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2019年8月15日 (木)

イギリス紀行2019 その6 ~ ヴィクトリアとアルバート <前編>

 
今日はサウス・ケンジントンに来た。
サウス・ケンジントンはロンドンの中でもスイス・コテージ辺りと並ぶ最も高級なエリアなのだそうだ。
ジミー・ペイジの家もこのエリアにあることはMarshall Blogで紹介した。
 
ジミー・ペイジの家はコチラ⇒【イギリス - ロック名所めぐり vol.12】 South Kensington(サウス・ケンジントン)を往く

10ホラ、左の広告のキャッチ・コピーを見て。
「Change, for the better」って。
どこかで聞いたことがあるでしょう?
そう、三菱電機が使っているコピー。
コッチはニューヨークに本校を構える「Flatiron School(フラットアイアン・スクール)」というIT関連の学校。
「フラットアイアン」というから、本校は五番街とブロードウェイの交差点にある「フラットアイアン・ビルディング」のそばにあるのかと思ったらバッテリー・パーク(マンハッタン島の南端)の近くだった。
このグルリと描かれた青い2本のストライプには何の意味があるんだろう?

20コレは別の日に撮った写真なんだけど、このサウス・ケンジントン駅はいつも学生さんで賑わっている。

30vというのもコレ。
サウス・ケンジントンはニューヨークの59丁目以北の五番街、通称「Museum Mile(ミュージアム・マイル)」のように博物館がズラリと並ぶ「博物館銀座」なのだ。
ニューヨークの方はどちらかと言うとメトロポリタンやらグッゲンハイムやらの美術館銀座だが、ココはバッチリと博物館が並んでいる。
この案内板にあるように、博物館群の反対側に向かえばハイド・パークの向かいのロイヤル・アルバート・ホールに出る。
あの辺りもとてもステキな町並みだ。

40博物館へ向かう地下道。

50通路の広告。
こういうのを見ながら歩くのがまた楽しい。
チョット前にMarshall Blogで紹介したアンドリュー・ロイド・ウェバーの『Joseph and the Amazing Technicolor Dreamcoat』

60vおなじみ『スクール・オブ・ロック』のミュージカル。
コレもアンドリュー・ロイド・ウェバーなんだねェ。
初演は2015年12月、ブロードウェイのウインター・ガーデン・シアター。
ウインター・ガーデンは18年間にわたり、7,500回以上『Cats』を上演した劇場。
その7,500回のウチ、私は2回ほどそれを観た。
反対にこの『スクール・オブ・ロック』が上演されるコヴェント・ガーデンの「Gillian Lynne Theatre(ギリアン・リン・シアター)」は1981年5月に『Cats』のプレミアが開かれた場所で、以前の名前を「New London Theatre」といい、1965年まで同じ場所には「Winter Garden Theatre(ウインター・ガーデン・シアター)」があったというのだからややこしい。
そして、2018年5月…というのだから最近のことだが、アンドリュー・ロイド・ウェバーの提唱により現在の「ギリアン・リン・シアター」という名称に変更した。
イギリスの劇場の多くは、長い歴史を持っていて、ウエスト・エンドには「Pince of Wales Theatre」とか「Her Royal Majesty Theatre」とか王室のメンバーの名前を冠した劇場が少なくないのだが、「ギリアン・リン・シアター」は、史上初の王室以外の女性の名前を冠した劇場となった。
デイム・ギリアン・リンはバレリーナであり、ダンサーであり、女優であり、そしてコレオグラファーだった人で、ウェバーの2大代表作『Cats』や『オペラ座の怪人』の振り付けを担当した。
王室メンバー以外の男性の名前がついた劇場は「ジョン・ギールグッド劇場」とか「ステファン・ソンドハイム劇場」とかがあるね。
ジョン・ギールグッドは中学1年の時に見たのはオリジナルの方の『オリエント急行殺人事件』だった。
根っからのシェイクスピア俳優で、ローレンス・オリビエやマーロン・ブランドがその門下生というのだからスゴイ。
そして、ステファン・ソンドハイムはこの記事の2回前の『スウィーニー・トッド』のところで出て来たばかり。
『ウエストサイド物語』の作詞をした人ね。
ところで、この『スクール・オブ・ロック』ね、聴いてみたけど…あの名曲揃いの『Cats』や『サンセット大通り』のウェバーはどこへ行ってしまったの?…という感じだった。

70vコレはこれから向かう「V&A」で開催中の「Mary Quant展」。

80v地上に出る。
コレはお隣の「Natural History Museum(ロンドン自然史博物館)」。
ここもいつもスゴイ人で賑わっている。
世界でもトップのコレ系の博物館だからね。
ま、上野の科学博物館なんか恥ずかしくてロンドンの人たちにはまず見せられない。

90vロンドンにはこうしたシンボルの赤い電話ボックスがまだたくさん残っている。
最近は使われているのを見ないけど…。
ほとんど広告塔だな。
コレは市内観光ツアーの広告。

100vコレが「Victoria and Albert Museum(ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)」。
通称「V&A」…向こうの人は「ヴィアネイ」なんて発音してるね。

110「ヴィクトリア」とは言わずと知れた「ヴィクトリア女王」のこと。
現在のエリザベス女王がその記録を抜き去るまで、もっとも長期間にわたって君主に就き、大英帝国の繁栄を謳歌した女王。
「アルバート公」はそのご主人。
この2人、と~っても仲良しだった。
V&Aは、1851年にハイドパークで開催された世界で初めての「万博」、「ロンドン万国博覧会」から得た莫大な利益で造られた施設のひとつ。
並びにあるさっきの「ロンドン自然史博物館」と「科学博物館」も同様。
次にロンドンで開催された万博は1862年のことで、日本もコレに参加。
「Exhibition」に「博覧会」という訳語を充てたのは参加者のひとりであった福沢諭吉だそうだ。

120どこの博物館でも人気の宝石の展示もある。

125さっそく中に入る。
入場料は無料。
もう何回来たかわからない。
でも何回来てもオモシロい。
今回来たのは、4年前にココを見逃した家内の強力なリクエストによる。

130vエントランス・ホールの天井。
もうカッコいい。

140その壁面には向かい合ったヴィクトリア女王とアルバート公のレリーフ。

150V&Aは工芸品の博物館。
人間の作ったありとあらゆるものが展示されている。

160そういう意味ではエジプトとミイラだらけの大英博物館よりオモシロい。

170「神具」っていうのかな?
こういうモノの展示の厚みはすさまじいよね。

180マッパで失礼!
ココはキャスト(鋳造)ものの展示コーナー。
彫刻ではない。

185思わず「エっ?」と驚くほど巨大なモニュメント。

190中は空洞です。
ま、鋳物だからね。

200突然だけどCONCERTO MOONの最新作『Ouroboros』。

Co ホラ。

210vCONCERTO MOONはかつてのアルバムのジャケットにもこの十字架を登場させているね。
コレは「ケルティック十字(Celtic Cross)」と言って、アイルランド人にキリスト教を普及する際に考案された。命の源である「太陽」のシンボルの「円」と十字架を組み合わせてあるのだそうだ。

Fsタペストリーのコレクション。

220この「ユニコーンと千花模様」という1500年のオランダの作品は有名だ。

230展示の点数は多くないが楽器も展示されている。

240残念ながら「楽器」という展示のカテゴリーはない(あるのかな?)。
あってもこのように、飽くまでも民族固有の工芸品としての展示。
コレはインド・エリアの楽器。
245コレも同じくインド関連の展示品。
「ティプーの虎」と呼ばれる18世紀に作られた「オートマタ」の楽器。
「オートマタ」というのは日本で言う「からくり人形」のこと。
コレ、V&Aの展示品の中でも最も人気の高いアイテムなんよ。

7_img_806218世紀の中頃、南インドにマイソールという王国があって、そこの王様をティプー・スルタンといった。
ティプー・スルタンは、カンナダ語で「ಟಿಪ್ಪು ಸುಲ್ತಾನ್」、テルグ語で「టిప్పు సుల్తాన్」、タミル語では「திப்பு சுல்தான்」、ではマラヤーラム語でどう書くかというと「ടിപ്പു സുൽത്താൻ」となる…知らんがな。
東京でよく「スルタン」というインド料理屋を見かけるけど、この人のことなんだね。
この人はインドを植民地にするべく攻め入ってきたイギリスの連中と徹底的に交戦して「マイソールの虎」として恐れられた。
ところが、イギリス軍はマイソール軍が午後1時になると休憩をするという情報をキャッチし、それを見計らって一気に砦に攻め入り2時間で制圧したというんだな。
インドは暑いから休憩しなきゃやってられないんだろうね。
そして、マイソール王国の財宝から出て来たのがこの「ティプーの虎」だった。

7_0r4a0756 オートマタとしては、虎が人間のノドに噛みつき、人間は悲痛なうめき声をあげるらしい。
当然この虎はティプー・スルタンで、食いつかれているのはイギリス兵だ。
残念ながら第二次世界大戦中にドイツのバカどもがV&Aに爆弾を落とした時、屋根が「ティプーの虎」の上に崩れ落ち粉々になってしまった。
現在展示されているのはその破片をつなぎ合わせたモノで完全には動かないのだそう。

楽器としては、いわゆる「手風琴」というヤツ。
虎の前足の上にあるハンドルを回して風邪を送る仕組み。
こんな動画を見つけたので興味のある人はどうぞ。
   ↓   ↓   ↓
「ティプーの虎を弾く」

290中近東のコーナーも見応え十分。

250見事なペルシャの絨毯。

260イスラミック・アートってのも素晴らしく美しいよね。

270vイスラムのカリグラフィ。
いいね~、サッパリわからんけど。
他にも刀剣のコレクションなんかも圧巻だ。

280コレは中国。

300「博物館」と言っても美術品の数も膨大で「美術館」と言っても何ら差支えがない。320v絵画の他に彫刻も展示も充実。
こんな「あ、ちょっとヤメて!」像なんかホンモノはスゴイ迫力よ。

330vしかも、チャンとこうやって掃除をしてる。

340v先にも触れたけど、こうした神具の展示には圧倒されること間違いなし。

340

350_2当然ステンド・グラスもたくさん。

360

370衣装の展示なんかも大変に興味深い。

380どうすんの、こんなコルセット!
昔の人は大変だったろうナァ。

390vコレは欲しいぞ!
大好きな「WALKERS」のバッグだもん!

395vマリー・クワント展も…

410同時期に開催していたディオール展も大盛況のようすだった。

7_0r4a0783 博物館って知らない間に結構歩いている上に立ちっ放しだからすごく疲れるんだよね。
イギリスの博物館とか美術館ってそこら中にイスが置いてあるのがすごくありがたい。
でも、一回座っちゃうともう動くのイヤになっちゃうんだけどね。

430V&Aで集めて来たフライヤー(っていうのかな)。
ま、ウチでは「資料」と称していますが、他人から見ればゴミ同然でしょう。
でも、私はこういうモノが好きなのです。
ナゼかというと、そもそも記念になるし、こういうどうでもいいようなモノって後で絶対に手に入れることができないから。
特にココのフライヤーは厚紙でできているのでチョットうれしいんだな。
話は<後編>続きますが、<後編>の方がオモシロいです。

420<後編>に続く
 
(2019年6月7日 Victoria & Albert Museumにて撮影)