからイングランドの中部の街へ出かけたことがあった。 6年前には多数の死傷者を出したテロが起きた場所のうちのひとつだ。こっちの人は「London Kings X」と書く。

以前とは異なり完全自動改札になっていて驚いた。この写真は晴れてるでしょ?別の日に撮ったもので、実際にロンドンに出てきた日はしっかりとした雨が降っていた。

今回のロンドンの宿は北東部のTottenham Haleというところ。ここキングス・クロス駅からヴィクトリア線で4つ目の駅。
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ここがトッテナム・ヘイル駅前。もちろんこの写真も別の日に撮ったもので、当日は冷たい冷たい雨がザンザン降っていた。

今回は滞在期間も長いので、格安のB&Bに泊まることにした。もう存知の通り、B&Bはベッドと朝食を供する宿という意味で、いわゆる日本でいう民宿みたいなもの。今回の宿が「格安」というのはその下を行く、つまり、朝食も出ないところを選んだ。だから「B&B」じゃなくてただの「B」だ。でもわざとそういうところを選んだの。なぜかというと、キッチンも洗濯機もあるいわゆるコンドミニアムみたいなところだから。

ヘンテコりんな料理に高い金を出して食べるより、自分でスーパーで買い物をして料理した方がいいからね。

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駅前にはちょっとしたショッピングセンターもあって取りあえずは問題なさそう。

この宿の持ち主は宿に常駐していないので、ヴィクトリア駅を出るときに電話をしてくれ、という。それで時間を見計らってトッテナム・ヘイルの駅まで迎えに来てくれるのだ。
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駅に着くと、ニコニコしたおじさんが近寄ってきて自己紹介してくれた。ムム?ロシア系か?一聴してイギリス英語のアクセントと異なるのがわかる。

「ワタシニツイテキテクダサイ」と宿まで誘導してくれる。それが、また複雑な道順で、迎えに来てくれなかったら絶対にたどり着かなかっただろう。

ところで、駅から歩いていると、黒人以外まったく見当たらない。ここもしかしてこのあたりはデンジャラスなエリアなんじゃないの?疲れていることもあって、トコトン不安になってしまった。というのは、駅から宿へ行くにはこの公園を通過しなければならず、夜ひとりでこんなとこトボトボと歩いていたら何が起きるかわかったもんじゃないでしょ?ビビったね。
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で、主人に訊いてみた。ここは「黒人が多いんスかね?」

「ハイ。ジュウニンノ70パーセントがコクジンデ~ス」 やっぱりそうか「治安は大丈夫なんですか?夜とか…」

「ハイ、ダイジョウブデ~ス!ナゼナラB&Bヲハジメテナンネンカタチマスガ、モンダイオコッタコトアリマッセ~ン!」だってよ。

トホホ、ヘンなとこ来ちゃったな…。それじゃ自分が被害者の第1号になるかも知れないってことか…。

雨は降るし、寒いし、疲れてるし、すっかり弱気。弱り目にたたり目、泣き面にハチとはこのことか…。トホホ、これからしばらくここで過ごすのかよ~

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「モウツクアルヨ~」、あ、別に中国系の方ではござらんね。東欧の人らしい。

ドワ~!全部同じ建物!
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白い部分がそのB&B。
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反対側もほぼおんなじ眺めだ。
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これが部屋。アレレ、清潔でゼ~ンゼン問題ないじゃん?
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荷物が汚くて失礼!テレビもあるし、クローゼットの中にはプライベート冷蔵庫もあるのだ!メッチャうれしい!
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これが共用のキッチン。調理道具も食器もすべて完備している。
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ガスコンロ。下にはオーヴンも付いている。

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オープンテラス。ずっと雨でここに出ることは結局なかったが、タバコを吸う人はここで吸える。
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さあ、買い物にいって料理しよう!と思いさっきの駅前のショッピング・センターに戻る。

アレレ~?どこも開いてない!そっか~、今日土曜日でどこも5時半で閉まるんだ~!トホホ、もう足が棒以下だよ~。でも我慢してこの街のハイロードまで傘をさしながら歩いて行く。

行ったところで大きなスーパーは開いていない。仕方なしに東欧系かイスラム系かわからない人がやってるスーパーに入る。

もうこういう時は、スパゲティに限るということで、パスタとソースを狙う。ビールとウインナーも買うぞ!

ところが!読めないのである!何が?って商品のパッケージの文字がまず見たことない形!アルファベットのものでも見たことない文字列!まあ、それでも何となくはわかるのでとにかく無難な方向へ舵を取り、何とか買い物をしてきた。

エ~。ギネス×2、ジョン・スミスのエール×1、パスタ・ソース×2、パスタ(1.7mm)×1、牛肉のウインナー×1、タバスコ×1、HEINZのミネストローネ×1、そしてパスタを茹でるときの塩、それにパン。これで約1,200円。ビールが3本入っていてこの値段なら安いでしょう。食材には消費税がかかってないからなんですよ、ノダサン!

これ、ウインナーを選ぶのがひと苦労だったの。ここのウインナーは宗教上の理由なんだろうけど、素材がエラク明確になっていて、牛、鶏、七面鳥とかパッケージに絵が描いてある。豚はなかったような気がするな…イスラムの戒律の関係かな?

ニューヨークのホットドッグがおいしいのはユダヤ人が食べるビーフのウインナーが挟まっているからだという話しを思い出して牛の絵のヤツを買い込んできた。

さあ~、お湯を沸かしてイギリスで一番アルデンテのスパゲティを作るぞ~!と豪雨の中足取りも軽く宿に戻ったのであった。

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さっそく湯を沸かす。火力が弱い!オイオイオイオイ、これじゃうまくパスタを茹でられん!あ~あ~あ~あ~、何がアルデンテだよ!小学校の給食もマッツァオの超ソフト麺になっちまったじゃねーかよー!ま、それでもタバスコかけて食べちゃおう!

と思ったら…ナンダこのソース?甘いじゃねーか!なんだってこんな味付けにするんだよ!ギャグなのか?それとも罰ゲームなのか?

泣いた。泣きましたよ。期待していた食べ物がここまでマズイってのはここまで悲しいことなのか?楽しみにしてたのに…。ウインナーだってよ、なんだってこんなに塩入れちゃうのよ?1本食べただけで舌がビリビリなのよ。こんなの何本も食べたら後でノドかわいちゃってどうにもならんよ!

結局、ビールとパンか…。

テレビで寒さに震えながらもテムズ川を下り、公務につとめるエリザベス女王のお姿を拝見しながらロンドン初日の夜を過ごしたのであった。

ロンドン、ロンドン、トホホのロンドン。

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つづけますよッ!