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2019年8月14日 (水)

イギリス紀行2019 その5 ~ パブがスキ!<後編>

  
本日のパブ・クロウリング(Pub Crawling)、銀行の次はホルボーン駅の近くの「Princess Louise(プリンセス・ルイーズ)」というお店。
ココがまたスゴかった!
「High Holborn Street(ハイ・ホルボーン通り)」という大通りに面しているせいか外で飲んでいる人が少ない…。
お客さんが車道にドバ―っと溢れ出ているソーホーあたりにあるパブとは様子が違う。

290…と思ったら「絶対に外で飲まないでね」という注意書きがドアに付いていた。
「すいませ~ん!外で飲んでる人が何人かいますよ~!」と言いつけようかと思ったけどヤメておいた。
370_2イヤ~、中に入ってビックリ!

300_2宮殿の装飾のように決して豪華というワケではないのだが、「なんでも鑑定団」に出したらどれも高額査定がゲットできそうな骨董的雰囲気満点の内装なの。
380_2それもそのハズ、「Princess Louise」は1872年の創業で、当時のヴィクトリア王朝時代のインテリアがそのまま残っているのだそう。
「Princess Louise」というのはヴィクトリア女王とアルバート公(V&A)の四女のお名前。320_2このお店の特徴はその見事な内装の他に、このガラスの壁で仕切られた個室スタイル。
残念ながらどこも満席で入れなかった。
このガラスのことを「Snob Glass(スノッブ・グラス)」といって、ヴィクトリア朝時代に作られたパブに見られる特徴なのだそうだ。
このスノッブ・グラスで店内の席を仕切るワケだが、ナンのためだと思う?
そこはさすがイギリス、中産階級と労働者階級を差別するためなんだって。
今はそんなことしてないよ、もちろん。

310_2この各小部屋のことを「Island(島)」と呼ぶようで、店員は島ごとにお客さんの対応をしている。
見方によっては回転ずしのファミリー席のようだ。

330ココは「Samuel Smith(サミュエル・スミス)」というビール会社のタイド・ハウス。
このサミュエル・スミス系列の店はあまり見かけないような気がする。

340_3どこへ行ってもGreene King系列ばっかりでさ。
だからこういう見たことがないラベルに出くわすとすごくワクワクする。
でもラガー・ビールは飲まないぜ。

355いつでも、どこでもコレ…まずはビターね。

350_3おいしかった。
私はそれほど酒に強いワケではないが、こうしておいしいエールにありついた時は、ホントにアルコールを受け付けることができる体質でヨカッタと思う。

360常連さんなのかナァ。
雰囲気もとってもいいのよ。
チョット、お手洗いへ行ってこう。

356トイレは地下。
しかし、どこもかしこも貫禄があって素晴らしい。
この暖炉もナント立派なことか!
この右手が地下へ降りる階段。

12img_9392そこの壁に付いていた注意書き。
ご注意 引ったくり、スリがこのあたりで仕事をしています。当店では被害の責任は持ちません。十分にご注意願います」
この「vigilant」という表現が気に入った。
もちろんウディ・ガスリーの「Vigilante Man」つながりね。
ま、私はガスリーでもライ・クーダーでもなくNazarethなんだけどね。

Img_9393階段の装飾も立派!

390_2チョット失礼。
トイレはこんな感じ。
なかなかいいな…と思ってタマタマ写真を撮っておいたんだけど、このトイレの装飾は有名らしい。

12img_9390下はトイレの壁に貼ってあった『Shit-Faced Shakespeare』という劇団のポスター。
「shit-faced」についてはMarshall Blogに書いたことがあるので興味のある方はご一読願いたい。
「ベロンベロン」という意味ね。
 
コチラ⇒ 【Marshall Blog】私のフランクフルト <vol.5:スピンオフ~後編>
 
ちなみに昨日タマタマイギリス人と一杯やる機会があったんだけど、「shit-faced」という言葉を使っていたわ。
で、「The Taming of the Shrew」というのはシェイクピアの喜劇の代表作「じゃじゃ馬ならし」のこと。
最初「Shit-Faced Shakespeare」という題名の劇かと思ったらさにあらずで、他にも「マクベス」だの「ロミオ&ジュリエット」だのがあって、要するにシェイクスピアの戯曲をパロディで演じる劇団の名前だったのね。
YouTubeに予告編が上がっていたのでチョット見てみたんだけど、解説のお姉さんまでシャンパンを飲んで酔っ払っちゃう。
このシャンパンがナゼかイタリアの「Prosecco」という銘柄指定。
何かシェイクスピアと関係があるのかな?それともただのスポンサーか?
しかし、どういう人が観に行くんだろうな。
シェイクスピアのオリジナルを知っていなければ楽しめないでしょうに。
それとも、老若男女を問わず楽しめるほど、今でもシェイクスピア作品がイギリス国民にシッカリと浸透しているのだろうか?

400v_2今回ロンドンの街を歩くのは4年ぶりだったんだけど、日本料理のお店が爆発的に増えていて驚いた。

410v_3またMarshall Blogでも触れることになるけど、何でも九州ラーメンがブームとかで、その他にも寿司屋、居酒屋、お好み焼き屋、シャフツベリー・アベニューには甘味処まであって笑ったわ。

420v_2ココなんか日本酒がズラリ。
デビッド・ボウイの『Ziggy Stardust』のジャケットを撮ったへドン・ストリートなんか七輪を出して何かを焼いて食べさせる店まであったからね。
でも、そんなの関係ねぇ!
私は数回前の渡英から、イギリスに来ても絶対に日本料理の店には入らないようにしているのだ(中華はOK)。

430_3ということで、この日の晩はホテルの近くの中華。
店員さんが「ありあとござます」とか言っていたところを見ると多くの日本人が訪れるのだろう。
470_3ハイ、炭水化物祭り!

480欧米の中華料理店ってスープに浸かっている麺類を扱っていない店が結構あるんだよね。
ココもそうだった。
ラーメンの類はなくて、焼きソバかビーフン。
私は焼きソバを好んで食べる方ではなくて、自主的にオーダーするのは、ホントにタマ~に「珍来」でソース焼きソバを食べる時ぐらいなのね。
でも、コレはおいしかったな~。
家内と2人では絶対に食べきれないと思っていたけど、全皿完食しました。
そうだよ、図星だよ…日本料理が恋しいんだよ!

7_img_9399コレは別の日。
通りの突き当りは滞在したプレジデント・ホテル。
Marshall Blogに書いたけど、今頃どうしてるかナァ…というのは、部屋にエアコンがついてないのよ。
Marshallの経理の女性と先週メールで雑談していて、「ウチは各部屋にエアコンが付いている」と言ったらひどく羨ましがられた。
イギリスも日中は死ぬほど暑いようだ。
彼女の家の冷房設備といえば、天井に付いている扇風機だけだそうだ。
だからこのホテルなんか窓もそう大きくは開かないし、タマらんぞ。
 
プレジデント・ホテルについてはコチラ⇒【イギリス-ロック名所めぐり】vol.35~The Beatles was here! <前編>

490_2そのプレジデント・ホテルの目と鼻の先にある「Friend at Hand」というパブ。
ココはGreene Kingのタイド・ハウスだったので何となく敬遠していたのだが、最後の最後に家内と入ってみた。
そもそも入ろうとするといつも満員だったのだ。
でもこの日は時間が早かったせいですんなりテーブルに着くことができた。

500_3ルックスでは前回紹介した「Old Bank of England」の店員さんに遠く及ばないが、ココの女性もとても愛想がよくて気持ちのよい応対をしてくれた。
ココのエールはチョット冷やしすぎ…でもノドが乾いていたせいかとても美味しかった。

510上の写真の左上にテレビが写ってるでしょ?
向こうの人はみんなパブへ来て一緒にスポーツの中継を見るのが大好き。
どこでもらったのかは忘れてしまったけど、下はパブに置いてあるテレビで放映されるスポーツ番組の予定表。
アメリカもバスケットー野球ーアメフト―アイスホッケーと1年を通じてプロスポーツが楽しめるようになっているけど、イギリスはサッカーークリケットーテニスーラグビーーゴルフーネットボール(バスケットみたいなヤツ)等々、バラエティに富んだスポーツが楽しめるようになっている。
アタシャ一切興味ないけど。
スポーツに加えてダーツだのスヌーカー(ビリヤードみたいなヤツ)、それに競馬なんかが入り込んで来る。
エンターテインメントは一年中スゴイのを演っているし…これはホントに日本は足元にも及ばない。
どの分野においても一流のモノを見ているのでお客さんの質が高いんだよな。
だから見せる方のレベルも高くならざるを得なくなってくる。
Marshall Blogに書いたけど、彼らはホンモノのロゼッタ・ストーンを見て歴史の勉強ができる人たちだから。
その点、スポーツのことはわからないけど、エンタテインメントに関しては日本人のお客さんってのは圧倒的に幼稚と言わざるを得ないと思う。
でも、それはお客さんのせいではなくて、本当にいいモノは隠してしまって、消費者には決して与えようとしない作り手のせいなんだよね。(←コレはフランク・ザッパの受け売りです)
お客さんのレベルを出来る限り低くして、幼稚にしておいた方が商売が断然ラクだから。
政治と同じ。

7_0r4a0118そうそう、「競馬」といえば、ちょうど「Royal Ascot(ロイヤル・アスコット)」開催の前だったのでほとんどすべての地下鉄のエスカレーターの壁に宣伝ポスターが貼られていた。
7_2img_8992「ロイヤル・アスコット」といえば、もう『マイ・フェア・レディ』でしょう。
紳士淑女が集まるアスコット競馬場でにわか仕込みの上流階級英語をコックニー出身の花売り娘、イライザ・ドィーリトルに試させる爆笑シーン。
「The rain in Spain mainly stays in the plain(スペインの雨は主に広野に降る)」っていうヤツね。
それと印象的なのは「it's very kind of you(なんとご親切なお方)」。
この表現は今では全く使わないと嗤った英語の教本があったが、トンデモナイ。
それはアメリカの話。イギリスでは時折耳にするので、私もやってみることがあるが、ナンノ問題もない。
いいですか、英語はイギリスの言葉ですから。
Marshallの友人が言っていたのをハッキリ聞いた…「Amricans ruined our lauguage」って。
 
さて、このシーンはヘップバーンのモノクロの衣装があまりにも美しくカッコいいよね。
15年ぐらい前にウエスト・エンドで観たリメイクの舞台では、このシーンで黒い衣装をイライザに着せていたが、映画に使われた衣装の方がケタ違いによかった。
映画での衣装をデザインしたのは写真家でもあったセシル・ビートン。
この作品でオスカーをゲットした。
ビートンは王室や戦地の写真多数撮ったことでよく知られていて、ロンドンで開催されていた写真展を観に行ったことがあるのだが、一枚一枚タメ息が出るほど美しく、メッセージ性に富んでいた。
もちろん全てモノクロなのだがすごい色彩感なんだよね。
デジカメを使ったにわかカメラマンが「雰囲気が出る」と勘違いしてモノクロで焼いた写真とはワケが違う。

Mflそして、『マイ・フェア・レディ』のロイヤル・アスコットのシーンで使われるが「The Ascot Gavotte(ジ・アスコット・ガヴォット)」という有名な曲。
いいよな~、私もイギリスの貴族に生まれたかった。
ところで、この「ロイヤル・アスコット」は、ウィンブルドン選手権、ヘンリー・ロイヤル・レガッタ、そしてゴルフの全英オープンに並ぶ夏の大イベントとして、世界中の競馬界と社交界から注目されるのだそうだ。
だから、ゴルフの渋野日向子ちゃん、スゴイわけよ。
ヘタすりゃイギリスの社交界へデビューできるんじゃないかね?
ま、そのためにはイライザのようにゴルフよりよっぽどハードな社交界デビューの訓練が必要になってくるんだろうけど。

5_img_9311競馬の観覧には厳密なドレス・コードがキメられていて、「ロイヤル・エンクロージャー」という一番上のクラスの席ではいまでも男性はモーニングにシルクハット、女性はフォーマル・ドレスか上下が必ず同じ素材でできているパンツスーツ。
さらに女性は衣装にマッチする頭が隠れるサイズの帽子の着用が義務付けられているそうだ。
民族衣装もOKで、日本人の場合は紋付羽織袴や振袖が認められているんだって。
大井競馬場とはエライ違いだ。
コレどうなんだろう?…競馬というモノは昔、普段からそういう格好をしている貴族が自分の馬を連れて来て競争させるためのイベントだったんじゃないかね?

5_img_9312こういうイギリスならではの広告を探すのもロンドン歩きの大きな楽しみなんだね。
それとやっぱりプラーク探しは楽しいな~。
ラッセル・スクエアのホテルの向かいの建物にあったブルー・プラーク。

7_img_8951「James Mathew Barrie(ジェイムズ・マシュー・バリー)」がココにあった家に住んでいた…というプラーク。
バリーは「ピーター・パン」の作者ね。

7_img_8950ミュージカルの「ピーター・パン」っていい曲がいっぱい使われているんだゼ。
トッドが『A Wizard/A True Star』で取り上げている「Never Never Land」とか、「You Can Fly」だけじゃないの。
1954年のオリジナルの監督と振り付けはジェローム・ロビンスだったんだね~。
ところがブロードウェイにかける前の西海岸でのツアーでスベってしまったため、ロビンスはいくつかの曲を付け足してうまくノリ切った。
その中の1曲が一番有名な「Never Never Land」なんだって。

7_2ppホテルからこの日の2軒目のパブに向かってブラブラ歩いていて見つけたのがこのプラーク。

520v知らない人はパッと見ただけではナニがナンだかよくわからないでしょう?
「Wing Commander」というのは「RAF」つまり「Royal Air Force(王立空軍)」の上の方の階級の名前。
「F.F.E. Yeo-Thomas」は「Forest Frederick Edward Yeo-Tomas(フォレスト・フレデリック・エドワード・ヨー・トーマス)」という人名。
最後の「GC」というのは勲章の名前。
プラークに書いてあるように「The White Rabbit」とはトーマスのコード・ネーム。
要するに、いつも通り「そういうオッサンがココに住んでいた」というヤツなんだけど、この「The White Rabbit」というのが気になった。
Jefferson Airplaneは好きではないのだが、何やらオモシロそうなニオイがしたのだ。
で、調べてみた。
ヨー・トーマスという人はイギリス軍の「シークレット・エージェント」、つまり「スパイ」で、第二次世界大戦中、ドイツ軍の占領下にあるフランスにパラシュートで乗り込んで、レジスタンスの指導をした。
ゲシュタポに捕まり、散々拷問を受けたが、無事生還し、チャーチルから「George Cross」という2番目に高位の勲章(一番上は「Victoria Cross」)を受勲した。
名前の後に付いているのはこの「George Cross」の頭文字の「GC」。
イギリスのエライ人たちは名前の後にこうやって自分の実績をひっつけて自分のスゴさを自慢するんだな。
イヤらしいね。
例えばCreamのアルバム『カラフル・クリーム(Disraeli Gears)』というタイトルの元ネタになっている19世紀のイギリスの総理大臣、ベンジャミン・ディスレーリなんかは正式な名前を「Benjamin Disraeli, 1st Earl of Beaconsfield, KG, PC, FRS」なんていうらしい。
「GC」は「ガーター勲章」、「PC」は「枢密院」、「FRS」は「王立学会」だって。
Marshallの創設者、ジム・マーシャルだって正式な名前は「Dr. James Charles Marshall, OBE」だぜ。
「OBE」は「Order of British Empire」のこと。
ヨー・トーマスというのはそういう人でした。

530_2プラークでなくても注意深く見て歩いているとこんなモノにも出くわす。540「この石はH.R.H.ザ・プリンセス・ロイヤルによって敷設されました」。
ま、だからなんだ?って話なんだけど、「H.R.H.ザ・プリンセス・ロイヤル」というのは「Her Royal Highness」の呼び名を持つアン王女のこと。
エリザベス女王の長女、チャールズ皇太子の弟。ヘンリー王子の叔母さん。
そうなんです、Marshallの工場に来てくれたあのオバちゃんなんですな。
だから他人とは思えない。
興味のある方は必ずコチラを見てチョーダイ!
  ↓   ↓   ↓
【英王室アルバム】Her Royal Highnessがお見えになりました!

550この日の2軒目のパブはホテルのコンシェルジュに教えてもらって来た。
近くの「The Lamb(ザ・ラム)」という店。
なんだけど…。
ディケンズも通ったというパブで由緒正しいのはわかるのだが、1ブロック先にあった下の「The Perseverance(忍耐)」という店が目に入り、どうしてもこっちに入ってみたくなった。
ナゼなら、ものスゴイ繁盛のしようだったのだ。
一方「The Lamb」はヒッソリ。
一体ナニがこんなにも客の入りに差をつけているのか知りたくなったのだ。

560入ってみる。
セ、狭い!

570カウンターはこんな感じ。

580建物は18世紀の初頭に造られたらしい。
この繁盛の理由はサッパリわからなかった。
多分、混んでいるというより、表にスペースがあるっているだけなんじゃないかしら?
要するに表にお客さんが溢れ出やすい…ということ。

590ブルームズベリーをもう少し歩く。
チーズとワインのお店。
ご覧の通り雰囲気はすごくいいんだけど…オエッ!
私にはクサすぎ。
強烈なチーズのニオイでとても入れたもんじゃない!
しかし、向こうの人はホントにチーズをよく食べるな~。

7_img_9489コレは葬儀屋さん。

600「Burial」は「土葬」、「Cremation」は「火葬」。
「火葬」の方が割安だ。

7_img_9493コレはスゴイよ。
1805年のトラファルガー海戦の旗艦だった「Victory丸」に使われていたデッキの一部(樫)とクギ。
ナンでこんなモノが葬儀屋にあるんだろうね?

620この日の晩はホテルの近く、ブルームズベリーにあるインド料理店に入ることにした。

7_img_8134前日の中華もそうなんだけど、こういうお国の味自慢レストランに入るとエールが飲めないのが残念なんだよね。
中国はチンタオ、インドはコブラになるよね~。

7_img_8136料理はカレー。
お値段も手ごろ、すごく美味しかった。
インド料理って、値段をケチるとクサくて食えたもんじゃない店があるからね。

7_img_8137ナンは丸かった。
店員さんの応対もとても気持ちよくて良い晩御飯でした!
シアワセシアワセ。

7_img_8139<つづく>
 
(2019年6月6~7日 ロンドンにて撮影)