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2013年6月10日 (月)

イギリス紀行2012 その11~ニューキャッスル2

2012年7月17日 初出

前回はタイン川にかかる名橋を紹介した。橋といえば藤沢周平の『橋ものがたり』を思い出す。井上ひさしがそれを読んで思わず「やられた!」と悔しがったらしい名短編集だ。その藤沢作品に出てくる橋は、大川(隅田川)にかかる木の橋で。勇猛とさえ思えるあの屈強なニューキャッスルの橋梁とは似ても似つかないものだ。それだからこそロマンが生まれるんだね。ロンドンのウォータールー橋も例の有名なロマンがあるね(後日ゲストを迎えてドラマチックに紹介します!)。橋は素晴らしい。信州の大岡村というところ(今は長野市に繰り入れられた)に朝治橋(あさじばし)という小さいながらも味わい深い(何の味わいだ?)橋がある。お近くにお寄りの際には、遭難に注意して是非探してみてください。

ちなみに、現在隅田川にかかる橋の一部は本来は軍艦になる予定だったのをご存知だろうか?

海外に行く時は、スーツケースを閉じる前にきっとポコッと入れてしまう藤沢作品。ああ、日本人でよかった…。

橋以外にもニューキャッスルの街並みはとても魅力的だ。

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市自体の人口は30万人だが、周辺のサンダーランド(Sunderland)やゲイツヘッド(Gateshead)などを含めると100万人のイングランド北部最大の都市になる。それだけに見ごたえのある建物が多い。

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ニューキャッスル一番の繁華街、グレイ・ストリート(Grey Street)。GREGGSもあるし、「ツーリストのお伴」のWH Smithも並んでいる。WH Smithというのはイギリス中どこへ行っても見かける本屋さん。大きな駅にはバカデカい店舗を構えていて、電車に乗る前にみんな本やら水やらちょっとしたお菓子を買い込んだりしている。だから「ツーリストのお伴」。私はWHSmithで『Classic Rock』という雑誌を買うのが大好きなの。今回は好きでないグループの特集だったので買わなかったけど…。

こうして当然街中にも出店している。ちょっと調べてみるとこれがスゴイ。1792年の創立で世界初のチェーンストアで、今、書籍販売業では不可欠の分類システムISBNの元、SBN(Standard Book Numbering)というものを開発したっだってさ~。

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Fenwickは1882年開業の老舗デパート。ロンドン、レスター、ヨーク、カンタベリーなどにも店舗を構えるが、ここニューキャッスルのお店が第1号だ。クリスマス・シーズンのウインドウ・ディスプレイが有名なのだそうだ。
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グレイ・ストリートを進む。しゃれた建物があちこちに確認できる。
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お、アーケードが出てきた。イギリスの「アーケード」は新小岩あたりの日本の駅前のそれとは著しく異なり、おしゃれでクラシカルで豪華なものばかりだ…ということで、さっそく入り込んでみる。
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こりゃ何やらスゴそうだ…。
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ドワ~!なんじゃこりゃ~!美しい!これがアーケードだからね~。

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1906年、 エドワード期に作られたもの。どんな事情があるのか知らんけど、こうした建築物を「これでもか!」とゴテゴテ装飾するこの感覚は我々にはないものだ。

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左側は楽器屋さん。クラシック系のポッシュなお店。

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天井から自然光が入ってきて、実際にコレ見るとあまりの壮麗さに腰抜かすよ!

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グレイ・ストリートの終点だか、起点だか…にある1838年つくられた高さ40mのモニュメント。先っちょに乗っかっているのは「グレイ伯爵」の彫像。だからグレイ・ストリートなのね?作者はロンドンのトラファルガー広場にあるネルソン提督も手がけたエドワード・ホッジス・ベイリー(Edward Hodges Baily)とかいう人。 このモニュメントも「勝手に壊しちゃいけない建造物リスト(Listed Building)」の一番上のヤツ(Grade 1)。
以上はどうでもよかったりして。さて、このグレイ伯爵、英語でいうとEarl Grey。アール・グレイ!そう、紅茶だったんですよ、このお方!イギリスで飲む紅茶はおいしい。

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土曜日でマーケットも開かれエラクにぎやか!
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スティーヴに連れられて歩いていると、奇妙なものを発見。「ユー・ヌードル」っていうのかな?「U」は「湯」にひっかけてる。だからメニューには「麺湯」なんて書いてある。

みなさんマチマチだろうけど、海外に来て一番恋しくなる食べ物は何だろう?私の場合何と言っても麺類だ。海外でもスパゲティのようなものはあるが、チト違う。満足できない。どんなに好きなイギリスでも、イギリスのスパゲティは許せん!

で、ある時、「麺類が恋しい」というのは「ダシが恋しい」ということに他ならないことに気付いた。それも魚系、つまり、カツオダシとか昆布ダシとか。こういうものに飢えてしまうんだよね。ラーメンも含めてね。我々ってダシと生きてることを実感するワケ、海外に出ると。

さて、それで何年か前にブライトンに行った時に思いついてしまったのですよ。思わず叫んだ「フォー!」って。タイ・レストランの存在に気がついたの。タイ・レストランは比較的どこにでもあって、ダシのきいたスープに入った麺にありつける。この際、麺が小麦でできていようと米でできていようと問題にならない。とにかく重要なのはダシだし!

でも気を付けなければいけないのはスープに浸かった麺をおいていない店が結構あるの。甘いんだか辛いんだかわからない焼きそばみたいなヤツね。そういう時は、レッドだのグリーンだののカレー系に逃げる。

今、ロンドン・オリンピックに関する番組をしょっちゅうテレビで目にするが、日本人が現地で合宿をするところがLoughburgh(ラフバラ)と いうロンドンから1時間ぐらいのところ。そこで、日本の選手に心行くまで練習に専念してもらおうと様々な工夫が凝らされている…という番組を観た。

部屋の中で靴をはく習慣を持たない我々のためにスリッパを用意てくれたり、お茶や紅茶のサービスに加えて、インスタントみそ汁が用意されているらしい。我々、お茶や紅茶と同じようにみそ汁は飲まないんですけどネェ…。

また、コックさんは日本人のテイストを学ぶために日本へ留学したとか…。そこでそのコックさんが発見したのは、「日本人の食事に絶対に欠かせないのは米とだし」ということだったらしい。ね~?!

さて、今目の前にあるのは間違いなくスープ・ヌードルの店。昼の時間にはまだちょっと早いけど食べちゃおうかな…ダシ。と考えているとスティーヴが「食べたいのか?」と訊いてくる。ここは素直にYESと行こうではないか!どうせウマくはないだろうけど、熱いスープに入った麺が食べたいんだよ~!って。

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ま、この「麺湯」の表示からしてここはラーメン屋さんだと思うよね。ところが、入ってみるとさにあらず。入ってみると予想以上に複雑な状況になってることを知る。

下のメニューを見ると「1、2、3」とあるでしょ?このシステムは、まず「1」で麺の種類を選ぶ。選択肢は「ワンタン(麺じゃねー!)」、「ラーメン」、そしてなぜか「うどん」。

「2」はスープの味だね。一番辛いの(ホット)が「バンコク」。赤唐辛子、レモングラス、バジル、エシャロット…もうこの時点で完全にラーメンじゃねー!

ミディアムが「サイゴン」。ミント、クローヴ、ニンニク、トウガラシ(これがどうしてか「Tougarashi」という表記になってる)、またエシャロット。もうラーメンとは絶対いわせねー!

「ジャカルタ」もミディアム。これはココナッツ、コリアンダー(うわっ!パクチー!)、チリにライム・ジュース…てこれは罰ゲームなのか?

最後がマイルドなヤツで「トーキョー」。これはシーウィード(直訳すれば「海藻」だけど、昆布のことでしょう)、長ネギ、大豆。

そして、「3」は具ね。「ビーフ」はフクロ茸と長ネギ添え。「チキン」はモヤシ(海外のモヤシって絶対細いと思う)、コーン、長ネギといっしょ。「ポーク」はモヤシ、長ネギ、赤唐辛子との組み合わせ。最後に「野菜」。ニンジン、ブロッコリー、ベビーコーン、大豆。

さあ、あなたならどうする!

以前にも書いたように、食に冒険をしない私のチョイスはなるべくうどんかラーメンに近づけようとした。でもラーメン食べたいな…ってんで、「ラーメン」に「トーキョー」、定石通りに「チキン」でやってみた。これがオーダーする時になかなかに恥ずかしい…。「ラ、ラーメン、ト、トキオ、アンド、チッキン」となる。

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出てきたのがコレ。まず容器が紙ですよ。カマボコみたいなものも入ってる。麺は「マルちゃん正麺」みたいな…。なんか必要以上にモチモチしてるなぁ。スープの味はね、完全に味の素。グルタミン酸のかたまりのような…。

でもね、おいしいの。これは絶対に「海の家効果」ってヤツでね。海の家とかスキー場の食堂で食べるラーメンと同じ。特にこの日は寒かったので、熱くて身体があったまって…涙が出るほどおいしいの。ま、この店、荻窪あたりのラーメン激戦区にあったら3日目には潰れてるね。でもイングランド北部にあってはおいしいの!

ロンドンのオックスフォード・ストリートにも麺類の店があったけど、あれはズイマの極致だったナァ~(もう潰れてた)。それに比べれば味がついているだけ全然マシ。チェーン店かと思ったらまだミューキャッスルだけなんだって!ニューキャッスルに行ったら寄ってみて!でも、昨日東京でラーメン食べて来たばっかりっていう人はダメよ!

スティーヴはどうしていたかというと、お店の人に許可を取って何もオーダーせずに私が麺をすするのをニコニコしながら見てた。「ホントはさ、音を立てて食べたいんだよ!」と言うと彼は「やって、やって!」と言う。でも、「郷に入れば郷にしたがえ」にしたがって来ました。量は見た目以上に入ってます。
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スティーヴがなぜヌードルを食べなかったかというと…コレ。ディクソンズ(Dicksons)という肉屋さん。ここでソーセージ・サンドってのを売っていて、スティーヴの好物なの。

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それがコレ。スティーヴがあんまりおいしそうに食べるんでジッと見てたら「試してみる?」とソーセージを少し分けてくれた。思わず「コレ魚肉?」と訊いてしまった!ごめんねスティーヴ…。ポークだよね~!これで£2(300円弱)。どう?おいしそう?
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クラッシックな映画館。
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古い城壁が突然現れたりする。
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教会もアチコチに…。
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ここはグレンジャー・マーケット(Grainger Market)。ここも「勝手に壊しちゃいけない建造物リスト(Listed Building)」の一番上のヤツ(Grade 1)。設計したのはニューキャッスル駅を手掛けたジョン・ドブソン(John Dobson)。1835年のオープン。

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元々の設計はマーケットをふたつのパートに分け、東側を肉屋、西側を八百屋に区別したそうだ。なるほど、ある個所にはズラリと肉屋が並んでいた。それも本当に肉、肉、肉の肉の塊で、肉食人種の肉食の迫力を見た気がしたね。

これはどう?おいしそう?
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こっちは野菜の部。ズラリと八百屋と果物屋が並ぶ。

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ここは「Weigh House(ウェイ・ハウス)」という計量所。昔は肉も野菜もここで重量を計測し、値段を決めていた。今は看板はただの飾りで、普通の事務所として使われている。
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イギリスの街を歩けばたいてい出くわすのがMarks & Spencer(マークス&スペンサー)というスーパーというか、デパートというか…日本でいえばダイエーかイトーヨーカドーというところ…に出くわす。ロンドンに本社があるこのチェーンストアは700店以上を国内に、400店近くを40ヶ国に出店している。1884年にリーズで設立された。どこも立派な店構え(ビル)で、ここニューキャッスルにもバカデカい店がある。

そして、この巨大チェーンストアの中で一番小さいと言われているお店がこのグレンジャー・マーケットにある。それがコレ。マークス&スペンサー自体を知らない人にはピンとこないだろうが、これはかなりヘン。思わず同名異店かと思わざるを得ない。

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こんな可愛いお店も…。また向こうの小さい娘はこういう格好がバッチリなんだよね~。本当に人形みたいに可愛くなっちゃう。
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ニューキャッスルにはまだスゴイものがある。写真左上に赤い「E」のロゴが見えるでしょ?

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それがEldon Square Shopping Centre(エルドン・スクエア・ショッピング・センター)の目印。John LewisやDebenhams等のデパートを含む150以上のお店が入ったショッピング・モール。エリザベス女王によってオープンされた1977年当時にはイギリスで一番大きいショッピングセンターだった。

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150店というとそれほど大きいような気がしないかもしれないが、日本のショッピング・モールと異なり、一軒毎の面積が大きいため、全体ではものすごい広さとなる。
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ま、取り立てて珍しいものがあるワケではないが、ブラリと見て歩くには十分すぎるボリュームではある。トイレが少ないのがタマにキズ。

スティーヴが「メチャクチャおいしいアイスクリームを食べよう!」と誘ってくれたが、歯の調子が怪しかったのでパスさせてもらった。海外で歯が痛くなったらタマッタもんじゃないからね。

イヤ、全然平気だとは思ったんだけど、甘いモノは今回極力避けた。スティーヴの家に行った時もおいしそうなクッキーをすすめられたが、丁重にお断りした。彼は「口をゆすげば大丈夫!」とか「痛くない方の歯で噛め」とか言ってくれたんだけど、怖いのでやめたの。
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前日、止まっていて乗れなかった地下鉄でスティーヴのホームタウン、サウス・シールズに向かう。写真はニューキャッスル駅の地下鉄の入り口。実際にはさっきのモニュメントのそばの駅から乗車した。
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これが切符。6.5cm×3cmの小さいもの。これが表かと思うとさにあらず。エスカレーターに乗る時は気をつけれ…と言ってるだけ。
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こっちが表。「310」というのは3ポンド10ペンスのこと。後は発券した日付と時間、大人と書いてあるだけ。乗る時には何のチェックもなし。終点のサウス・シールズにも改札なんてものはないのだが、電車が到着すると係員が4~5人出てきて切符の日付をチェックする。私はてっきり赤い方が表だと思っていたので、そっちを見せちゃった。
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つづく