イギリス紀行 2015 その6~カンタベリー巡礼
四日目の朝。
昨晩はホントにヘロヘロに疲れちゃって動けず。
アールズコートの駅前の得意のGREGGSで、パスティをいくつか買って、おいしいおいしいJohn Smithの缶ビールで流し込んだ。
朝は残りのお米でまた元気倍増!
出勤前にちょっとフレディの家に寄ってひと仕事。仕事の内容はコチラをご覧あれ。
今日は小旅行。
ロンドンから約100km東に位置する宗教都市、カンタベリーへ行くのだ。
まず国鉄の始発駅であるヴィクトリアへ地下鉄で向かう。
下は朝の地下鉄ビクトリア駅のようす。
一見、ドアの位置ごとに列を作っているように見えるけど、それは日本人特有の目の錯覚。
全然メチャクチャ。コレ、まったく並んでないの。
だいぶ前に日本に来たMarshallのスタッフが、銀座線のホームで列車待ちの乗客がきれいに列を作っているのを見つけて「コレか!」とか言ってゲラゲラ笑っていた。
その時は「何じゃろな?」と思ったけど、コレを見ればわかる。彼らは絶対に整列などしない。
切符売場など仮に整列する機会があってもそれは必ずフォーク並びだし、列が長いと言ってそうカリカリすることもない。
列を作らない割には並ぶことに慣れているのだ。
特に譲り合っているようには見えないが、実にスムースに何のトラブルもなく乗車するんだよね。
日本人だったら、ズル込みするヤツやトロトロしてるヤツが出て来てきっとモメるだろう。
それじゃロンドンの連中がノンビリしているかというと、そんなことはなくて、通勤途上のサラリーマンなんか競歩をしているんじゃないかと思うぐらい足が速い。
こういう文化の違いを見るのは実に楽しい。
殺人的に値段の高いデパートを見て歩くよりよっぽど面白い。
ヴィクトリア、キングス・クロス、ウォータールー、ユーストン、パディントン、チヤリング・クロス等々、ロンドンのターミナル駅を色々使わせてもらったが、どういうワケか圧倒的にヴィクトリア駅の使用頻度が高い。
ヴィクトリア駅の構内。
この辺りも最もスリの危険度が高いゾーンらしい。
カンタベリー・イースト駅までの切符を買う。
最初の頃は「Single」だの「Return」だのマゴついたが今はもう全然大丈夫。
「Return」は「Round trip」だということはだいたいわかる。でも「片道」を「Single」と言うなんて夢にも思わないジャンね?
窓口で「Single?」なんて訊かれたら「No, I got married」なんて答えちゃうよ。
イギリスは電車のチケットもインターネットで予約して、駅で切符を受け取るというのがもう普通。
以前サウス・シールズからロンドンへのチケットをコレでゲットしたら、「チケット買いませんか?○○行きが安くなってますよ~」ってメールがジャンジャン来る。魚屋じゃないつーの。
そりゃ行きたいけどね~。
ココのトイレね、何年か前までは無料だったんよ。今では50p、103円。
このトイレだけでなく、何年か前までは無料だった公衆トイレがすべて有料になった。値段は20~50pとマチマチ。
それを知っていて、今更お金を払うのが悔しいのか、見ているとバーをまたいで無料で入っていくアホが結構いる。
紳士でないイギリス人も山ほどいるのは当然か…。ちなみに、こうした公衆トイレはどこも極めて清潔だ。
この公衆トイレ、せいぜい100円前後だ。20pなら40円程度。日本でも有料トイレといえば100円ぐらい取るでしょ?
考えてみりゃ、ヘタをすると何でも驚異的に物価の高いこの大英帝国にあって、このトイレ代が一番安いんじゃないか?
それなら使わにゃ損々!そんなに出ないか?
車内のようす。
椅子の向きが固定されている。日本の寒冷地の電車みたいにドアは手動式だ。
優先席。
このイラスト…赤ちゃん連れ、お年寄り、妊婦はわかるけど、犬連れも優先?と思ったら盲導犬を連れた目のご不自由な方を表している。
盲導犬のことは英語で「Guide dog」というが、日本に比べて特段ロンドンの街中で見かけるということはないが、実はイギリスは世界で最も盲導犬の普及率が高い国なのだ。
その数、日本の十倍!
日本では申請して盲導犬が来るまで軽く一年は待たされるらしいが、イギリスでは三ケ月でやって来るのだそうだ。
Marshall Blogではおなじみのバタシー発電所。
Marshall Blogの記事はコチラ⇒【イギリス-ロック名所めぐりvol.9】 バタシー発電所
マーブロで書いた通り、再開発の工事が始まってる!その様子はMarshall Blogに譲るとして…あ~あ~、煙突が三本になっちゃったよ~!
ブリクストンからシティ方面を望む。
テムズ川南岸のブリクストンはDavid Bowieの出身地。かなり治安が怪しいエリアだ。
コレもShige Blogで簡単に紹介しているのでコチラをご覧頂きたい。
電車はズンズンと東に向かって進む。
コロコロと変わる景色が実に楽しく、美しい。
どんな小さな町でも必ず目にする教会の尖塔と城砦。
ここはロチェスターという街。
そういう名前の大きな高級飲み屋さんがかつて横浜にありましたな。
景色がコロコロ変わるのはいいけど、天気の変わりようがまたスゴイ!
暗雲立ち込めて来たかと思うと…
晴れた~!
とにかく雲が低い。雲が完全に景色の一部になっておるのがイギリスの風景だ。
そして、ヴィクトリアから一時間半…
カンタベリーに着いた~!
私は二度目の巡礼。カンタベリーの調査(←シャレですね)。
カンタベリーには路線が異なるもうひとつの駅、カンタベリー・ウエスト駅がある。
駅を出ると美しい城壁が連なる。
駅の前にある高台から大聖堂を望む。
ウォ~、風が強くて寒いぞ~!
ここはイギリス国教会本山のひとつ。いわゆる宗教都市だけあって規律が厳しい。
ナニナニ…
「この地区における飲酒は違法です。制服警官の忠告に従わなかった場合は£5.00(1,000円チョット)の罰金が課されます」…酒なんか飲みたくなるような雰囲気は一切なし。
ハイ・ストリートのようす。
PRIMARKという婦人服店に入る。PRIMARKはアイルランドのユニクロみたいな用品店で、ヨーロッパとアメリカ東海岸に店舗を展開している。
家内が店内をチェックしている間、入口近くでボーっと立っていると、東洋人の店員が近寄って来て話しかけて来た。
訛りがキツいワリに早口でかなり聞き取りにくい英語だ。
訊けば、ネパールからの移民とのこと。
私の英語を大絶賛してくれたが、さほどうれしくない感じ(実際私の英語なんかまったく大したことないし…)。
でも、チョット前に起きたネパールの大地震に際しての日本の援助に対し、真剣にお礼を言っていたのは感動的だった。
私は微々たる税金を払っているだけで実際には何もしていないが、やっぱりこういうのはうれしいし、とても誇りに感じる。
反対に日本が何やらマイナスのことをすれば、それだけ日本を見る世界の目がマイナスになるということだ。
今回のような出来事は、ほんの些細なことだけど海外だからこそ実感できるというものだ。
街のどこからでも見える大聖堂の尖塔。
東京で言えばスカイツリーだ…大分雰囲気がチガウなぁ。
「カンタベリー」といえば、我々にとってはSoft Machineであり、Gongであり、Hatfirld & The Northであり、CaravanでありHenry Cowであり…でもそれらの片鱗はまった感じさせないから…。
カンタベリー大聖堂は有料。£10.50だから2,153円。
下の告知は入場券売り場に掲げられているもの。また寄付でも募っているのかと思えばさにあらず。
上流階級のNobless Oblidgeとは別に、イギリスはチャリティ精神が発達している。
Jim Marshallがやたらと慈善団体への寄付を励行したのもその精神に基づいている。
下の写真は「Gift Aid(ギフト・エイド)」というイギリス独特の制度に関する告知だ。
対象者はイギリス政府への納税者に限られるが、この制度に登録してココのチケットを買うと、それが一種の寄付とみなされ、政府から25%の還付金が与えられる。
…といっても、その還付金は寄進者に戻ってくるワケではなく、寄付を受けた慈善団体に入金される。
言い方を変えれば、25%分の寄付金が増加するという仕組み。すなわち寄付をした人には何の得もないというシステムだ。
それで、カンタベリー大聖堂では協力してくれた人には、「その入場券が一年間有効になる」という特典を設けているワケ。
繰り返すけど、コレはイギリス政府に税金を払っている人だけね。
それにしても、こんな寄進者に利益がないシステムなんて日本だったらまず考えられない。
「なんだ、それじゃいくら寄付しても何の得もないじゃん、バカバカしい!」と一笑に付されることだろう。
それがチャリティの国イギリスでは、「お、私の寄付が2割5分増しになるのか!なんていいシステムなんだ!」ということになる。
ウェストミンスターとは異なり、こちらは観光客の数も少なく実に落ち着いた雰囲気だ。
カンタベリー大聖堂についてはMarshall Blogに簡単に沿革を記しておいたので、そちらをご覧頂きたい。
Marshall Blog⇒【イギリス - ロック名所めぐり vol.15】 カンタベリー…プログレの聖地
やっぱり来ている課外授業の子供たち。
しかもコスプレつきだ。
美術館やこうした名所古跡を実際に目にして自国の歴史や文化を勉強する…実にいいことだ。
しかも、少人数。生徒たちも先生の話しを一生懸命聞いている。
先日Marshallの友人が、お嬢ちゃんがアリスに扮している写真を見せてくれた。Marshall Blogにも登場しているConnieちゃんだ。アリスとは『不思議の国のアリス』ね。
それはどういうことかとママのEmmaに尋ねたところ、そういうイベントを通じて、幼いウチからイギリスの大きな文化的財産である文学作品に親しみを持たせ、読書を奨励するのだそうだ。まだ3~4歳だよ。
日本はこういう点に関してはま~ったくダメだ。
英語なんかより小さいうちにドンドン自国の文学に親しませるべきだ。
英語の授業の代わりにガッチリ読書をさせて、ナニをどう思ったのか子供たちに意見を述べさせ合う。
そんな授業をやっているところがあるのかもしれないが、ほとんど耳にしたことがない。
相手の意見をよく聞き、自分の意見をうまく述べようとする…そういう経験を小さい頃から重ねることこそ国際人を育てる礎になると思うんだけどね。
外人と会議をするといつもそう思う。みんな会議がウマいんだよね。
一旦、母国語を覚えてしまったら、いくら勉強したってすぐには用のない外国語なんて身に付くワケがない。
英語なんか必要になって、ヤル気と根性があれば後でいくらでも、どうにでもなる。
優秀な人材を育てるのはとにかく小さいうちから本を読むことだ。自分は失敗したクチだけど。
それとも日本の政府は国民が利口になると困ることでもあるのかな?きっとあるんでしょうな~。
この「大聖堂」ってのもすごく興味があって一度勉強してみようと思っているんだけど、なかなか時間がなくて…。
ココは「クワイア」っていうのかな?
聖職者専用のエリア。
全部席が決まっている。
ご存知の通り、ステンドグラスの一部は聖書の一場面を図柄にしたもので、さっきの先生が一枚一枚子供たちに説明していた。
ああ、私も授業を受けたいよ!
ココが大聖堂の一番奥。
最も神聖な場所とされている。
12世紀の大司教、トマス・ベケットを祀っている礼拝堂だ。
ベケットは教会の権限を巡って時の国王、ヘンリー2世と対立し大聖堂の中で暗殺された。
いつも思うんだけど、キリスト教って穏やかな教えを掲げているワリに、イザ宗教となるとガンガン戦争をしたり、陰謀を企てたり、殺戮をしたりしちゃうんだよね~。どうなってんだ、その辺?
さて、ベケットは死後、ローマ教皇から聖人とされ奇跡を起こすようになったと伝えられている。
コレ、「聖人」っていうのは大変なのよ。そう簡単にはなれない。何百年も経ってからようやく「聖人」とよばれるようになった聖職者もいる。もう遅いっつーの。
ベケットは重病人やら瀕死のケガ人のところに現れては次々と治してしまったらしい。
そのことがすぐに評判となり、カンタベリーには多くの巡礼者が訪れるようになった。
下の写真、床に火のついたローソクが置いてあるでしょう?わかるかな?
この下にトマス・ベケットが葬られているんだって!
ウエストミンスターと違って、カンタベリーはCrypt(クリプト)と呼ばれる地下聖堂を除いて写真撮影もOK。このクリプトがまたスゴイ。
実に見ごたえのある設備なのですわ。
他の学校の生徒さんもコスプレしてる。
恥かしいのか顔を隠してる!んな照れることないのに。
ウワ~、見てこの空!
ひと雨来るぞ~!と思ったらドバっと降った。
でも電車の時間もあるので雨宿りもしていられないってんで、傘をさして駅へ向かう。
駅までせいぜい10分。もう晴れた!
イギリスの天気はいつもこうね。
コレは駅前にある「カンタベリー城」の遺跡。
11世紀に建てられたものだが、徐々に壊されて今ではチョコッとしか残っていない。冒頭に掲載した城壁の写真はこの城に連なるものだ。
見学は自由…というよりほったらかし…というより何もない。
電車まで時間があったのでブラッと寄ってみたってところね。
あ~、さっきの雨雲はなんだったのよ!イギリスに来たって感じ満点!
さらばカンタベリー!
本当はこの隣のチラムという小さな村にも足を伸ばしてみようかとも思っていたのだが、時間がなくて断念。
だってLondon Passの元を取らなきゃならないじゃん!?